ブログ始めて1年たったので過去記事まとめてみました。

このブログを始めてちょうど1年がたちました。

最初はちょっとでも自分の勉強になればいいなーと、軽い気持ちで始めてみましたが、
ちょっとどころじゃない。めちゃくちゃ勉強になっています。やっぱりアウトプットをすることで、初めて考えってのはまとまりますからね。

それに色んな人、ときには思いもよらない人も読んでくださっていて、そこから知り合いも増えて、いいことずくめでした。

てなわけで、2016年の記事についてまとめてみました。

アクセス数トップ5

1位 【第7回】「競技で得られる体力≠競技に必要な体力」

2位 【第17回】トップアスリートの性格的特徴3つ

3位 【第10回】力速度曲線から考える筋力とパワーの関係。小さい選手の生きる道

4位 【第23回】意識高い「系」アスリートになってやしませんか?

5位 【第35回】AT目線、S&C目線

※前後編の記事は前編のアクセス数のみでカウントしており、後編記事は対象に入れてません。

どれもお気に入りの記事たちなのですが、特定のジャンルってわけじゃなさそう。

比較的易しい内容の【第17回】【第23回】から、専門家向けの【第10回】も入ってるのを見て、一般の方から専門の方まで色んな人が読んでくれてんのかな~と勝手にうれしくなっております。笑

あ、記事のカテゴリに、今まで記事冒頭でつけてた専門性【☆★★】も加えたので、専門性ごとの記事をご覧になりたかったらカテゴリ検索してみてください!

【★★★】専門家向け

【☆★★】アスリート・コーチ向け

【☆☆★】一般向け

その他のカテゴリも整理したので、トップページから閲覧も可能です!

 

その他個人的お気に入り記事

2016年のランキングを発表していますけど、2017年記事(第36回~39回)はどれもお気に入りです。是非トップページから読んでみてください!

一般の方にもおすすめの2つ!

【第12回】スマブラ(テレビゲーム)から考えるスポーツの本質

【第22回】スラムダンクから考える指導者のための教育学

こちらはトレーニング科学ってより、体育教師目線の記事です。一般の人でも楽しめる内容なんじゃないでしょうか。

 

最近の発表された話題の論文に対する考察記事!実は3部構成なんです。

【第32回】ヒップスラストでスクワットの弱点を補強する

【第33回】スクワットの深さ①Deep SQのメリット

【第34回】スクワットの深さ②Quarter SQを使うシチュエーション?

実は第32回は、第34回の最後の主張を言いたいための伏線だったのです。。笑

是非専門家のかたと議論をしたい内容です!

最後に

本当にいろんな人の「読んでるよー!」「楽しみにしてる!」がモチベーションです。

みなさん2017年もよろしくお願い致します!

 

もっともっと色んな人に読んでほしいので、イイネやリツイート、シェアしてくれると喜びます~(^^)

【第39回】ピーキングの方法

昨日、本日とNSCAの国際カンファレンスに参加してきました。

貴重な公演が多数聞けたことはもちろん、普段お世話になっている方々に会えたこと、そしてネットやSNSを通しては面識のあったAthleteBodyのアンディさん・八百さんや、河森さんともお話が出来て超ハッピーでした!

※みなさんのブログはこちら↓
AthleteBody
河森さんブログ

ピーキングとテーパリング

さて、本日はその河森さんの講演「ピーキングの捉え方とプログラムデザイン」を聴講した中で、非常にためになった考え方として

ピーキング≠テーパリング

というものがありました。

確かにトレーナー、S&Cの中でもピーキングとテーパリングは混合しがちな考えですが、以下のような意味合いの違いはあります。

ピーキング→狙った重要な試合に向けてコンディションを上げていき、そのピークを合わせること

テーパリング→徐々に練習・トレーニングの負荷を減らしていくこと

テーパリングをすることで、フィットネス(+の要因)を維持しつつ、疲労(-の要因)を減らしていくことで、その足し算、Preparedness(いわゆるコンディション?)を高めていきましょう。

つまり、ピーキングという「目的」の手段としてテーパリングという「方法」があるんだよ。というものでした。

※上記の内容はこちらの記事でも述べられています。講演ではもっと深い内容まで教えてくださいました!

