【第172回】体力測定の結果は思った以上に活用出来るので、くそ程使っていきましょう!

トレーニング指導者であれば必ずおこなうであろう『体力測定』

数値として現状を把握するということはめちゃくちゃ大事です。

「いや、そんな数値に頼らなくても俺は普段の選手の動きを見ていればパフォーマンスもだいたいの体力は分かる」という神の目(?)を持った人ではない限り、実施すべきことであることは間違いないです。そんな人会ったことなし、僕には無理ですけど。

普段のトレーニング内で扱う重量が増えてきてるな、とか、練習中にばてなくなってきているな、とかはもちろん見ていたら感じ取ることは出来ますが、筋力が、パワーが、持久力がどの程度伸びてきているかは、測定を行わないと(もしくは速度デバイスなどでのモニタリングをしないと)分かりません。

ただし、『体力が伸びているか確認する』だけでなく、それを具体的にどのように可視化するか、どのように活用するかを具体的に考えるのはめちゃくちゃ大事です。

『体力測定をすること』ではなく『体力測定を活用すること』が大事。

これは1000回くらい言いたい。

体力測定の労力が10くらいだとしたら活用は100くらいいっときたい。

今回はそのアイディアをいくつか皆さんにも内容をシェアします。

そもそも体力とは?

一般の方はよく

体力=持久力

という勘違いをしてしまっているケースがありますが、持久力は体力要素の1つに過ぎません。

体力要素には、筋力、スピード、パワー、敏捷性(アジリティ)、持久力、柔軟性などが挙げられます。体育の授業でやった体力テストをイメージすると分かりやすいかもしれません。50m走とか握力とか測りましたよね。

体力測定を行うときは、まずその競技に必要な体力要素(筋力、持久力、アジリティなど)をピックアップし、その体力要素を測定する適切なテスト(スクワット1RM、20mシャトルラン、プロアジリティテストなど)を選定する必要があります。

体力測定の目的

体力測定の種目を選ぶ際に、その目的、言い換えると『活用方法』も明確にしておく必要があります。

僕の考える体力測定の目的は

①個人、全体の現状・成果の確認

②目標設定及びモチベーションアップ

③全体のプログラムへの反映(計画作り及びその修正)

④負荷設定への活用

になります。

以下それぞれについて解説していきます。

①個人、全体の現状・成果の確認

体力測定の推移を測って、個人の成果やチーム全体の推移を選手本人、コーチ・監督にフィードバックするのはマストです。

ここをちゃんと出来てなかったらチームをクビになってもしょうがない。それくらい大事です。

フィードバックの際にポイントとなるのは適切なグラフを活用すること

使うグラフは

✓推移・成果⇒折れ線グラフ

✓短所・長所の確認⇒レーダーチャート

あたりですね。

⇓これはめちゃくちゃ簡単な例です。昨年光電管も購入したのでここにスピードやアジリティも加えてるチームもあります。

レーダーチャートはチームの平均値を10点中の5点とかにする方法もあれば、外から引っ張ってきた目標値を◇点にするといった方法がありますが、僕は後者を活用しています。

しかしその数値の信頼性や妥当性に疑問がある場合は、無理にレーダーチャートは作らずに折れ線グラフだけでも良いかと思います。

明確な目標値がある場合は折れ線グラフの中に点線で示してあげたりすると、目標値との差も分かって良いですね。

②目標設定及びモチベーションアップ

こうったフィードバックシートを配布することは選手のモチベーションにもなります。

取り組みが足りなくて伸びていなかった選手は取り組みを変えるきっかけになりますし、順調に伸びていた選手はこのまま頑張ろうという動機になります。

そして次の体力測定の時期を明示して、ここまでにこれくらいは達成しようという短期目標を決めるのも超大事です。長期的な成長は結局短期的な変化の積み重ねなので。

1年間で成長出来なかった選手はそのままいけば4年間何も得ずに終わってしまいます。体力測定のフィードバックはそういった選手は行動を変えるきっかけにもなります。

チームとして取り組んでいることであれば、チーム平均でここまで達しようという目標を設定するのも良いかもしれませんね。

③全体のプログラムへの反映(計画作り及びその修正)

個人のフィードバックシートだけでなく、全体の平均値、もしくはポジションごと、学年ごとの平均値の推移も出してみましょう。

もしもターゲットとしていたはずの数値のチーム平均値が停滞してしまっていたら、チームとしての取り組みを変える必要があります。

負荷が低すぎたのか?

負荷が高すぎたのか?

提示した負荷で選手が実施出来ていなかったのか?

トレーニング以外の栄養・休養に問題があるのか?

