【第92回】筋力トレーニングで防げるケガと防げないケガ

SNSでの情報収集が容易になり、様々な情報が簡単に手に入るようになりました。

その中で「筋力トレーニングは怪我の発生を予防する」といったものを目にしたことのある人もいるのではないでしょうか?

僕自身もチームや個人でのトレーニング指導では、身体づくり、身体能力の向上に加えて「傷害の予防」を大きな柱として考えています。

実際パーソナルトレーニングの依頼でも、パフォーマンスを高めたいということに加えて「昔から怪我をしがちなので、怪我をしない体を作りたい」といったご依頼を受けることも増えてきており、そういったことは選手にも認識され始めたのかなーと感じています。

しかしその一方で、筋力トレーニングだけでは防ぎきれないケガがあることも認識しておくことが必要です

筋力トレーニングで防ぐことができる怪我

まず初めに、筋力トレーニングで防げるケガについてです。

当ブログやツイッターでも何回か紹介している研究ですが、筋力トレーニングや固有受容器トレーニング(バランストレーニング)などが様々な傷害の発生率に与える影響について、複数の研究の結果をまとめたメタアナリシスです(Lauersen et al., 2014)。

#8 Lauersen et al, 2014

このメタアナリシスで採用している研究は、傷害の種類を限定していません。
つまり特定の傷害についてではなく、様々な傷害に対する、筋力トレーニングorバランストレーニングの傷害予防効果について分析しているということです。

そう考えると、RR(何もしてない群に比べた傷害発生率)は

筋力トレーニング
0.32

バランストレーニング
0.55

と、筋力トレーニングのほうが優れた結果に。

見えますが、

そんなに短絡的に考えることはできないのです。

採用された25の研究のうち、
筋力トレーニングの傷害予防効果を調べた研究は4つ
バランストレーニングの傷害予防効果を調べた研究は6つ
これらの研究の中にはすべての傷害発生率を検討したものがあるものの、ある特定の傷害発生率について調べたものも含まれています。

筋力トレーニングにおいて特定の傷害への予防効果について調べた研究は、ハムストリングの肉離れと膝の慢性障害について検討したもので
バランストレーニングにおいて特定の傷害への予防効果について調べた研究は、すべて足関節捻挫について検討したものでした。

つまり先ほどのRR(筋力トレーニング:0.32、バランストレーニング:0.55)についてもう少し深く解釈すると

筋力トレーニングは、ハムの肉離れや膝の慢性障害を中心とした傷害の発生率を32%に抑える

バランストレーニングは、足関節捻挫を中心とした傷害の発生率を55%に抑える

といったふうに読み取れます。

実際に他の研究でも、ハムストリングのエキセントリックトレーニングが肉離れを防ぐというデータもあり(Attar et al., 2017)、膝の慢性障害に対しては予防だけでなく、リハビリにおいても筋力トレーニングの有効性、再発予防効果の高さが報告されています(Kongsgaard et al., 2009)。

これらのデータから考えても、筋力トレーニングが
・ハムストリングの肉離れ
・膝の慢性障害
の予防に大いに役立つということは間違いないでしょう。

筋力トレーニングだけでは防ぐことが難しい怪我

先ほど挙げた足関節捻挫は、バランストレーニングである程度予防できる一方で、筋力トレーニング単独だとあまり予防効果がないこともレビュー論文で示されています(Verhagen and Bay, 2010)。

また前十字靭帯損傷の予防にも、バランスや正しい片足着地姿勢の習得などを含めた複合アプローチがとられることが多く(Lauersen et al., 2014)、これもまた筋力トレーニングだけでは防ぐことは難しい怪我である印象です。

まとめ

筋力トレーニングではハムの肉離れや膝の慢性障害を予防に大きく貢献

バランストレーニングでは足関節など下肢の捻挫予防に貢献

ターゲットとする傷害によって、優先度の高いアプローチは違ってきます。

しかし貢献度が高いのはそれぞれ上のようになる一方で、実際にはハムストリングの肉離れを筋力以外の要素(脚の接地のしかたなど)が原因で受傷することもあるでしょうし、足関節周りの筋力が不足していることで捻挫を再発してしまうこともあるでしょう。

それに筋力トレーニングで獲得しうる筋力や柔軟性がないと、そもそも動作の改善を目的とした予防トレーニングの効果も薄いかもしれません。

結局何事も1つの方法にこだわっているとなかなかうまくいかないもの。

傷害の予防も、パフォーマンスの向上も、多角的な視点を持つことが必要ですよね。

執筆者:佐々部孝紀(ささべこうき)

 


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参考文献

Jeppe Bo Lauersen, Ditte Marie Bertelsen, and Lars Bo Andersen
The effectiveness of exercise interventions to prevent sports injuries : a systematic review and meta-analysis of randomised controlled trials. Br J Sports Med 2014;48:871–877

M. Kongsgaard, V. Kovanen, P. Aagaard, S. Doessing, P. Hansen, A. H. Laursen, N. C. Kaldau, M. Kjaer, and S. P. Magnusson
Corticosteroid injections, eccentric decline squat training and heavy slow resistance training in patellar tendinopathy. Scand J Med Sci Sports 2009: 19: 790–802

Wesam Saleh A. Al Attar, Najeebullah Soomro, Peter J. Sinclair, Evangelos Pappas, and Ross H. Sanders
Effect of Injury Prevention Programs that Include the Nordic Hamstring Exercise on Hamstring Injury Rates in Soccer Players: A Systematic Review and Meta-Analysis.Sports Med (2017) 47:907–916

Ealm Verhagen, K Bay
Optimising ankle sprain prevention: a critical review and practical appraisal of the literature.Br J Sports Med 2010;44:1082–1088

 

 

 

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