この考えを参考にしたら、チームとしてピーキングをしていくときの、テーパリング以外の戦略も明確になってきます。

 

トータルコンディショニングから考えるピーキング

フィットネスのような短期間では変化しない要素は維持に徹する
疲労のように変化しやすい要因は短期間で増減させることができる

この考えを他領域(栄養、メディカル、メンタル、またはスキル・戦術も?)にも応用することで、トータルのコンディションを高めることができるはずです。

以前の記事で紹介した通り、コンディションはフィジカル的要素(フィットネスや疲労)以外にも、メディカル、栄養、メンタル的要素による影響を受けると考えられます。

 

適切なテーパリングは、この疲労を減少させることによって結果的にピーキング(コンディションの向上)が達成されます。

この図の中には疲労以外にも短期的な増減が可能な要素があるので、それらをコントロールすることもピーキングの手段として考えられます。

以下にその例を挙げます。

睡眠不足

ここで注意してほしいのは、睡眠不足≠睡眠負債ということです。

睡眠不足は1日~数日のもの。

睡眠負債は数週間の蓄積だと思ってください。

実は1日の睡眠不足では集中力・認知機能の低下は見られるものの、身体的なパフォーマンスの低下はあまり見られないことが知られています(Halson, 2014)。
一方、数週間の睡眠不足の蓄積、「睡眠負債」では身体的な能力の低下の可能性が示唆されており、実際に睡眠不足のアスリートに睡眠の延長を処方すると、以下の図のように徐々にスプリントタイムが短縮されていったデータも示されています(Cheri et al, 2011)。

※Cheri et al, 2011より引用

睡眠負債は短期的な調整では改善しませんが、睡眠不足による集中力の低下などは短期的に改善するので、もしも普段仕事や学業の関係で十分睡眠時間がとれていないアスリートは、ピーキングの手段の1つに「スケージュールの調整による睡眠時間の確保」というものが挙げられます。

 

グリコーゲンローディング

これは言わずもがなですよね。

体内にグリコーゲン(糖質)をしっかりと蓄えることで試合当日のパフォーマンスは向上します。

試合数日前からは炭水化物はしっかりとりましょう。

 

痛みのコントロール

痛みを抱えながらも、試合が近いために競技練習を行っているアスリートもいると思います。

練習量の調整による痛みの改善・悪化の予防というのもピーキングに含まれると考えられます。

練習量を減少させると、フィットネス(プラスの要素)の減少も、痛み(マイナスの要素)の減少も起こり得ます。

これはその足し算が大きくなるような調整をバランスをみて行うべきでしょう。

 

まとめ

ピーキングの手段としてはテーパリングというものは大きな役割を果たします。

一方、テーパリング以外にも

・スケージュール調整による睡眠時間の確保

・グリコーゲンローディング

・練習量の調整による痛みのコントロール

等がピーキングの方法として挙げられます。

これ以外にもモチベーションのピークを試合にもっていくのもある意味ピーキングの手段かもしれません。

やはりベストなコンディションの達成というのはコーチ、AT、S&C、栄養士等、チームスタッフ全体での協力が不可欠ですね。

 

参考文献

Shona L. Halson
Sleep in Elite Athletes and Nutritional Interventions to Enhance Sleep.
Sports Med (2014) 44 (Suppl 1):S13–S23

Cheri D. Mah, MS; Kenneth E. Mah, MD, MS; Eric J. Kezirian, MD, MPH; William C. Dement, MD, PhD1
The Effects of Sleep Extension on the Athletic Performance of Collegiate Basketball Players
SLEEP, Vol. 34, No. 7, 2011

 

 

 

【第38回】がんばることには意味はない

がんばることには意味はない

持論です。

「がんばることには意味はない」

学生にトレーニングの講習を行うことも多いのですが、トレーニングや栄養のことを話す前に、大前提としてこの話も必ずします。

「結果がすべてではない!」ってのはもちろん同意します。

でもスポーツ、特に競技スポーツの場合は、「勝利」「最高の結果を残すこと」が目的です。

自分自身を高めたり、チームメイトと協力して、目標に向かって努力をしていく過程で、勝利以外のものも得ることができます。

「がんばること」に選手が意味を求めるのは、ただの逃げです。

「がんばること」に指導者が意味を求めるのは、知識不足、指導力不足への言い訳です。(自戒の念も込めて。。)

