【第107回】スクワットでのひと工夫でパワー発揮を高める
パワー発揮を高める種目と言えば?
こう聞かれると、ある程度トレーニング経験のある人は「クリーン」「スナッチ」「ジャンプスクワット」などを思い浮かべるのではないでしょうか。
確かにこれらは大きなパワー発揮のできる種目ですが、スクワットや自体重でのジャンプトレーニングとは、『発揮するパワーの種類が違う』とも言えます。
一般的に、パワー(仕事率)とは力×速度で示されます。
そのため高重量のスクワットであろうと自体重のジャンプトレーニングであろうと、身体やバーの移動が伴っている場合はパワーを発揮します。
言い換えると、種目によってパワーの構成要素である『力』と『速度』の大きさが異なるということです。
例えばスクワットであれば『大きな力』×『小さな速度』のパワー
クイックリフトであれば『中程度の力』×『中程度の速度』のパワー
プライオメトリクスでは『小さな力』×『大きな速度』のパワー
になってきます。
※プライオメトリクスの中でも、高い台から落下してのDrop Jumpなどではエキセントリック局面で大きな力を発揮する場合もありますが
ジャンプ力を高めるためには最大筋力も最大速度の強化も必要で、特に不足している要素に対してのアプローチが有効であることが近年示されており(Reyes et al., 2017)、ジャンプなどのフィールドパフォーマンス向上にはやはりスクワットなどのエクササイズも必要不可欠であることは間違いありません。
スクワットは『最大筋力』強化の種目としても捉えられますが、『大きな力』×『小さな速度』のパワー強化の種目として捉えることで、ちょっとした工夫も可能になってきます。
ある程度の重量を用いると、どうしてもエクササイズの挙上速度はどうしても小さくなってしまいます。
しかしその小さな挙上速度の中でもひと工夫を加えることで、より大きなパワーを獲得することができるのです。
Intra-Set Rest
Oliverら(2013)は、スクワット中にIntra Set Restを用いた場合に、より垂直跳び高が向上したことを示しています。
Intra Set Restとは、セットの途中に短い休息を挟む方法です。
Oliverらの研究の場合はIntra Set Restを通常のRestと同様の時間を確保しるので、厳密に言うとセット内のRep数を半分にして、セット数を倍にして実施しているといった形ですね。
(10回3セットを同じ強度で5回6セットにするという形です)
Intra Set Restを挟んだほうが垂直跳び高が向上した理由としては、より疲労の少ない状態で各挙上を行えたため、セッション中の挙上速度の増加(=パワーの増加)が考えられます。
VBT
Velocity Based Trainingという考えがあり、これはエクササイズ中の挙上速度をモニターし、その速度を基にセッション中の変数(回数など)を決めるというものです。
Blancoら(2017)の研究では、最大挙上速度よりも
・20%の速度低下が起きた時点でそのセットをやめる群
・平均40%(20~50%)の速度低下が起きた時点でそのセットをやめる群
に分けて8週間のスクワットのトレーニングを実施したところ、
20%の速度低下までしか許容しなかった群が、全体的なトレーニングボリュームは劣っているのにも関わらず、より大きな垂直跳び高の増加を示しました。
これは研究内でも示されている通り、20%の速度低下までしか許容しなかった群のほうが、セッション中の挙上速度の平均が大きかった(=大きなパワー発揮をしていた)ことに起因すると考えられます。
まとめ
一般的にパワートレーニングというとクリーンやスナッチなどのクイックリフトなどを想像するかもしれませんが、スクワットなどエクササイズも実施の方法によってはより大きなパワー発揮能力を得ることができそうです。
そのための工夫として、
・レスト時間の確保、レストの頻度の増加
・挙上速度のモニター
などが挙げられます。
一方で挙上速度の増加にこだわり過ぎるあまり、フォームが崩れてしまうと本末転倒なので、そこには留意して実施しましょう!
執筆者:佐々部孝紀(ささべこうき)
今日は地元山口で、山口県体育協会主催のスポーツトレーナー研修会の講師を務めさせていただきました!
現在山口県で活動している日本スポーツ協会公認のアスレティックトレーナー取得者は7人とのこと。。(日本全国では4139人)
意外と、需要と供給がつながっていない地方のほうがトレーナーの潜在的なニーズは大きいのかもしれませんね。
今後もこういった形で様々な地域でのお手伝いもできればなと思っています。
(講師依頼などあればいつでも連絡ください!)
同時に今日は富士通アメフト部はライバル、オービックシーガルズとの大一番。
なんとか2点差で勝ったとのことでほっとしています。
次戦は11月30日(土)13:00より富士通スタジアム川崎でセミファイナル!
お時間のあるかたは是非!
参考資料
- Oliver, JM, Jagim, AR, Sanchez, AC, Mardock, MA, Kelly, KA, Meredith, HJ, et al. Greater Gains in Strength and Power With Intraset Rest Intervals in Hypertrophic Training. J Strength Cond Res 27: 3116–3131, 2013.Available from: http://insights.ovid.com/crossref?an=00124278-201311000-00026
- Pareja-Blanco, F, Rodríguez-Rosell, D, Sánchez-Medina, L, Sanchis-Moysi, J, Dorado, C, Mora-Custodio, R, et al. Effects of velocity loss during resistance training on athletic performance, strength gains and muscle adaptations. Scand J Med Sci Sport 27: 724–735, 2017.
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