【第134回】とりあえずで体力測定やっちゃってない?最小の労力で最大の効果を!
そろそろシーズンも終盤に差し掛かったり、もしくは次シーズンへの準備へ突入しているチームも多いのではないでしょうか。
試合期が終わり、トレーニング期に実施される体力測定。
普段使わないような機材を配置して、さあ測るぞっていう雰囲気があると、なんかワクワクしますよね。
ここで注意しないといけないのが、測定の目的を明確にすること。
それがないとワクワクするだけで終わってしまいます。
体力測定の目的
『体力』というのはフィジカル的な能力を総合的に表現したもので、それがさらに
・持久力
・筋力
・パワー
・スピード
などに細分化出来ます。
多くの場合、体力測定の目的は『現状の体力レベルを知ること』が目的でしょう。
ただし、それだけだと『ワクワクする』だけとそこまで大差はありません。
現状の体力レベルを知るだけでなく、
①選手の選抜
②チーム平均の体力の推移を算出し、全体のトレーニングプログラムの成果を振り返る
③個々の弱みと強みの明確化、個別プログラム作成への活用
④個々の体力の推移を観察し、問題のある選手にアプローチする
⑤モチベーションアップ
といったところまでつなげる必要があります。
①選手選抜
チームへの入団のためのトライアウトなどは、多くの場合体力測定も実施しますよね。
体力テストは数値として客観的に評価できるので、短い時間での選抜にも役立つでしょう。
また、チームのヘッドコーチや監督であれば、チーム内での選手の選抜(スタメンor非スタメン、AチームorBチームなど)をする必要があります。
そういったチーム内の選抜にも体力測定の数値は一つの参考になりますよね。
②チーム平均の体力の推移を算出し、全体のトレーニングプログラムの成果を振り返る
例えばチームとしてパワーを向上させるために全体のプログラムを実施している時期に、チームの平均のジャンプ力が向上していなければ問題でしょう。
もちろん、全体でプログラムを実施していても、中には数名体力が向上していない選手も出てくるでしょう。
しかし目的としている数値のチーム平均に変化が見られないのは問題です。
その場合はプログラムの内容自体を見直すが、選手のエクササイズ実施方法に問題がないかを振り返る必要があります。
③個々の弱みと強みの明確化、個別プログラム作成への活用
体力測定をすることで、個々の選手の課題が浮き彫りになります。
チームとしてトレーニングプログラムを実施している場合は、個々で全く違うプログラムを提供することは難しいでしょうが、その中で2~3割程度、個々の特性に応じた変化を取り入れることは可能でしょう。
※例えば、スクワットの最大挙上重量を○○㎏上げること。それが出来た選手はジャンプスクワットやクリーンを導入する。等
しかし実際にトレーニングプログラムの中で個別性を取り入れる場合は、体力特性というよりもエクササイズの習得具合によってアレンジを加えることが多いですね。
④個々の体力の推移を観察し、問題のある選手にアプローチする
②で全体の推移をみるのと同時に、個別の成長もチェックをします。
そこで数値の推移に問題がある場合は、個別にヒアリングをして原因を突き止める必要があります。
もちろん、向上が著しい選手を賞賛すると同時に、その向上の裏に何かヒントがあれば他の選手にシェアするのも良いでしょう。
⑤モチベーションアップ
次回の体力測定の日程を提示しておくことで、そこに向けてトレーニングを頑張ろうというモチベーションになりますよね。
また体力測定の結果をフィードバックする際に、チーム内の順位も合わせて発表したり、前回からの伸び率などもフィードバックするとそれもモチベーションアップに繋がることも多いです。
まとめ
体力測定によって、現状の体力を測定した後、
①選手の選抜
②チーム平均の体力の推移を算出し、全体のトレーニングプログラムの成果を振り返る
③個々の弱みと強みの明確化、個別プログラム作成への活用
④個々の体力の推移を観察し、問題のある選手にアプローチする
⑤モチベーションアップ
まで繋げる必要があるといった内容でした。
個人的に、これらを達成するには
『ある程度の頻度を確保する』ことと『測定種目を多くし過ぎない』ことが重要だと考えています。
次回の測定までの時間が空きすぎると、全体の方向修正も個別へのアプローチも手遅れになってしましますし、選手のモチベーション維持も難しくなります。
また、種目が多すぎると時間がかかるので高頻度での実施が難しくなりますし、選手も自分の数値がどうだったかを把握できないですよね。
そうなってくると②~⑤までの活用がなかなかうまくいかないので、『ある程度の頻度を確保する』ことと『測定種目を多くし過ぎない』ことが重要です。
例として、1~2か月に一度
・ウエイトの最大挙上重量or2~5RM測定
・下肢のパワー(立ち幅跳びor垂直跳び)
・全身持久力(20mシャトルランor持久走)
を測定するくらいで充分ではないでしょうか。
そこに加えて必要であれば年に数回スプリントスピードやアジリティ、競技特異的な体力測定を実施するのも良いでしょう。
もちろん測定項目を多くすればするほど、『何かしらの数値が向上する可能性は高くなる』のですが、それが本来の目的でしょうか?
今一度体力測定をする意義というものを振り返ってみてください!
執筆者:佐々部孝紀(ささべこうき)