僕は努力という言葉を次のように理解しています。辞書に載っているわけではなくあくまでも持論ですが。

 

努力

努力は結果につながります。

正しい知識を持って、効率的な方法を考えながら、一生懸命がんばれば、必ず結果がでます。

相手がいるスポーツの場合は、勝利という結果を得られないかもしれません。相手のほうが才能があって、なおかつ努力もしていれば。

一方、トレーニングによる身体能力の向上であったり、技術練習によるスキルの向上など、相手のいないものは努力で必ず結果が得られます。

「努力」は結果につながるけど、「がんばり」単品では結果につながらないことが多いです。

 

意味のないがんばりから引き起こされる学習性無力感

しかしながら、社会に出た時は「がんばること」(忍耐力)が必要な場面もあると思います。

でも、「がんばること」だけに重きを置き過ぎると、結局がんばらない人に育つんじゃないでしょうか。

例えば、試合で負けたときにメンタルを鍛えなおすために走り込み(がんばり)をしたとしても、それが結果(勝利、スキル、身体能力の向上)につながらなかったら、「あのがんばりに意味はあったのだろうか。。」ってなると思うんですよ。

がんばったのに求める結果が得られなかった

その子の頭のなかには無意識に「がんばること≠求める結果」というものが刷り込まれます。
結果、その子は将来何事に対してもがんばらなくなるかもしれません。

こういった現象を学習性無力感といいます。

がんばったら結果がついてくるなんて、ただの甘え

がんばってきたのに結果が得られなくて、くやしい思いをしてきた選手は多くいると思います。

「あんなにがんばってきたのに、なんで」って。

でも、がんばるだけでは結果なんて得られません。

例えば、守備が下手で試合に出られない野球少年が毎日素振りを300回やったとして、試合に出られるのか?活躍できるのか?

筋力不足で身体能力が不足している選手が、毎日10㎞の走り込みで足腰を鍛えて、筋力がつくのか?身体能力が上がるのか?

自分の弱点、課題と向き合わない、きちんと身体のことを学ばないで、ただがんばるだけで結果なんてついてくるわけありません。

考える=楽をする ではない

「しっかり頭を使ってやろう」と言うと、「いやそれよりまず全力でがんばれよ!」って返事が返ってくることもあるかと思います。もちろん、効率だけを求めて全力を出さなければ、最高の結果なんて得られません。

でも最高の努力というものは「最大のがんばりと」「最大の効率」によって達成されるものなので、最高の結果を求めようと思ったら、がんばりも、頭をフル回転させることも必要です。

先ほどの学習性無力感の話とは逆に、最高の努力をすれば、必ず最高の結果がついてきます

考えながらがんばったら求める結果が得られた

がんばることだけに価値をおいてがんばってきた人たちよりも、「がんばり=求める結果」ということが頭の中に刷り込まれ、がんばる人へと育つのではないでしょうか?

選手の心構え

選手自身、「やみくもにがんばるだけじゃ結果なんて得られるわけがない」と心に留めておくべきでしょう。

試合の勝ち負けは、そのときの運もありますが、がんばってても自分の成長が感じられない場合は、がんばりの方向が間違っている可能性もあります。

そのときは一度足を止めて、
まずは身体のこと・競技のことを学んで正しい知識を得てください。
そして、頭をフル回転させて効率の良い方法を考えてください。
1人では難しい場合は、適切な指導者、アドバイザーを探してください。

指導者の役割

指導者の役割は、競技スポーツの場合は、選手を試合で勝たせることです。

学校教育の側面からいうと、スポーツを通していろいろなことを学ぶこともあるかもしれません。

でも、結果から目をそらして、「がんばること」だけに目を向けると、結局がんばらない子供を育ててしまうこともあるんじゃないでしょうか。

やみくもながんばり>勝利
なんて考えは、勝利至上主義よりも不健全です。

結果を出すこと、人間育成、スポーツを好きになってもらうこと、これらの達成のためには、どれも指導者の正しい知識、考える習慣をつけるための問いかけ、がんばれる環境づくりが必要だと思います。

