【第7回】「競技で得られる体力≠競技に必要な体力」前編
専門性【☆★★】
球技系アスリートは必読です!
バスケ選手はバスケ、サッカー選手はサッカーだけやってればええの?
バスケットボールで使う筋肉は、筋トレの筋肉と違うんだから、筋トレなんかやらずにバスケットをやったらいいんだ!
さすがに最近はこんなこと言う指導者さんはいなくなってきていると思いますが、「筋トレ?必要かもしんないけどなんか弊害ありそうだしバスケ選手ならバスケやってたほうがいいんじゃ…」そんなイメージは一般にもあるかもしれません。
実際、トレーニングを教えている立場ですが、確かにトレーニングによる弊害も起こりえます(正しく行わなければ、ですけど。これについてはまた今度)。
さて、今日の最初の1文についてですが、全否定はしません。前半部分は。
「バスケットボールで使う筋肉は、筋トレの筋肉と違うんだから」
→△ 確かにまったく一緒ではないが、共通する部分は多い。筋肉の使い方(収縮速度、力発揮方向)や強度は確かに違う。
「筋トレなんかやらずにバスケをやったらいいんだ」
→× 筋トレをやるべき理由はちゃんとあります。
確かに筋トレのときの使い方・強度と、バスケの時の使い方・強度は違います。
でも、そもそもその主張をする人の頭の中には
「バスケで得られる体力=バスケに必要な体力」
という考えがあるんじゃないかなーと思います。
でも僕は
「バスケで得られる体力≠バスケに必要な体力」
だと考えています。
たぶん、これはサッカーもハンドボールも、テニスも野球も他のスポーツも一緒。
今回はバスケットボールを例にあげて考えていきます。
特異性の原理
まず、知っていてほしいトレーニングの原理として、特異性の原理というものがあります。
これは、その刺激に対して特異的な反応を身体は示しますよということ。
以下にいくつか例を挙げます。
【長距離走の練習】
心肺機能(最大酸素摂取量)が向上します。一方、低強度運動の連続なので大きな力が発揮しづらくなります。
【ウエイトリフティング選手のような筋力トレーニング】
身体がごつくなります。パワー(力×速度)も向上します。
実際、僕の友達のウエイトリフティング選手はそのへんのバスケ選手やバレー選手よりもジャンプ力があります。
【100mスプリンターのようなスプリントトレーニング】
スプリントスピードが向上します。
この特異性の原理を知ってもらったうえで、今回の話を進めていきます。
バスケットボールはどんな競技?
まず、バスケの競技特性について、以下2つを理解しましょう。
①バスケに必要な体力は?
②バスケで得られる体力は?
①バスケに必要な体力
これは様々な研究が行われていますが
・下半身の筋力
・垂直跳び(下半身のパワー)
・スプリント
・方向転換スピード
等が挙げられています(Hoffman et al,1996; Ercluj et al,2010; Hoare, 2000)。
まあNBAのトップ選手とか見たらそんな感じですよね。
ごついし、跳ぶし、速いし、切り返しキレキレだし。
ちなみに垂直跳び、スプリント、方向転換はどれもベースに筋力が必要な体力要素です(第3回)。
筋トレ(レジスタンストレーニング)を行う理由の1つは、上記の能力を高めることです。
しかし一般の人々のイメージは、「筋トレなんかよりバスケやったほうがスプリントスピードもジャンプ力も上がるんじゃね?」って感じだと思います。
なのでそこについても考えていきましょう。
②バスケで得られる体力
実は①と②を分けて考えるのがすごく大事で、結論から言うと
バスケでは①に挙げた体力要素はそこまで得られません!
少し長くなりそうなので、続きはまた次回!
参考文献:Relationship between athletic performance tests and playing time in elite college basketball players.J.R.Hoffman et al(1996)
Predicting Success in Junior Elite Basketball Players
– the Contribution of Anthropometic and
Physiological Attributes.D.G.Hoare,2000
PHYSICAL DEMANDS ON YOUNG ELITE EUROPEAN
FEMALE BASKETBALL PLAYERS WITH SPECIAL
REFERENCE TO SPEED, AGILITY, EXPLOSIVE
STRENGTH, AND TAKE-OFF POWER.F.Ercluj,2010
え、めちゃめちゃいいところで終わった!!!!!