【第146回】テーピングを巻くと動きづらいけどパフォーマンスは落ちるのか変わんないのかもしくは上がる場合もあんのか

多くの球技系のスポーツにおいて最も受傷頻度の高い傷害である『足関節捻挫』

軽度のものであれば受傷数日で復帰できるものの甘く見てリハビリを怠ると、靭帯の弛みをはじめ、様々な機能障害が残るCAI(慢性足関節不安定症)に陥りって再発を繰り返してしまいます。

適切なエクササイズでも再発率は低下出来ると考えられますが、時にはテーピングやサポーターなどの装具に頼るべき場面もでてきます。

選手の中には「でもテーピング巻くと動きづらいんだよな~」という感覚を持つ人も多くいるでしょう。

しかしながら『動きづらい』=『実際にパフォーマンスが落ちる』が成り立つかというと、、?

断言はできないですよね。

またパフォーマンスと言ってもジャンプやスプリント、アジリティなど様々なものがあります。

そこで今回はCordovaらの2005年のメタアナリシスと、Lau&Chengの2019年のシステマティックレビューを基に、実際のパフォーマンスへの影響について考察していきましょう。

 

テーピングがパフォーマンスに与える影響

 

各パフォーマンスへの足首の装具の影響

Cordovaら2005は足関節の装具(テーピングorサポーター)がパフォーマンスに与える影響についてメタ解析を行い、各パフォーマンスに与える影響について検証しました。

その結果、スプリント、アジリティ、ジャンプにおいてパフォーマンスの有意な変化は認められませんでした。

また、効果量(ES)を見ても低下率は0.2以下とTrivialに分類され、%に換算しても1%程度の効果の大きさであるため、多くの人とっては心肺する必要のない低下でしょう。

一方で、著者も考察で述べているのですが「有意ではないにしろ1%ってそこに特化したトップアスリートにとっちゃ影響でかくね?」とも考えられます。

例えば100m走を10.00秒で走れる選手の場合、10.10秒になるってことですからね。

「トップアスリートへの影響はこの程度でも大きいし、さらなる検証が必要である」と著者も締めくくってます。

その研究から14年後、LauとChangはトップアスリートを被験者として限定したシステマティックレビューを行っています。

 

トップアスリートへのテーピングの影響

こちらの研究ではテーピングの部位は足首に限定しない代わりに、被験者をトップアスリートに限定しています。

また、こちらの研究では採用された研究が各変数で少なかったからか、メタ解析は行われておらず、各研究のESを算出しているのみに留まっています。

以下は結果を抜粋したものです。

有意な効果を示したのはHop(片脚での前方のジャンプ)へのポジティブな影響と、垂直方向へのジャンプのネガティブな影響です。

両方とも跳躍動作としては同じくくりのはずなのに、異なる結果を示しています。

ここで一度バランスの結果にも目を向けると、ES=0.26~0.53と中程度のポジティブな影響を与えています。

レビューで算出した値は0をまたいでしまっている(=有意な結果ではない)ものの、元の論文(Someeh et al., 2015)のデータでは足関節のテーピングによってバランスのパフォーマンスが有意に向上しています。

足関節のテーピングによってバランス能力が向上したのは、足部の安定性が向上したことに起因すると考えられます。

もう一度ジャンプのパフォーマンスについて考えましょう。

垂直跳びは比較的関節を大きく動かす運動課題です。

一方でHopは、特に連続のHopになると大きな関節運動で力を出すというよりは、関節の無駄な屈曲伸展を行わず、腱の反発を使うことが重要になると考えられます。

つまり、Hopにおいては下肢へのテーピングを行うことで関節の無駄な動きが抑えられてパフォーマンスが向上した一方で、垂直跳びに関しては関節の必要な動きが制限されてパフォーマンスが低下したのでは?と推察できます。

まとめ

●テーピングがジャンプ、スプリント、アジリティなどのパフォーマンスに与える影響は小さいが、トップアスリートにおいては無視できない大きさの影響?

●トップアスリートの場合、テーピングはHop、バランスの能力を改善する可能性がある一方で、垂直跳びのパフォーマンスは低下する可能性あり

「テーピングがパフォーマンスにどのような影響を与えるのか?」という問いに対しては

「運動課題による」

という答えになりそうです。

また、Someehら(2015)の研究においても、バランスのパフォーマンスは健常な選手でも向上したものの、足関節に不安定性のある選手での効果が大きい傾向がありました。

傷害再発予防の点からしても、パフォーマンスの発揮の観点からも、既往があって不安がある場合は巻いておいたほうが得策そうですね!

執筆者:佐々部孝紀(ささべこうき)


オリンピックに続き、パラリンピックも閉幕しましたね。

2021年度もいよいよ後期に入っていきます。

もろもろ忙しくてここ最近出来ていませんでしたが、そろそろセミナー等もまた開催していこうと思います!


参考文献

  1. Cordova, ML, Scott, BD, Ingersoll, CD, and Leblanc, MJ. Effects of ankle support on lower-extremity functional performance: A meta-analysis. Med Sci Sports Exerc 37: 635–641, 2005.
  2. Lau, KKL and Cheng, KCC. Effectiveness of taping on functional performance in elite athletes: A systematic review. J Biomech 90: 16–23, 2019.Available from: https://doi.org/10.1016/j.jbiomech.2019.04.016
  3. Someeh, M, Norasteh, AA, Daneshmandi, H, and Asadi, A. Immediate effects of Mulligan’s fibular repositioning taping on postural control in athletes with and without chronic ankle instability. Phys Ther Sport 16: 135–139, 2015.Available from: http://dx.doi.org/10.1016/j.ptsp.2014.08.003

 

 

 

 

Follow me!

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。

CAPTCHA