【第125回】コーヒーってほんまに脱水を引き起こすの?

「カフェインは利尿作用があって脱水につながるから夏はコーヒーとお茶は飲んじゃだめ!」

こういった話をたまに聞きますが、果たして本当なのでしょうか?

結論から言うと、

🔻実際に利尿作用はあるけど、飲んじゃだめとまではいかない

🔻確かにコーヒーなどを水分補給のメインの飲料にするのはちょっといただけないかも

🔻運動時か安静時かによる

といった感じです。

本日はその根拠となる科学的データも紹介していきます!

『影響があるかどうか』ではなく『どのくらい影響があるか』

例えば、水も一気にとんでもない量を飲むと水中毒になると言います。

じゃあ水を飲まないほうが良いかというと、そういう訳ではないですよね。

・どれくらいの量を摂取すると

・どのくらいの害(影響)があるのか

をきちんと数値として理解することが大切になってきます。

本日はRuxtonら(2008)のシステマティックレビューとZhangら(2015)のメタアナリシスのデータから、その点を考えていきます。

尿量をどの程度増加させる?

Ruxtonら(2008)はダブルブラインドでプラセボを用いたRCTを対象に、カフェインの影響について検証した研究を集めてレビューしています。

その中で5つの研究ではカフェインは有意な尿量増加が認められず

3つの研究では有意な尿量の増加が認められました。

尿量の増加が認められなかった5つの研究でのカフェイン摂取量は体重×1.4㎎~6.0㎎

尿量の有意な増加が認められた3つの研究でのカフェイン摂取量は体重×5.6、8.8、9.6㎎と、

比較的カフェインの摂取量が多い研究で尿量の有意な増加が認められました。

尿量の増加は360ml~753mlです。

確かにカフェインの摂取量が多いと、有意な尿量の増加(≒脱水)が引き起こされているようです。

しかしここで考えなければならないのが

『コーヒーもお茶もカフェインだけやなくて、それ自体が水分含んでるやん』

ということ。

これらの研究での用いられたカフェイン量をコーヒーに換算するとおおよそ600ml~1000ml程度。

大体飲んだコーヒの半分強が尿になってしまっている計算になるものの、残りの水分は身体に吸収されているとも考えられますよね。

そのため『コーヒやお茶を飲む=逆に脱水になる!』とは考えづらいです。

次に、Zhangら(2015)のメタアナリシスのデータから。

こちらは先ほどの研究よりも採用基準がゆるく、研究が実施された時期も比較的最近のため、より多くの研究が採用されています。

全部で16の研究、28のデータによってメタ解析が実施された結果、以下のような数値が示されました。

尿量増加のES⇒0.29(95%CI:0.11~0.48)

実際の尿量に置き換えると109ml±195mlの増加

※ES(効果量)・・・介入等の効果の大きさを表した数値。この研究では0.2以上が小さな効果、0.5以上が中程度の効果、0.8以上が大きな効果と定義

先に紹介したRuxtonの研究で採用されていた研究よりは、少し小さな数値を示しました。

また、Zhangらの研究ではカフェインの摂取量が増えたからといって、尿量の増加がさらに大きくなるといった関係性は見られませんでした。

これは考察内でも述べられているのですが、カフェインの摂取量以上に他の要因の影響が大きかったためでなないか?とも考えられます。

その他の要因というのは、性別や、摂取後の活動での違いです。

各ESは

男性⇒0.13
vs
女性⇒0.75

摂取後に運動⇒0.10
vs
摂取後に安静⇒0.54

という結果を示し

男性よりも女性のほうが尿量の増加は大きく

運動時よりも安静時のほうが尿量の増加は大きい

といったことが示されました。

まとめ

確かにカフェインを摂取すると尿量は増加します。

しかしながらその尿量の増加は、カフェイン飲料で摂取できる水分を上回るかというと、そこまでではないようです。

(エスプレッソのように濃度が高いものだともしかしたら状況によっては上回る、、かも?)

また運動時はカテコールアミンが分泌さるので、その影響で尿量の増加は抑えられます。

そのため、結論としては

🔻実際に利尿作用はあるけど、飲んじゃだめとまではいかない

🔻確かにコーヒーなどを水分補給のメインの飲料にするのはちょっといただけないかも

🔻運動時か安静時かによる

といったことが言えそうです。

これから暑い時期になってきますが、『コーヒーやお茶を飲まない』という選択よりも、メインの水分補給のドリンクの内容、量にこだわるほうが格段に大事でしょう。(詳しくは前回の記事

是非正しい知識を持って、夏の練習を乗り切ってください!

執筆者:佐々部孝紀(ささべこうき)


そろそろ色んな活動が再開されてきましたね!

僕もチームでのトレーニング指導や、大学、高校の授業も再開してきました。

やっぱり対面での仕事は楽しいですね。

一方でコロナの自粛期間もあってよかったなあと思うこともいくつかありました。

・オンラインの活用術が身についた

・選手への講義などの時間が多くとれた

・動画資料などのストックが出来た

・自重トレーニングのバリエーションが増えた

・いかに自重トレーニングで最大筋力が減らないかを考える過程で、速筋線維の適応に関する知識が増えた

やっぱり『クリエイティブさ』の素になるのはある程度の『制限』ですね!


参考文献

1. Ruxton, C. The impact of caffeine on mood, cognitive function, performance and hydration: a review of benefits and risks. Br Nutr Found Nutr Bull 33: 15–25, 2008.
2. Zhang, Y, Coca, A, Casa, DJ, Antonio, J, Green, JM, and Bishop, PA. Caffeine and diuresis during rest and exercise: A meta-analysis. J Sci Med Sport 18: 569–574, 2015.

 

 

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