【第152回】「持久力いらない競技やからタバコ吸ってもええやろ」はホント?
タバコを吸うことで心肺機能が落ちて息切れしやすくなる。
これはもはやスポーツ界以前に一般的な常識として知られていますよね。
その延長線上で考えても、持久系アスリートがタバコを吸うのはNGというのは想像にかたくないでしょう。
なのでマラソン選手とか以外はタバコを吸っても問題ありません。ストレス解消のためにもみんなどんどん吸おうね☆
なんてことはタバコ会社から1000万円くらい貰わないと書きません。
嘘です。そんだけ貰っても書かないです。
何故かというと、持久力の低下以外のデメリットが多くの研究で報告されているからです。
アスリートにおける喫煙のデメリット
アスリートにおける喫煙のデメリットとして
・心肺機能の低下
・筋機能の低下
・怪我の増加
が考えられます。
Petersenら(2007)の研究において、喫煙者は肺拡散能(肺胞の毛細血管でのガス交換能力)や息を吐く能力が低下していることが報告されています。
酸素が全身に行きわたりづらいので、全身持久力は低下しそうですよね。
実際、Altaracら(2000)の研究においても1マイル走(約1.6㎞走)の記録は喫煙者のほうが悪かったことが報告されています。
またこの研究では1マイル走だけでなく、腕立て伏せや腹筋など、筋持久力を評価した課題においても喫煙者の成績が悪かったことが報告されています。
実は喫煙者は心肺機能だけでなく、ミオスタチンなどの筋合成に関わるマーカーも非喫煙者と違いがあることが報告されており(Peterson et al., 2007)、筋肉の成長、修復にも悪影響がある可能性が示唆されています。
その結果Altaracら(2000)の研究で測定された腕立て伏せや腹筋運動の差に繋がったと考えられます。
また筋合成が阻害されるということは、運動の負荷からの回復にも遅れが出るということ。
ってことは怪我にも関連がありそうですよね。
実は先ほど紹介したAltaracら(2000)の研究において、傷害の受傷数についても調査がなされています。
その結果、喫煙者、特に吸うタバコの本数が多い人ほど怪我が多いということも示されています。
またラットの腱・骨の治癒課程をニコチン摂取vs生理食塩水で比較した研究において、ニコチンの摂取群はコラーゲンの発現量が小さく、回復が遅かったことが報告されています(Galatz et al., 2006)。
つまり筋だけでなく、腱や骨の治癒にもタバコの成分であるニコチンは影響与えるということ。そりゃ怪我増えるわ。
まとめ
習慣的な喫煙は
・心肺機能の低下
・筋機能の低下
・怪我の増加
に繋がります。
加熱式タバコのアイコスは一酸化炭素量は少ないようですが、ニコチンは含まれてしまっているそうですので、デメリットをなくすことは出来なさそうです。
僕が喫煙者ならアイコスにするくらいならオイコスを食べて我慢します。すみません。
喫煙者には耳の痛い話かもしれませんが、吸うにしてもこれらのデメリットを知ったうえで判断して欲しところです!
執筆者:佐々部孝紀(ささべこうき)
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参考文献
- Altarac, M, Gardner, JW, Popovich, RM, Potter, R, Knapik, JJ, and Jones, BH. Cigarette smoking and exercise-related injuries among young men and women. Am J Prev Med 18: 96–102, 2000.
- Galatz, LM, Silva, MJ, Rothermich, SY, Zaegel, MA, Havlioglu, N, and Thomopoulos, S. Nicotine delays tendon-to-bone healing in a rat shoulder model. J Bone Jt Surg – Ser A 88: 2027–2034, 2006.
- Petersen, AMW, Magkos, F, Atherton, P, Selby, A, Smith, K, Rennie, MJ, et al. Smoking impairs muscle protein synthesis and increases the expression of myostatin and MAFbx in muscle. Am J Physiol – Endocrinol Metab 293: 843–848, 2007.