そういった分析の機会になるはずです。

伸びていなかったという事実は測定をしなかったら明らかになっていないので、それが明らかになっただけでも大きな前進です。そこからさらに進むためにも何か取り組みを変えていきましょう。

④負荷設定への活用

負荷設定への活用というのも体力測定の重要な役割の1つです。

分かりやすい例でいったらスクワットの1RMから%で負荷を決める方法。

例えば1RMの85%で3レップ、とか75%で8レップといった設定です。

しかしトレーニングを実施するときはバックスクワット以外の種目も実施しますよね。

そういった場合に行うであろうメイン種目を全部測定するというのも1つの方法ですが現実的ではありません。

僕がよく行う方法は、例えなフロントスクワットやRDLの1RMはバックスクワット1RMの85%と仮定したり、ハイクリーン1RMはバックスクワットの67%に設定したりする方法です。

例えばフロントスクワットの1RMの75%は
バックスクワット1RM×0.85×0.75で計算するといった形です。

このバックスクワットに対する比率は文献も参考にする方法もありますが、自分が指導する集団の特性や普段のトレーニング状況も考慮するべきなので、上記の負荷設定は僕が指導するアスリート以外にもあてはまるとは限りません。しかしある程度は参考になるかと。

また、トレーニング指導者でも意外と出来ていない人もいるのが持久的トレーニングの負荷設定

全員一律で○往復を△秒、とか、ポジションごとの負荷設定とかを実施している現場が多いのではないでしょうか。(とか言いつつ僕も昔はそうやっていましたが。。)

意外とあいつ優秀なんですよ。20mシャトルラン。

20mシャトルランの回数からは20m往復走におけるMaximum Aerobic Speed(MAS)も算出出来るので、HIITの負荷設定に役立ちます。MASというのは最大有酸素性速度のことで、シャトルランを実施していてペースに間に合わなくなった最後の速度です。

テスト中の速度に関しては数回でレベルが上がるごとに0.5km/hずつ上がるようになっています。各レベルの速度は20mシャトルランを最初に報告した論文(Leger & Lambert, 1982)かWikipediaでも確認できるので是非。

スプリントの測定でMaximum Sprint Speedも測定出来ていたらAnaerobic Speed Reserve (ASR)も算出出来るので、ショートインターバルやスプリントインターバルも含め、めちゃくちゃ効率的なHIITの処方が出来ます。個人的には1分とかのロングインターバルはMASの110%などのMAS単独での走速度の計算で良いと思いますが、ショートインターバル(20-30秒とか)だとASRから算出したほうが良いかなと思います。

簡単な説明になりましたが詳細はまたどこかで説明出来ればと思います。

※HIITの種類はこちらの過去記事から!【第139回】筋力向上と持久力向上の両立のためのHIITの活用

また、ターンのスキルなどにも影響されるので妥当性はやや疑問がありますが推定のVO2max (ml/kg/min)も算出出来ます。

その数値と体重からVO2maxの絶対量 (ml/min)も算出可能なので、先行研究(Myles & Toft, 1982)の回帰式を参考にバイクのMaximum Aerobic Powerも計算してリハビリ中の選手の持久的トレーニングの負荷も設定出来ます。

こんな感じでエクセルを作成し
✓体重
✓スプリントのテストの記録
✓持久力テストの記録(20mシャトルランなど)
✓ロングインターバルに活用するMASに対する%
✓ショートインターバルに活用するASRの%
を入力する欄を作っておけば、簡単にHIITの負荷設定が出来ます。

※MSSをターンありのランニングに変換する場合は少しタイムが遅くなるので注意。20mシャトルランで算出したMASを直線走に活用する場合も逆のことが起きます。

まとめ

体力測定の結果は

✓選手のやる気を引き出す個人フィードバックシートの作成

✓フィードバックシートを基に個人の取り組みの反省の機会を与える、短期目標設定をする

✓全体の傾向を把握し、トレーニングの方針の調整に活用

✓筋力測定はウエイトの負荷設定に活用

✓種目ごとのおおまかな重量の比率から他の種目の負荷設定にも活用

✓20mシャトルランからMASを算出し、HIIT(ロングインターバル)の速度を決定

✓20mシャトルランの結果と体重からバイクのトレーニングのおおまかな負荷を算出

✓20mシャトルランとスプリントスピードの測定からASRを算出し、HIIT(ショートインターバル)の負荷を設定

など、めちゃくちゃに活用出来ます。

『体力測定をすること』ではなく『体力測定を活用すること』が大事。

1000回言いたかったけど2回しか言えなかったです。

他にも色々あるのですが、文字数がとんでもないことになりそうなので今回はここまで。。

是非今回の情報をチームの取り組みにも活かしていってください!

執筆者:佐々部孝紀(ささべこうき)


最近は若手トレーニング指導者の人たちからキャリアについての相談を受けることも多くなってきました。

SNSやネット上だけでは伝えられないようなことを伝える場も作っていければいいなーとは思っているので、今後はそういったことにも力を入れていきます!


参考文献

Léger, L. A., & Lambert, J. (1982). A maximal multistage 20-m shuttle run test to predict VO2 max. European Journal of Applied Physiology and Occupational Physiology, 49(1), 1–12. https://doi.org/10.1007/BF00428958

Myles, W. S., & Toft, R. J. (1982). A cycle ergometer test of maximal aerobic power. European Journal of Applied Physiology and Occupational Physiology, 49(1), 121–129. https://doi.org/10.1007/BF00428970

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