そして何より、指導者自身が努力を通して成長した経験を持っていることじゃないでしょうか。

まとめ

がんばること自体には意味はないです。

結果、勝利を求めて効率的に、最大限のがんばりを。

これはスポーツ以外にも共通して必要なことでしょう。

「勝利至上主義」とは違います。

勝利を目指して本気でやるから、勝利以外のものも得られるのでは。

がんばってもがんばっても結果がでない人は、今一度立ち止まってみてはいかがでしょうか?

執筆者:佐々部孝紀(ささべこうき)

 

 

 

 

【第37回】トータルコンディショニング

専門性【★★★】~【☆★★】

以前、「僕はメディカルってよりはコンディショニングをやりたいんですよね!」って学生トレーナーの子が言っているのを聞いて、「??」ってなったことがあります。

たぶん、その子が指してる「コンディショニング」は「ストレングス&コンディショニングコーチ(トレーニング指導者)」のことだと思います。

確かにトレーニングの量、強度のコントロールというのはコンディショニングの中で大きな役割を果たします。

ただ、「コンディショニング」に関連する要素は他にも多数存在するので、コンディショニングはS&Cだけの仕事ではありません。

 

そもそもコンディショニングとは?

「コンディショニング」とは、その文字の通り、「コンディション」を整えることです。

NSCAジャパンのHPでは、コンディショニングを以下のように定義しています。

「コンディショニング(Conditioning)とは、スポーツパフォーマンスを最大限に高めるために、筋力やパワーを向上させつつ、柔軟性、全身持久力など競技パフォーマンスに関連するすべての要素をトレーニングし、身体的な準備を整えること」

トレーニングの団体だけあって、たしかにこの文の前半だけ読むと「各体力要素を高めること=コンディショニング」と捉える人も出てくるかもしれません。

しかし、文末の「身体的な準備を整える」ことについては、トレーニング、各体力の向上以外にも多くの要素が絡んでくるので、様々な専門分野からの目線で考える必要があります。(関連記事:AT目線、S&C目線

 

トータルコンディショニング

前述した通り、「コンディショニング」というと、一般的にフィジカル的要素を整えることと捉える人もいるかもしれないので、ここではトレーニング等のフィジカル的要素以外も含めた総合的なコンディショニングのことを、トータルコンディショニングと呼ぶこととします。

トータルコンディショニングには、フィジカル的要素、メディカル的要素、メンタル的要素、栄養等が関わってきます。

前回のブログで述べた通り、コンディションは、プラスの要素マイナスの要素の影響を受けます。

そこで、それらの要素を以下の図のようにまとめてみました。

 

フィジカル的要素

まずフィジカル的な要素だけで考えても、プラスとマイナスの要素があります。

プラスの要素としては、各体力要素がどれくらいあるのか

マイナスの要素としては、どれくらい疲労が蓄積しているのか

この2つの足し算引き算で、フィジカル的なコンディションが決定します。

このことをフィットネスー疲労理論といいます。(こちらのブログで詳しく説明してあります)

このフィットネス(体力)と疲労のバランスは選手のコンディション(Preparedness)に大きな影響を与えるので、ストレングス&コンディショニングコーチはその名の通りコンディショニングに対しては大きな責任があります。

フィットネスと疲労はコンディションに対して大きな影響を及ぼすものの、以下に述べる各要素も絡んできてコンディションは決定するので、

フィットネスー疲労の調節を、狭義のコンディショニング
トータルコンディショニングを、広義のコンディショニング
とも呼べるでしょう

メンタル的要素

メンタルをコンディション(身体的な準備)に含めるかは微妙ですけど、試合当日のパフォーマンス(運動量等)には大きな影響を与えますよね。

また、集中力や気分に大きな影響を与える「睡眠」は、メンタル的な部分だけでなく、ホルモンバランスの乱れなどを通して身体的要素にも大きな影響を与えます。(過去記事

1日の睡眠不足だけでなく、数週間単位の睡眠不足の蓄積(=睡眠負債)がパフォーマンスに大きな影響を及ぼすので、試合前日の睡眠だけでなく普段からの睡眠時間がとても大切です。

