【第103回】有名選手の真似をしても上手くならないし強くならない~『自己分析』が欠落した頑張りは意味をなさない~

最近はありがたいことにSNSやブログのお問合せで色んな方から質問をいただくことも多いです。

その中で

「足を速くするには何をすれば良いですか?」

「バスケやってるんですけど、どんなトレーニングがおススメですか?」

といった質問も多いのですが、このような質問には「お答えしかねます」が回答です。

別に面倒くさいわけでも、意地悪をしている訳でもなくて、ほんまに何て答えたらいいか分からないので、、

何をすればいいか?を決める要因

「〇〇を達成するためには何が必要なんだろう?」

ということをが気になり、専門家に聞いてみようという発想になるのは分かります。

そこで求められてる回答はこんな感じなんだと思います。

質問者「ジャンプ力を上げたいんですけど、どうすれば良いですか?」

回答者「すくわっとですね!!」

残念ながら、本当に効果を得たいのならこんなに単純に物事を考えてはいけません。(スクワットが不要という訳では決してありません)

ではどう考えればいいのかといったらこちらの図です。

●目的達成のためには複数のアプローチがある(方法①~③)

●目的達成のためには、その習熟度に応じてアプローチの方法を次の段階に進める必要もある(方法①⇒方法①Lv.2)

●目的達成のためには、人によって実施すべき方法が異なる場合もある(方法②or方法②’)

●目的達成のために、初期段階では実施すべきだが、ある程度のレベルになると実施の必要性が薄れたり、実施が逆効果になりえるものもある(方法③)

もっと端的にいうと、目的の達成のためには

◆達成したいもの(目的)

◆現時点での自分の状況

の2つを考慮したうえで、方法を選ばなくてなならないということです。

人によって(被験者)によって最適なアプローチが変わるかもという研究

レベルの違い

例えば、似たようなアプローチをしたけれども結果が違ったという研究もあります。

例えば以下2つの研究では、深いスクワット(深く降ろすスクワット)と浅いスクワット(浅く降ろすスクワット)でのジャンプ力向上への効果について検討していますが、まったく異なる結果を示しています。

 

Hartmannら(2012)の研究では深いスクワットのほうがジャンプ力向上を示し、

Rheaら(2016)の研究では、浅いスクワットのほうがジャンプ力向上を示しています。

この結果は被験者の特性によるものが大きいと考えられます。

トレーニング初心者(Hartmannらの研究のように、深いスクワットで85㎏程度しか挙上できない筋力レベルの選手)であれば、深いスクワットで可動域全体の筋力が強化されます。

一方で、ある程度筋力レベルの高い被験者(Rheaらの研究のように、深いスクワットが130㎏程度は挙上可能な選手)であれば、深いスクワットで扱える重量だと、立ち上がり切る直前の局面(浅いスクワットをするような関節角度)だと、筋力向上のための負荷が十分でない可能性があります。
そのため、浅いスクワットで、深いスクワットで扱う重量よりも重い負荷で刺激を与えることによって、その関節角度での筋力向上⇒ジャンプ力向上につながったのかと。

もちろんこれは単一の研究の結果なので、上級者は深いスクワットを実施せずに浅いスクワットのほうが良いぜ!って訳でもないのでその辺はご理解を。

特性の違い

パワー=力×速度
と表現されます。

Reyesらの研究(2017)では、被験者を
・力を出すのが得意な選手(逆に速度≒筋の収縮速度を出すのが苦手)
・速度を出すのが得意な選手(逆に力を出すのが苦手)
に分けて、それぞれ苦手な要素にアプローチするのが最もジャンプ力向上に効果的だったと報告しています。

※厳密には上記の表現は簡便化しすぎていましが、、イメージはそんな感じです。詳しくは論文の本文を

このように、同等のレベル(同じくらいのジャンプ力の選手)でも、その能力を構成している各要素のレベルがどれくらいかによっても、効率的なアプローチは変わることも多いのです。

