【第136回】脚のつりの原因は水分不足ではない!
この時期は多くのスポーツが佳境を迎えたり、すでに次のシーズンに向けた準備を始めたりしているところでしょう。
大事な試合なほど『脚をつってしまう』選手も多いですよね。
教科書的には脚のつりは脱水が一要因とされていますが、この時期でも脚をつってしまう選手はつってしまうという事実。
実は脚のつりというのは科学的にもまだ解明されていないことも多い分野なんです。
以前の記事(こちら)でも脚のつり(Exercise Associated Muscle Cramp:EAMC)については紹介させていただきましたが、2019年に発表された非常に興味深い研究を本日は紹介します!
脱水後の水分摂取が筋のつりやすさを増す!
Water intake after dehydration makes muscles more susceptible to cramp but electrolytes reverse that effect
というタイトルの論文が今日紹介する研究です(Lau et al., 2019)。
このタイトルを翻訳すると
『脱水後の水分摂取はつりやすさを増加させるが、電解質補給には逆の効果がある』
といったところ。
結論から言ってしまうと、水分というよりは『真水』の摂取が良くないということ。
以下簡単な内容を紹介します。
方法
10人の被験者に
・脱水後に真水を摂取した場合
・脱水後にOS-1を摂取した場合
の2パターンで、筋のつりやすさを検証しました。
筋のつりやすさは、外部からの電気刺激を加えたとき、何ヘルツで筋肉がつったかを記録。
結果
以下のように、
🔻脱水しただけでは筋のつりやすさは変わらない
🔻真水の摂取は有意に筋がつりやすくなる
🔻OS-1の摂取は有意に筋がつりづらくなる
といった結果を示しました。
※グラフは上にいくほど(Hzが大きくなるほど)筋がつりづらいということを示しています。
また、同時に体内のナトリウム濃度も測定しているのですが、真水摂取の群は有意にナトリウム濃度が低下しており、それが脚のつりやすさに関連していると思われます。
現場での活用
ついつい現場では『水分を補給しよう』という声掛けをしてしまいますが、脚のつりに関していうと水分が果たす役割は小さく、むしろ電解質(ナトリウムなどのミネラル)の補給のほうが重要であることが示唆されました。
『そんなの考えれば当たり前じゃん』と思うかもしれませんが、スポーツ活動中に電解質の濃度まで考えて補給できていますか?
薄めたポカリではむしりOS-1よりも真水に近いので、この研究のように脚のつりを促進してしまうかもしれません。
一方で、水分は水分で持久力やパワーといったパフォーマンスの維持には重要な役割を果たします。
(詳しくはこちら→【第101回】水を飲むだけでパフォーマンスが上がる?~水分状態が筋力・持久力に与える影響~)
●水分→循環血液量を維持し、パフォーマンスや認知機能のキープ、熱中症の予防に貢献
●電解質→脚のつりを防ぐ、水分の体内への保持をサポート
といった形で、別の役割を果たすものとして考えておいたほうが良いでしょうね。
相変わらずコロナ禍で自分でボトルを用意するチームも多いと思います。
今一度、ボトルに何を入れるかを考え直してみましょう!
執筆者:佐々部孝紀(ささべこうき)
最近はオフシーズンに入ったチームも多いので、ありがたいことにトレーニング指導のご相談も多くいただきます。
予算的に厳しいところはオフシーズンの間だけ(例:1~4月)なども対応出来ますので、スケジュール埋まる前にご連絡ください!
参考文献
- Lau, WY, Kato, H, and Nosaka, K. Water intake after dehydration makes muscles more susceptible to cramp but electrolytes reverse that effect. BMJ Open Sport Exerc Med 5, 2019.