栄養

多くのスポーツにおいて、グリコーゲン貯蔵量(体内の炭水化物、糖分の量)がパフォーマンスに大きな影響を及ぼすということはもはや常識ですよね。

それだけでなく、鉄分(ヘモグロビン)の不足は持久系パフォーマンスにとって非常にマイナスになりますし(Timo et  al, 2010)、運動中の脱水はパフォーマンスにネガティブな影響を及ぼします(FA Savoie et al, 2015)。

米をちゃんと食べるだけ、水分をちゃんと摂るだけでパフォーマンスが上がることは現場ではザラにあります。また意外と多いのが、1人暮らしの大学生アスリートの鉄分不足。

上記3つ以外にもパフォーマンスに影響を及ぼす栄養素はたくさんありますが、サプリメントに頼る前にこれらの栄養を含め、きちんとバランスよく3食(~5食)は食べましょう。

 

メディカル的要素

もうこれは言わずもがなだとは思いますが、怪我、病気をしてしまっては最高のコンディションにはもっていけません。

練習を離脱するほどの怪我をしていないとしても、身体の違和感・微妙な痛みを取り除くことでもコンディションは良くなります。

フィジカル的要素で上げた、「各関節のモビリティ・スタビリティの制限」の改善は、傷害由来のものの場合、メディカルスタッフ(理学療法士やAT等)の方が得意としている分野でもあると思うので、メディカル的要素に含めても良いかもしれません。

 

まとめ

トータルコンディションを高めるうえでは、チーム全体の協力が必要不可欠です。

S&Cが体力を高めつつ、トレーニング量は疲労を考慮して調整していく。

ドクター、ATは怪我や病気を最小限にとどめるようなアプローチをしていく。

栄養士の教育の元、選手自身が意識して食事を摂取する。

治療家がいれば、選手のケアをして疲労を取り除く。もちろん、選手自身のセルフケアや、十分な睡眠のうえで。

コーチは疲労を考慮して練習量を調整しつつ、選手の士気を高める働きかけを。

 

複数のスタッフ、選手の意思疎通ができて成り立つのがトータルコンディショニングです。

専門外への分野への口出し(治療家がトレーニングに、S&Cがリハビリに)は行き過ぎると良くないですが、他分野の知識の入口までは理解しておいたほうがいいのかもしれませんね。

 

 

H.Timo et al
Total Hemoglobin Mass, Iron Status, and Endurance Capacity in Elite Field Hockey Players.
Journal of Strength and Conditioning Research, 2010, 24(3):629-638

FA Savoie et al
Effect of Hypohydration on Muscle Endurance, Strength, Anaerobic Power and Capacity and Vertical Jumping Ability: A Meta-Analysis.
Sports Medicine, 2015

 

 

 

【第36回】トレーニングの知識、人材の地域格差

専門性【☆☆★】~【★★★】

明けましておめでとうございます。

正月のバスケ天皇杯も終わり、地元山口県下関市に帰ってきてます。

昨日、本日と母校・豊浦高校の生徒を対象にトレーニングについての講義、指導を行ってきました。

恩師の先生のお声がけもあり、多くの生徒(バスケ、バレー、レスリング、サッカー、陸上)が参加してくれました。

お世話になった母校への恩返しと同時に、正しい知識の普及、トレーナーという職業の認知につながればと思っています。

そもそも地方では、トレーナーという職業についての認知度がとても低いんです。

 

トレーナーの人数

前回記事でも述べたように、トレーナーという職業は様々な専門分野に分けることができます。

地方であっても鍼灸師、マッサージ師、柔道整復師の方は多くいます。治療院、接骨院はどこにでもありますからね。
スポーツ選手に限らず、様々な人に対して需要のある職業ですし。