初心者には必要だけど高いレベルになるとそこまで?なこと

次は僕自身の主観も大きくなるのですが、、例えば静的ストレッチに関しては最初は実施を勧めるけど後に実施の必要性が下がってくる場合もあるのかと。

ウエイトトレーニングで柔軟性が向上することはみなさんもご存じだと思います。

しかし、トレーニング初心者で筋力レベルも柔軟性も低い場合は、静的ストレッチも並行して行って、効率的に柔軟性を獲得しながらトレーニングのフォームも獲得していくといったこともありかと。

一方で習慣的な静的ストレッチは筋力発揮にネガティブな影響を及ぼす可能性もあるので(Barbosa et al., 2019)、十分な可動域を獲得している場合は、実施のしすぎはマイナス面が大きくなるかもしれません。

まとめ

目的の達成のためには

◆達成したいもの(目的)

◆現時点での自分の状況

をきちんと考える必要があります。

今回はジャンプを例に説明をしましたが、これはトレーニングでも練習でも、なんならスポーツを離れたところでも。

本当に効果なトレーニングを実施したければ、まずは目的達成のために必要な要素を洗い出し、その各要素のレベルがどうなのかといったことを考えること。

上で紹介したスクワットの深さに関しても、既往歴や実施しているフォームや筋肉の固さなど、僕らは色んなことからそのときに適した深さを考えています。

まずは選手の皆さん、思考を張り巡らせて試行錯誤をしてみてください。

僕らトレーニング指導者はその思考のサポートもする立場です。

一緒に思考の手伝いをして欲しいときには、是非信頼できるトレーニング指導者に頼ってみてください!

執筆者:佐々部孝紀(ささべこうき)


もう7月も終わりに近づいてきましたね。

大学での勤務も高校の授業も落ち着き、実は8月は僕にとっても『夏休み』。けっこうお休みが増えるんです。(うれしい)

パーソナルトレーニングやトレーニングの講習のご依頼をいただいても、大学・高校の勤務期間中は日程が合わずに指導できないことも多かったのですが、今から1~2か月は比較的スケジュールに余裕が出ますので、以前ご連絡をいただいた方も是非!


参考文献

BARBOSA, G. M., TRAJANO, G. S., DANTAS, G. A. F., SILVA, B. R., & VIEIRA, W. H. B. (2019). Chronic effects of static and dynamic stretching on hamstrings eccentric strength and functional performance: a randomized controlled trial. J Strength Cond Res, 00(00), 1–9.

Fatouros, I. G., Kambas, A., Katrabasas, I., Leontsini, D., Chatzinikolaou, A., Jamurtas, A. Z., … Taxildaris, K. (2006). Resistance training and detraining effects on flexibility performance in the elderly are intensity-dependent. Journal of Strength and Conditioning Research / National Strength & Conditioning Association, 20(3), 634–642. https://doi.org/10.1519/R-17615.1

Hartmann, H., Wirth, K., Klusemann, M., Dalic, J., Matuschek, C., & Schmidtbleicher, D. (2012). Influence of squatting depth on jumping performance. Journal of Strength and Conditioning Research, 26(12), 3243–3261. https://doi.org/10.1519/JSC.0b013e31824ede62

Jiménez-Reyes, P., Samozino, P., Brughelli, M., & Morin, J. B. (2017). Effectiveness of an individualized training based on force-velocity profiling during jumping. Frontiers in Physiology, 7(JAN), 1–13. https://doi.org/10.3389/fphys.2016.00677

Rhea, M. R., Kenn, J. G., Peterson, M. D., Massey, D., Sim??o, R., Marin, P. J., … Krein, D. (2016). Joint-Angle Specific Strength Adaptations Influence Improvements in Power in Highly Trained Athletes. Human Movement, 17(1), 43–49. https://doi.org/10.1515/humo-2016-0006

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