【第177回】トレーニングの個別化ってどの程度必要なの?

ここ数年、『きちんと測定・評価をして、選手に必要なトレーニングを個別化してアプローチしよう!』という認識がスポーツ界に広まってきていると感じます。

それ自体は非常に良いかとかと思いますが、実際の現場、特にチームスポーツの指導の場では個別化しすぎて中途半端な指導になってしまうケースも。

今回は適切な指導に必要な『個別化のバランス』について考えていこうと思います。

《チームに対する個別化》基礎を身に着ける&ニーズへの対応

チームでトレーニング指導をする場合、そのチームのニーズに応えつつ、そもそも多くの競技のアスリートに求められる基礎的な体力の向上を果たす必要があります。

例えば複数のバスケットボールチームを指導していて

【チームAのニーズ】
・スピードで負けないようにしたい
・膝の怪我を防ぎたい

【チームAの現状】
・トレーニングはほぼ初心者

【チームBのニーズ】
・コンタクトで当たり負けないようにしたい
・去年肉離れが多かったのでそこを防ぎたい

【チームBの現状】
・ウエイトは各自で実施、個人間の差が大きい

だったとすると、チームのニーズに応えるような種目やアプローチを最終的にはとるものの、まずは共通して必要な基礎を身に着けることから始めることが多いです。

【共通して必要な基礎】としては例えば

・足関節、股関節、胸椎/肩甲帯などの十分な可動域の獲得

・基礎的な動作の習得(腹圧のかけ方、ヒップヒンジ、スクワット動作等の習得)

・必要な分の除脂肪体重の増加

・最低限の基礎筋力の獲得

等が挙げられます。

そしてある程度の基礎が獲得出来たら
【ニーズに対する特異的なアプローチ】
を実施していきます。

例えば

チームAはプライオメトリクスやスピード・アジリティ系のトレーニングの配分を大きくする

チームBは除脂肪体重の増加についての促しを多めに行い、コンタクトスキルのアプローチや肉離れ予防のためのハムストリングのトレーニング等を入れる

ただし【ニーズに対応した特異的なアプローチ】のクオリティは、【共通して必要な基礎】のクオリティに大きく依存します。

例えばコンタクトで当たり負けないようにしたい!というニーズがあり、コンタクト系のトレーニングを沢山実施していても、そもそもチーム平均の体格、筋力が

身長:178㎝
体重:65㎏
スクワット1RM:90㎏

とかだと、そもそもちゃんと食事をとって筋トレをしっかりやるという基礎的なアプローチのほうが優先順位は高いでしょう。

《チーム内での個別化》高めたい能力や習熟度への考慮

チームに合ったトレーニングを全体で指導しつつ、チーム内でも個別化したアプローチをとる場合もあります。

しかしながら個別化しすぎてしまうと、指導が中途半端になってしまうリスクも。

例えばチームのトレーニングの時間に

▼A君は最大筋力だからスクワット85%4回×3セットで

▼B君は体重が軽く、筋肥大が必要だからスクワット75%8回×3セットで

▼C君は最大筋力が十分でパワー発揮能力に課題があるからクリーンで

▼D君はCMJとDJの比率を評価したところDJに課題があるからハードルジャンプで

みたいな感じで4パターンも5パターンも個別化してしまうと、正直指導の目が行き届きません。

そこまで個別化したいなら、チームのトレーニングプログラムはもう少し基礎的な内容に絞って、練習前後の補強的なメニューを渡すといったアプローチのほうが適切かと思われます。

チームのトレーニングセッションをおこなう中での個別化については、基本的なチーム共通プログラムを作成し、特定の種目に2パターンくらい個別化の選択肢を与えるに留めたほうが良いでしょう。


例えば

(例1)
全体はハングクリーン
フロントスクワットの習熟が不十分な選手→ハイプルを実施

(例2)
全体はバックスクワット
腰痛のある選手はヒップスラストかレッグプレスを選択

(例3)
バックスクワットとジャンプ系エクササイズを交互に(コンプレックストレーニング)
・CMJに課題がある選手はボックスジャンプ
・Drop Jumpに課題がある選手はハードルジャンプ

といった具合です。


また学生スポーツ、例えば高校であれば最初の数か月の間は1年生プログラムと2,3年生プログラムを分けるといった方法も必要になるでしょう。

〇1人1人全く異なるプログラムを実施するメリット
・個々人のモチベーションになる
・必要な能力に注力できて効率的

〇チーム全体で全く同じプログラムを実施するメリット
・セッションの進行がスムーズになる
・指導者がセッションの進行のマネジメントに割く労力が少ない分『指導』に集中できる
・選手同士で注意点も共有されているのでお互いのフォームチェックなどのコミュニケーションが生まれやすい

チームでのトレーニング内の個別化は、この2つのメリットのバランスが取れる最適なところを探っていく必要があるのかなと思います。

まとめ

個別化されたプログラムというのは個々の弱点を効率よく改善したり、伸ばしたい要素を効率よく伸ばす効果が期待できます。

しかしながら注意しなければならないのが
・応用的なメニューを実施しているが本当に基礎基本よりも優先順位が高いのか?
・そこまで細かく分けて指導者が本当に対応できるのか?
という点。


ここまででは述べませんでしたが、種目の個別性ではなく、『負荷の個別性』は必須です。

全員同じ重さで実施するのではなく、測定値(1RM等)等を基にした個別の負荷設定なしに、効率的なトレーニングは出来ません。


是非チームでトレーニング指導する際には『適切な個別化のバランス』というのも意識してみてください!


執筆者:佐々部孝紀(ささべこうき)



めっちゃ久しぶりの更新になりました…!

(毎週の大学の授業資料作成、セミナー資料作成などに追われ…)


少し落ち着いてきたのでまたぼちぼち更新していきます!

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