一方、特に運動指導に特化した職業であるATやS&C(もしくはそれに類似するトレーニング指導者)に関連する資格を有した方は、地方ではグッと少なくなります。

印象だけで語ってもしょうがないので、ここらで驚きのデータを。

日本体育協会 公認スポーツ指導者 登録状況

このページにて平成28年度時点での各都道府県の日本体育協会公認アスレティックトレーナー(日体協AT)の人数が確認できます。

それによると

全国→3027人

東京都→589人(最多)
神奈川県→353人
愛知県→146人
大阪府→243人
福岡県→92人

山口県→10人
福島県→7人(最少)

東京の登録者数は山口の約60倍
こんなに差が。びっくりですよね。

ちなみに、僕みたいに東京で活動してるけど登録は山口県にしてる
って人もいるかもしれないので、実際、地方はもっと少ないかも。

ちなみにトレーニング関連の資格については、

NSCA-CSCS→全国で1500人超(こちら
NSCA-CPT→全国で3000人超(こちら
JATI-ATI→全国で2000人超(こちら

こんな感じです。都道府県別の比率がATとそんなに変わらないとしたら山口県には数人~十数人でしょうか。

確かに地元にいたころ、「あすれちっくとれーなー」とか「すとれんぐすあんどこんでぃしょにんぐこーち」なんて聞いたことないですもん。

 

需要と供給とポスト

需要

中学・高校時代は部活動がありますし、他の年齢に比べて「勝つためのスポーツ(競技スポーツ)」をしている人は多いのではないでしょうか。

実際、中高生の5~7割が運動部に所属しているというデータがあります(こちら)。

そして日体協ATの資格保持者の多くが、高校生にリハビリやトレーニングを指導しています。

こちらより

部活動では怪我はつきものですし、本気で勝とうと思うと医科学的サポートやトレーニングは必要ですもんね。

やっぱり高校のスポーツ現場ではATやS&Cは必要とされてるんです。需要はあるんです。

ここで山口県と東京都で15~19歳の人口を比較すると、

山口県の15~19歳の人口は6.3万人(こちら)。

東京都の15~19歳の人口は54.2万人(こちら)。

東京の15~19歳の人口は山口の約10倍

単純計算で、東京では山口の10倍の需要があると解釈して次にいきましょう。

供給

前述したように、東京都の日体協AT登録者数は山口の60倍です。

おそらく、トレーニング指導者(CSCS,CPT,JATI-ATI等)も断然都心部のほうが人数は多いでしょう。

東京都は山口県に比べて運動指導系のトレーナー(AT、S&C)の需要が約10倍で供給が約60倍。

言い換えれば山口等の地方では都心部に比べて供給が全然足りてないんです。

(東京で十分に足りているかどうかは別の話ですが)

ポスト

学校部活動においてもATやS&Cは必要なんです。

ただ、地方では供給(有資格者の人数)が少ないこともあり、運動指導系のトレーナーが都心部と比べてあまり認知されていません。

認知もされていないので、当然、職業として確立されづらいです。
(ATやS&Cを雇用しようという発想にならない)

運動部活動の指導で報酬をもらっていても、それだけだと生活は難しいでしょう。
平日は昼過ぎからしか仕事がないわけですから。
ATやS&Cのポストが少ないんです。

(都心部でのポストの例)
普段はプロチームで指導し、週1で高校生も指導
トレーナー派遣会社
専門学校講師をしながらトレーナー活動
パーソナルジムを運営しながら現場(部活動)でも指導

これからやんなきゃいけないこと

なので、まずは認知度を広げることが大事なんじゃないでしょうか。ATやS&C等の運動指導者の。

中学・高校の先生方はもちろん、中高生、保護者に知ってもらうこと。

それだけでなく、スポーツから離れた一般の方々に対しても、僕らAT、S&Cやからこそできることがあると感じています。

いやらしい意味でなく、トレーナーとしてお金を稼げる環境作り
言い換えれば、トレーナーとして生きていける環境づくりを
山口県出身のAT,S&Cとして、やってかんにゃいけんと思ってます。若造のたわ言にならんように。

ほんじゃ、ばあちゃんちでフグ鍋食べてきます。