【第8回】「競技で得られる体力≠競技に必要な体力」後編

前回までのまとめ

 

特異性の原理

 

① バスケに必要な体力
② バスケで得られる体力(バスケが身体に与える影響)
この2つを分けて考える必要がある

① バスケに必要なのは、筋力・スプリント・ジャンプ・方向転換スピード
(これらの要素はすべて筋力がベースにある)


バスケの運動強度

 

そこで、じゃあ②バスケをすることで身体にどのような特異的な変化が起こるか?とのことでした。

バスケットボールの試合分析(Abdelkrim et al, 2010)から考えていきましょう。

この研究ではバスケットボールの試合における1人の選手の移動距離を算出してます。以下結果。

平均移動距離
7.5km

低強度移動距離
4.2km
中強度移動距離
2.3km
高強度移動距離
1.0km

(論文中ではもっと細かく分類されていますが、ここでは簡便にまとめています。)
(一定の速度をもとに分類がなされているため、極端に短いスプリントやジャンプが高強度運動に含まれていないのが問題点ですが…)

ざっくりいうと強度的には
マラソン:中距離走:短距離走=4:2:1
って感じです。

① で挙げた体力要素は、スプリントトレーニングや筋力トレーニングのような刺激で得られます。
しかし、バスケットボールの試合というものは、高強度運動が頻発するものの、割合で言ったら断然、低強度運動が多いです。

そして、低強度運動は、筋量・筋力・パワーの向上を阻害します(J.M.Wilson et al,2012)。

第8回

なので
バスケの試合
→マラソン的な強度の運動が多い
→身体がマラソン選手のように細くなり筋力が低下するのでは

と考えられます。
でもマラソンと違い、バスケの試合には高強度運動もそれなりに含まれてるんですよね。
実際はどのような反応を身体にもたらすのでしょうか。

 

 

実はそれについてもちゃんと調べてくれている人がいるんです。

 

バスケが各体力に与える影響

「The effect of a baaketball season on aerobic and strength parameters among college men: starters vs. reserves」Caterisano et al, 1997

ざっくりいうと、バスケのリーグ戦(3か月で27試合)を通して、スタメンと控えで、どのような体力の変化があるか。というもの。

リーグ中も、週2回20分ずつ(少なっ)のウエイトトレーニングを行っています。

以下、結果の概要です。(心肺機能=VO2Max、筋力=レッグプレス1RM)

 

やっぱり1試合に7.5kmも移動するので、スタメンは若干心肺機能(最大酸素摂取量)が上がっています。逆に控えは下がってますね。
そして20分×2/週の筋トレだとさすがにみんな筋力は落ちちゃいます。
ここで注目すべきは
スタメンのほうが筋力の落ち幅が大きいということです。

先ほどのゲーム分析の研究と合わせて考えれば、バスケのゲーム中に占める割合の大きい低強度運動が、筋力発揮能力にネガティブに働いたと考えるが妥当でしょう。

つまり、バスケの試合だけをがんばってトレーニングをやらないということは、筋力を初めとする各体力要素の向上の阻害、なんなら低下につながるということです。

そしてこれはバスケ以外の多くの球技スポーツにもあてはまると思われます。

まとめ

・バスケ選手に大事なのは、ジャンプ力、スピードを代表とする瞬発的能力(これらの向上には筋力トレーニングは必須です)

・試合の中では高強度運動の割合は少ないが、おそらく勝負を決めるのはそこ

・一方試合に占める割合が多いのは有酸素的な低強度運動

・特異性の原理から考えると、バスケばっかりやっているとバスケに必要な体力は失われていく

補足
・有酸素運動のネガティブな効果(筋力発揮にはマイナス)を挙げたが、もちろんバスケには有酸素的能力も必要

・試合の特徴を挙げたが、練習内容の工夫次第では筋力発揮へのネガティブな効果は防げるかも

全部読んでいただけたかたには
「競技で得られる体力≠競技に必要な体力」
ということが理解していただけたと思います。

もちろん、体力(筋力、スピード等)をつけても、競技練習をがんばって、それを使いこなせないと意味はないんですけどね。

 

参考文献
ACTIVITY PROFILE AND PHYSIOLOGICAL REQUIREMENTS OF JUNIOR ELITE BASKETBALL PLAYERS IN RELATION TO AEROBIC–ANAEROBIC FITNESS.
Journal of strength and conditioning research,24(9)
N.B.Abdelcrim et al, 2010

The effect of a basketball season on aerobic and strength parameters among college men: starters vs. reserves.
Journal of strength and conditioning research,11(1)
Caterisano et al, 1997

Concurrent training: A meta-analysis examining interference of aerobic and resistance exercises.
Journal of strength and conditioning research,26(8)
J.M.Wilson et al,2012

 

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