【第170回】スクワットやベンチプレス、ずっと10回で実施するのはナンセンス

皆さんはスクワットやベンチプレスを実施するときに、何回何セットで実施することが多いですか?

筋肥大目的だと少しレップを多め、最大筋力向上目的だとレップ数を少なくして重量を上げる、等の原則を理解している方は問題ないかもしれませんが、未だに『10回3セットでいつも実施している』という話を聞きます。

それ、ナンセンスなのでやめましょう。

理由①刺激を変えたほうが効果が高い

そもそも10回に限らず、『数か月間同じ回数で実施する』というのがナンセンスです。

例えば1月は15回、2月は10回、3月は5回という形で実施した場合と、1~3月までの3か月間ずっと10回で実施した場合だと、セット数が同じならトータルのレップ数は等しくなりますよね?

しかしトレーニングの効果は回数を定期的に変えて実施た群のほうが大きいということが複数の研究で報告されており、このように時期ごとに回数設定などを変えることをピリオダイゼーション(期分け)と言います。

#103 Williams et al., 2017

『ピリオダイゼーション』なんて聞くとすごく専門的に聞こえますが、プロのトレーニング指導者であれば必ずと言っていいほど当たり前にやっている概念です。

ただ、独学でトレーニングを実施している選手や、トレーニングの専門家ではない医療従事者の方が処方するプログラム等では意外とやってしまいがちな印象です。

試合に向けた綿密なピリオダイゼーションをしてくれる専門家がいないor雇えない現場でも、月ごとに10レップ→8レップ→6レップ→4レップ→10レップとサイクルするだけでも効果はだいぶ違ってくると思うので、是非試してみてください。

理由②10回だと最大筋力向上に対する強度が足りなくなる

ウエイトトレーニングの目的は主に『筋力向上』と『筋肥大』だと思います。

※効率の良い動作の学習や柔軟性の向上なども副次的にはありますが

結論から言うと、10レップのトレーニングでは筋肥大は達成出来ても筋力向上に対しては頭打ちがすぐ来ます。

ウエイトトレーニングは基本的にレップ数が多いほど扱える重量は軽くなり、レップ数が少なくなるほど扱える重量は重くなります。

10レップぎりぎり出来る重さ(10RM)は換算表からだと75%の重量になりますが、実際に複数セットのトレーニングを行うとしたら65-70%程度の重量が現実的でしょう。RIRが2-4程度ですね。

※ここでは%法の換算の正確性には触れません

この負荷が筋力向上にどの程度寄与出来るかという問題ですが、これはトレーニングをおこなう人のレベルによります。

下の図はRheaら(2003)とPetersonら(2004)の同一研究グループのメタアナリシスの結果2つをまとめたものになります。

トレーニング経験があまりない群では40-65%の比較的低い強度でも筋力向上が期待出来そうです。

一方、ある程度のトレーニング経験のある被験者では70%以上、出来れば80%、アスリートレベルでは75%以上、出来れば85%ほどの強度が最大筋力向上には求められます。

つまり10レップのトレーニング(65-70%1RM程度の負荷のトレーニング)では、トレーニングレベルが上がるほど最大筋力向上効果は期待出来ないということになります。

一方でトレーニングを始めたばかりだと『10レップでも筋力向上をしてしまう』ので、その成功体験から抜け出せずに10レップのトレーニングを続けている人も中にはいるのかもしれません。

理由③筋肥大が主目的でも10回ばかりは非効率的

理由①②では主に『筋力』について述べたのですが、中には「最大筋力の向上は別に求めてない。筋肥大さえ出来れば良いのなら、10レップのトレーニングの継続でも問題ないのでは?」という方もいるかもしれません。

しかし筋肥大が目的だとしても、高強度低レップのトレーニングを有効に活用したほうが良いでしょう。

Carvalho(2021)らはトレーニング経験のある男性26名を

✓筋肥大群
✓最大筋力&筋肥大群
に分けて8週間トレーニングの介入を行いました。

筋肥大群は8週間かけて筋肥大目的の12RMを8レップ4セットほどおこなうトレーニングを実施しました。

一方で最大筋力&筋肥大群は、最初の3週間に最大筋力向上を主目的とした高重量低回数のトレーニングをおこない、後の5週間は筋肥大群と同様のトレーニングを実施しまいた。

