【第161回】プライオメトリクスの基本ーSSCとは?ピュアコンセントリックとは?
「ジャンプ力を高めるにはどうすれば良いですか?」
こういった質問を受けることも多いですが、一番手っ取り早いのはジャンプトレーニング(≒プライオメトリクス)を実施することです。
プライオメトリクス、ウエイトリフティング、基礎的な筋力トレーニング(スクワットなど)のジャンプ力向上への効果を比較したメタアナリシスでは、基礎的な筋力トレーニングと比較してウエイトリフティングが大きなジャンプ力向上効果を示しており、プライオメトリクスもウエイトリフティングと同様にジャンプ力向上効果を示しています(Hackett et al., 2016)。
そんなプライオメトリクには様々な種目があり、『Plyometrics』とインスタやグーグルで入力するだけでクソほど色んな種目が出てきます。
ただやみくもに出てきたものを実施するだけでなく、目的や段階に応じて種目を整理して実施することが重要です。
今回はプライオメトリクスの種目の分類についてまとめていきます。
プライオメトリクスの分類
プライオメトリクスは大きく分けると
・Landing系種目(着地のトレーニング)
・Pure Concentric種目(反動を使わないジャンプ)
・Slow SSC種目(反動を使ったジャンプ)
・Fast SSC種目(落下の反発を使った、下肢をあまり屈曲しないジャンプ)
に分けられます。
SSCとはストレッチ&ショートニングサイクルの略で、簡単に言えば反動を使った動きのことです。
比較的大きく膝や股関節を屈曲するCMJ(反動を使った垂直跳び)や立ち幅跳びなどがSlow SSCに分類され、ドロップジャンプや縄跳びのような下肢をあまり屈曲せずに落下の反発を使うジャンプはFast SSCに分類されます。
https://twitter.com/tyr7bbb/status/1556597184061026305?s=20&t=w5e69YlvVPwVJnmv46auGA
代表的なSlow SSCであるCMJと、代表的なFast SSCであるドロップジャンプの動作を比較したデータでは、ドロップジャンプはCMJと比較して動作時間が短く、膝関節と足関節で発揮したピークパワーが大きかったことが報告されています(Marshall &Moran et al., 2013)。
一方で、跳躍高自体はCMJのほうが高かったことから、地面に加えた力積はCMJのほうが大きかったことが推察されます。
これらのトレーニングについて、CMJのようなSlow SSCの能力を高めたければSlow SSC自体を実施すれば良さそうに思えますよね。
一方でVillarrealらのメタアナリシス(2009)では、Pure Concentric、Slow SSC、Fast SSCなど、様々な様式のプライオメトリクスを実施するのが効果的だと報告されています。
そのため、プライオメトリクスを実施する場合は上記のような分類で種目を整理し、レベルや目的に合わせてバランス良く実施する必要があると考えられます。
基本的にはLanding種目で着地・反動姿勢の獲得⇒Pure Concentric種目でパワー向上⇒Slow SSC種目・Fast SSC種目で反動を使う能力向上といった流れで導入するのが良いかと思います。
まとめ&注意点
プライオメトリクスは様々な種目がありますが、Landing、Pure Concentric、Slow SSC、Fast SSCに分類され、ジャンプ力を高めるためには様々な種類のジャンプを実施するのが効果的だという内容でした。
一方冒頭で、『ジャンプ力を高めたいならプライオメトリクスの実施が手っ取り早い』と述べましたが、最低限の筋力を獲得していない場合は基本的な筋力トレーニングの実施のほうが優先順位は高いです。
具体的には高校生以上の男子選手では体重×1.5倍、女子選手であれば体重×1.2倍のスクワット(深さはパラレル以上)が出来ないうちは、しっかりと基本の筋力トレーニングから実施しましょう。
Peeblesらの研究(2021)では、スクワットで膝が内側に入りやすい被験者ほど着地動作で膝が内側に入りやすいことが報告されていますし、怪我の予防の観点からもまずはスクワットで最低限の重量を良いフォームで出来たほうが良いですね。
また、パワーを高めるには力も速度も高める必要があるため、そもそもの筋力が弱い選手はスクワットなどで筋力を高めることでジャンプ力が伸びる可能性も高いと考えられます。
ただやみくもにSNSに流れてくる種目を実施するのではなく、自分の現在地も分析しながら賢く鍛えていきましょう!
執筆者:佐々部孝紀(ささべこうき)
セミの鳴き声も大きくなり、夏っぽくなってきましたね。
そういえばこの前同僚とジビエ(?)料理屋さんに行って、カエルとかオオグソクムシを食べてきました。
タガメは勇気が出ずに食べられませんでしたが、オオグソクムシは普通にエビでした。
参考文献
- Peebles, A. T., Williams, B. & Queen, R. M. Bilateral Squatting Mechanics Are Associated With Landing Mechanics in Anterior Cruciate Ligament Reconstruction Patients. Am. J. Sports Med. 49, 2638–2644 (2021).
- de Villarreal, E. S., Kellis, E., Kraemer, W. J. & Izquierdo, M. Determining variables of plyometric training for improving vertical jump height performance: ameta-analysis. JSCR 23, 495–506 (2009).
- Marshall, B. M. & Moran, K. A. Which drop jump technique is most effective at enhancing countermovement jump ability, ‘countermovement’ drop jump or ‘bounce’ drop jump? J. Sports Sci. 31, 1368–1374 (2013).
- Hackett, D., Davies, T., Soomro, N. & Halaki, M. Olympic weightlifting training improves vertical jump height in sportspeople: A systematic review with meta-analysis. Br. J. Sports Med. 50, 865–872 (2016).