【第68回】身体能力は控え選手のほうが上がる!

トレーニングの目的はざっくりいうと

・身体能力の向上(ジャンプ力、スピードなど)

・傷害発生の予防

ですよね。

そして多くのスポーツ(特に球技スポーツ)の場合、きちんとトレーニングをしていたら、控え選手・Bチームの選手(試合の出場機会が少ない選手)のほうが身体能力が上がる可能性が高いんです。

持久的トレーニングは筋力・パワーの向上を阻害する

以前の記事でもご紹介した通り、持久的トレーニングは筋力・パワーの向上、筋肥大を阻害します。

筋力トレーニングと持久的トレーニングを平行して行うトレーニングは、スポーツ科学の世界ではConcurrent Trainingと呼ばれており、Wilsonら(2012)[4]が今まで発表された研究を集めてメタ解析をした結果その阻害効果が強く示されています。

#24 Wilson et al., 2012

また、バイクなどの持久的トレーニングよりもランニングを用いた持久的トレーニングのほうが大きく筋力トレーニングの効果を阻害してしまいます

競技練習は持久的トレーニングになりえる

持久的トレーニングというと、練習後のインターバル走や長距離ランニングを思い浮かべるかもしれませんが、実は競技練習自体が持久的トレーニングになりえます。(競技を行っていれば持久的トレーニングを行わなくても良いということではありませんが)

こちらはバスケットボール[2]とサッカー[3]の、試合中の各走行スピードの走行距離を測定した研究をまとめた図なのですが

どちらの競技も歩行・ジョギング~長距離走程度の強度の運動が大半を占めています。

先ほど紹介したWilsonらの研究において、持久的トレーニングの実施時間が長いほど、頻度が多いほど筋力トレーニングへの阻害効果が大きいことが示されています。

これらのことを総合して考えると、練習を多く行っている選手、試合に多く出場している選手ほど、筋力トレーニングの効果が打ち消されている可能性が高いということです。

実際に、バスケットボールのリーグ戦期間中に、筋力維持のための筋力トレーニング(20分×週2回)を行ったところ、試合に多く出場していた選手ほど筋力の落ち幅が大きかったことを示すデータもあります[1]。

出場機会に恵まれていないのはある意味チャンス?

一方で練習量、出場機会が少ないことにより、逆に持久力がスタメンと差がつく可能性も考えられます。

しかしそこは短時間で心肺機能に負荷をかけられるHIITなどを行うことで、筋力向上への阻害効果を最小限にしつつ、ある程度カバーできるでしょう。

スピード、ジャンプ力、アジリティなどの瞬発的な能力は筋力、パワーによる貢献度が大きいです。

つまり、
出場機会が少ない
⇒相対的に筋力トレーニングの効果が高くなる
⇒スタメンよりも身体能力の向上率が高くなる!

といったことが考えられます。

また疲労の蓄積が小さい分、+αでのトレーニングも可能になり、さらに差をつけることも可能でしょう。(オーバートレーニングには注意ですが!)

とはいったものの、やはり試合で活躍するためには「技術」「戦術理解」「経験」なども非常に重要です。

むしろ競技によってはそちらのほうが圧倒的に大事でしょう。そこからは目を背けることはできません。

しかし繰り返しになりますが、身体能力の向上についてはBチームのほうが圧倒的に有利特に、インシーズンの間は

しっかりと技術練習の自主練も行ってそこの差を埋めたり、なんなら向上した身体能力をうまく活かして新たな技術を習得したり、、戦術への理解を深めるための努力を行ったり、コート・グラウンドの外からだから分かることもあったり、、

何事も捉え方によってはチャンスに変わります。

結果を変えたければ、まずは環境への捉え方を変え、行動を変えていきましょう!

その環境はチャンスです!

執筆者:佐々部孝紀(ささべこうき)


参考文献

  1. Caterisano, A, Patrick, BT, Edenfield, WL, and Batson, MJ. The effects of a basketball season on aerobic and strength parameters among college men: Starters vs. reserves (abstr.). J Strength Cond Res 11: 21–24, 1997.
  2. N.B.Abdelkrim, Castagna, C, Jabri, I, Battikh, T, Fazza, S El, and Ati, J El. ACTIVITY PROFILE AND PHYSIOLOGICAL REQUIREMENTS OF JUNIOR ELITE BASKETBALL PLAYERS IN RELATION TO AEROBIC–ANAEROBIC FITNESS. J Strenght Cond Res 24: 2330–2342, 2010.
  3. Rampinini, E, Coutts, AJ, Castagna, C, Sassi, R, and Impellizzeri, FM. Variation in top level soccer match performance. Int J Sports Med 28: 1018–1024, 2007.
  4. Wilson, JMJM, Marin, PJPJ, Rhea, MR, Wilson, SMC, Loenneke, JP, and Anderson, JC. Concurrent training: a meta-analysis examining interference of aerobic and resistance exercises. J Strength Cond Res 26: 2293–2307, 2012.Available from: http://journals.lww.com/nsca-jscr/Fulltext/2012/08000/Concurrent_Training___A_Meta_Analysis_Examining.35%5Cnhttp://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/22002517

 

 

 

 

Follow me!

【第68回】身体能力は控え選手のほうが上がる!” に対して1件のコメントがあります。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です