つまり筋肥大目的のトレーニングの期間は

筋肥大群⇒8週間

最大筋力&筋肥大群⇒5週間

ということになります。

しかしながら結果は、最大筋力&筋肥大群のほうが有意に大きな外側広筋の肥大を示しました。

これはおそらく最大筋力を向上するトレーニングを実施したことで筋肥大期に扱える重量が増え、その結果筋肥大の効果が大きくなったものかと考えられます。

もちろん筋肥大群のトレーニングが8週間変化なしと長すぎたために停滞、オーバーリーチングから回復しなかったなどの可能性も除外出来ませんが、現場の肌感的にも扱える重量が重くなったほうが筋肥大効果も大きくなるのは間違いないかと思います。

どちらにせよトレーニングにはある程度のバリエーションは必要なので、ずっと10レップでの実施というのはやはり非効率的なのは間違いないかと思います。

まとめ

✓トレーニングは時期ごとに刺激を変えたほうが効果的(ピリオダイゼーションの必要性)

✓10回だとトレーニング経験を積んでいくと強度不足になり、筋力が向上しない

✓筋肥大が主目的だとしても最大筋力期をはさんだほうが筋肥大効果が高まる

以上のことから、10回×3セット、10回×5セットを数か月以上実施するのはナンセンスというのは理解出来たかと思います。

ずっと10回でやってしまっていた人は『毎月2レップ減らす代わりに重量を上げる』のようなシンプルな方法でも良いので、是非刺激を変えてみてください。もちろん高重量だとフォームは崩れやすいので細心の注意を払って。

試合に向けたもっと踏み込んだピリオダイゼーションをしたい、高重量でも崩れないフォームを身に付けたいという人は、独学だと無理なので、是非専門家に頼ってください!

 

執筆者:佐々部孝紀


今月末はずっとやりたかった『大学バスケ選手合同トレーニング』を開催します!(申し込は好評につき締め切らせていただきました!)

✓他大学の選手と一緒にトレーニングを通して交流する機会の提供

✓トレーニング指導をしてくれる専門家がいないチームの選手でもやる気さえあれば専門的な指導を受けられる環境の提供

他にも色々思いを込めていますが、とにかく僕自身楽しみです!

 

次は若手トレーニング指導者向けの実技&座学セミナーも(頭の中では)企画しています。

みんなで勉強して、重りを上げて、終わったら肉を食べにいくというところまでは決まっています。笑

そちらも計画が固まったらリリースします!


参考文献

Carvalho, L., Junior, R. M., Truffi, G., Serra, A., Sander, R., De Souza, E. O., & Barroso, R. (2021). Is stronger better? Influence of a strength phase followed by a hypertrophy phase on muscular adaptations in resistance-trained men. Research in Sports Medicine, 29(6), 536–546. https://doi.org/10.1080/15438627.2020.1853546

Peterson, M. D., Rhea, M. R., & Alvar, B. A. (2004). MAXIMIZING STRENGTH DEVELOPMENT IN ATHLETES: AMETA-ANALYSIS TO DETERMINE THE DOSE- RESPONSE RELATIONSHIP. J Strenght Cond Res, 18(2), 377–382. https://doi.org/10.1146/annurev.psych.55.090902.141913

Rhea, M. R., Alvar, B. A., Burkett, L. N., & Ball, S. D. (2003). A meta-analysis to determine the dose response for strength development. Medicine and Science in Sports and Exercise, 35(3), 456–464. https://doi.org/10.1249/01.MSS.0000053727.63505.D4

Williams, T. D., Tolusso, D. V., Fedewa, M. V., & Esco, M. R. (2017). Comparison of Periodized and Non-Periodized Resistance Training on Maximal Strength: A Meta-Analysis. Sports Medicine, 47(10), 2083–2100. https://doi.org/10.1007/s40279-017-0734-y

 

 

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