【第138回】「怪我をしないようにトレーニングは軽めの重さで」だと怪我をしてしまうしパフォーマンスも下がるというジレンマ

「怪我をしないようにトレーニングは軽めの重さで」

シーズン中はそう考えて取り組んでいる選手も多いかもしれません。

しかしながらシーズン中だからこそ強度を上げることで疲労も抜けて、コンディションも上がり、怪我を予防できるかもしれません。

本日はそのメカニズムについて理解していきましょう!

強度、量、総負荷の関係

トレーニングの負荷設定を理解する上で、「強度」「量」「総負荷」この3つの言葉の意味を明確に理解する必要があります。

強度×量=総負荷という関係性になるのですが、これは図で説明したほうが分かりやすいと思うので、まずは以下の図を見てください。

100m走は強度の高い運動で、マラソンは強度は低いものの運動量が多い運動になります。

ウエイトトレーニングにおいては担いでいる負荷(重量)=強度になり、レップ数やセット数が量になりますね。

先述した「負荷を軽めにしよう」という発想、それが総負荷のことを指すとしたら、軽めにする方法としては

・強度を落とす

・量を落とす

この2つが考えられます。

身体へのダメージはおおよそ、この総負荷と比例するので、実は高重量低回数のウエイトのほうが身体へのダメージは少ないです。

例えばスクワットのマックスが200㎏の選手がいたとして、
マックスの90%(180㎏)で3回挙上した場合、180㎏×3回=540㎏の総負荷
マックスの70%(140㎏)で10回挙上した場合、140㎏×10回=1400㎏の総負荷
になります。

試合前のコンディショニングにおいても、練習・トレーニングの強度維持したまま量を減らす方法が、一番試合のパフォーマンスが向上させるということも科学的に証明されています(Bosquet et al., 2007)。

逆に「試合前数週間はウエイトは軽めの負荷で」と考えたとき、量を減らして総負荷を減らすのではなく、強度を減らすという発想をしてしまうと、以下の2つのパターンにあてはまってしまいます。

▼強度を減らして量も減らす⇒十分なトレーニング刺激が得られず、試合に向けて筋力も落ちて筋肉もしぼんでいく

▼強度を減らすが量はしっかりと⇒筋量は維持でき、筋力低下も多少抑えられるが、疲労による悪影響が出てしまう

試合期は強度を維持!トレーニング期は総負荷を大きく!

大事な試合の前は強度を維持して量を減らすことでコンディションが上がるということは先述しました。

一方で、リーグ戦のような長丁場の場合は、いかに筋力を維持するかということも重要になります。

Rønnestadら(2011)の研究では、マックスの90%程度の負荷でのトレーニングを週に1回3セット実施することで3ヶ月は筋力が維持できたことを報告しています。

また、筋力トレーニングによる傷害予防効果に関するメタアナリシス(Lauersen et al., 2018)では、強度、量をしっかりと高めることで、より傷害予防効果が高まることを報告しています。

しかしながら、身体というのは同じような負荷ばかりだと適応しなくなってくるもの。

シーズン中に高強度低回数のトレーニングで、怪我なくパフォーマンスを維持・向上させるためには、オフの間に量・総負荷が大きめのトレーニングを実施しておくことが必要です。

来シーズンのトレーニングはもう今から始まっています。

きちんとした計画にのっとってトレーニングを行うためにも、是非この時期にプロのトレーニング指導者の指導を受けてみてください!

執筆者:佐々部孝紀(ささべこうき)


最近河童橋商店街の包丁屋で、柳葉包丁と出刃包丁を買いました。

刺身の角が潰れずに、めちゃくちゃ綺麗に切れて毎回感動しています。


参考文献

  1. Bosquet, L, Montpetit, J, Arvisais, D, and Mujika, I. Effects of tapering on performance: A meta-analysis. Med Sci Sports Exerc 39: 1358–1365, 2007.
  2. Lauersen, JB, Andersen, TE, and Andersen, LB. Strength training as superior, dose-dependent and safe prevention of acute and overuse sports injuries: a systematic review, qualitative analysis and meta-analysis. Br J Sports Med bjsports-2018-099078, 2018.Available from: http://bjsm.bmj.com/lookup/doi/10.1136/bjsports-2018-099078
  3. Rønnestad, BR, Nymark, BS, and Raastad, T. Effects of In-Season Strength Maintenance Training Frequency in Professional Soccer Players. J Strength Cond Res 25: 2653–2660, 2011.Available from: http://content.wkhealth.com/linkback/openurl?sid=WKPTLP:landingpage&an=00124278-201110000-00003

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