【第165回】バスケのシュートレンジを広げたければ○○を鍛えろ!
バスケットボール選手にとって、シュートレンジが広いというのは大きな武器になりますよね。
NBAのスター選手、ステフィン・カリーなんてとんでもない距離からシュートを決めます。
じゃあシュートを遠くから決めるにはどうしたら良いか?についてですが、まず大事なのは質の高いシューティングの練習をたくさんすることです。
これは僕の専門ではないので何を意識すれば良いかなどは自分が教わっているコーチに聞いてください。
ただ、シューティングをするだけでは『シュートに必要なフィジカル』というのは強化出来ません。
まったくバスケ経験のない小学1年生と、まったくバスケ経験のない20代の男性、この2名がバスケのシュートを打ったときに、どちらがより遠くからシュートを出来るかというと、これは後者になりそうですよね。
バスケのボールは約500g程度の重量があり、遠くからシュートを打つにはスキルだけでなく最低限の筋力やパワーも必要です。
今回は
✓シュートを遠くから飛ばすにはどんなフィジカル的な要素が必要か?
✓どんなトレーニングが必要か?
ということを解説していきます。
シュート率の高さとフィジカルの相関
Pojskicら(2018)[1]はエリートレベルのバスケットボール選手を対象に、いくつかのシューティングのテストを実施し、その成功率とフィジカル的な測定との関連について調査しました。
その結果、試合の3Pシュートとは静的なシューティングテストよりも動的なシューティングテストのほうが高い相関を示し、その動的なシューティングテストの確率には
✓メディシンボールスロー(上肢のパワー発揮能力)
✓垂直跳び(下肢のパワー発揮能力)
✓間欠的な無酸素スプリントテスト
が関連していることが明らかとなっています。
この研究から読み取れるのは『上肢のパワーも下肢のパワーも、なんなら高強度運動を続けられる無酸素的な持久力も全部大事かも!』ということですね。
シュートの距離が伸びた時のフォームおよび力発揮の変化
次はシュートを打つ距離が変わると力発揮がどう変わるかという研究です。
Nakanoら(2018)[2]はフリースローの距離~3Pの距離で動作解析、地面反力の測定をおこない、その違いについて分析しました。
その結果、シュートの距離が伸びても上肢の仕事量は増加せずに、下肢の仕事量のみ有意に増加しました。
特に股関節で生み出している仕事量が増加しているようで、ここでパワー発揮を出来る能力というのが遠くからのシュートにとって重要なのでしょう。
ちなみに上肢の中でも肩、肘、手首に分けた時には肘の仕事量のみ有意に増加しているようです。
Tangら(2005)の研究[3]でも肘関節のトルク発揮能力とシュートの正確性の関連は報告されているので、上肢の中では肘の伸展パワーはシュートレンジに関与しているかもしれません。
個人的にはヘッドセットをしっかりとする2モーションのシュートの場合は肘のパワー発揮の関与も大きくなるんじゃないかな~とは思っています。
そう考えるとバスケ選手がベンチプレスをする場合、重量を求めてワイドグリップで実施するのは微妙かなと思います。
まとめ
まとめると
バスケ選手が遠くからシュートを決めるためには
✓下肢のパワー発揮能力(特に股関節)
✓上肢のパワー発揮能力(特に肘関節)
が重要で、無酸素的持久力も必要かも。
ということになります。
そのためにどういうトレーニングが良いかというと、
・スクワット
・RDL
・プッシュアップ
・ロウイング系
などの全身の筋力トレーニング
・クイックリフト
・プライオメトリクス
・プッシュアップジャンプ
など全身のパワートレーニング
あたりになるでしょう。
めっちゃ普通。
タイトルの答え合わせをするとしたら「バスケのシュートレンジを広げたければ『全身』を鍛えろ!」ということになります。
シュートレンジを伸ばす魔法を知りたくて読んだ方には肩透かしだったかもしれませんが、トレーニングに関しては頑張って基本を積み上げるしかないようですね。
「体幹トレーニングは必要ないの?」と思った方もいるかもしれませんが、
腰が丸まらないようにRDLやスクワットをおこなうことで体幹背面は鍛えられて、腰が反らないようにプッシュアップを(出来れば重りを乗せて)おこなえば体幹前面は鍛えられます。しかも下肢や上肢の動きと連動させながら。強いて言えば体幹側面を鍛えるような種目は個別で必要でしょうか。
もちろんウォーミングアップセッションでプランクなどを導入するのは有効だと思いますが、『トレーニング』には漸進性過負荷が必要です。
また、「冒頭の動画で紹介したカリーなんて全然細身じゃん!」って思った方もいるかもしれませんが、21歳時点でのNBAドラフトコンバインでベンチプレス84㎏を10回は上げているようです。レップ数が多いので少し過剰評価かもしれませんが、換算でMax110㎏は上げる計算ですね。
参照⇒https://www.nba.com/stats/draft/combine-strength-agility
日本のバスケ選手、言い訳せずに基本を積み上げましょう!
執筆者:佐々部孝紀(ささべこうき)
大学院に舞い戻って早4か月、この2-3月は実験スケジュールがつめつめです。
夏までにある程度の形にして投稿の段階までにもっていきたいです。
参考文献
1 Pojskic H, Sisic N, Separovic V, et al. Association between conditioning capacities and shooting performance in professional basketball players; an analysis of stationary and dynamic shooting skills. J Strength Cond Res 2018;32:1981–92. doi:10.1519/JSC.0000000000002100
2 Nakano N, Fukashiro S, Yoshioka S. The effect of increased shooting distance on energy flow in basketball jump shot. Sport Biomech 2018;19:366–81. doi:10.1080/14763141.2018.1480728
3 Tang WT, Shung HM. Relationship between isokinetic strength and shooting accuracy at different shooting ranges in Taiwanese elite high school basketball players. Isokinet Exerc Sci 2005;13:169–74. doi:10.1115/PVP2006-ICPVT-11-93777