【第70回】10回×3セットの誤解~筋肥大に必要な負荷は?回数は?

10回3セット!

ってなんか良く聞きますよね。

ウエイトトレーニングにおいても、筋肥大期はこの回数・セット数で行うのが良いと昔教科書で読んだ気がします。

10というきりの良い数字が好まれるっていうのもあるかもしれませんが、

「10回前後行える中程度の強度(換算値でいうと75%1RM)で比較的高回数行うことで筋肉がパンパンになり(パンプアップし)、ストレスがかかることによって筋肥大が起きる」といった理論によるものだと思います。

じゃあ、10回という回数を小分けにしたら(例えば、10回3セットではなく5回6セットにするなどしたら)筋肥大の効果は弱まるのでしょうか。。?

 

結論からいうと、そんなことはありません

実はこの問いに答えうる研究というのはけっこうされていて、多くの研究で「トレーニングの総負荷」が同じであれば筋肥大への効果に大きな差はないと報告されています。

高強度×少量でも、低強度×多量でも、回数を半分にしてセット数を倍にしても、総負荷が同じであれば筋肥大への効果に大きな差はありません。

パワーリフター型vsボディビルダー型

総負荷は「強度(重量)」×「回数」×「セット数」で表されることが多いのですが、例えばSchoenfeldら[3]はパワーリフター型(高強度、低回数、長いレスト)のトレーニングとボディビルダー型のトレーニング(中強度、高回数、短いレスト)のセット数を調節して総負荷をそろえたところ、筋肥大への効果に差がなかったことを報告しています。

ちなみにこの研究ではパワーリフター型のトレーニングのほうが有意に大きな筋力の向上も示しています。

こう聞くとパワーリフター型のトレーニングのほうが絶対いいじゃん!と思うかもしれませんが、実はトレーニングにかかった時間が
・パワーリフター型⇒70分
・ボディビルダー型⇒17分
と大きく異なり、筋肥大を目的とした場合はボディビルダー型のトレーニングのほうが圧倒的に効率的です。

セット内レスト

筋肥大を引き起こすために必要なのは
・筋への張力
・筋ダメージ
・代謝ストレス
だと言われています。[2]

以前の記事で、レストを長くしても、代謝ストレスが落ちる代わりに筋にかかる張力(発揮する力)が大きくなるので筋肥大への効果は変わらないことを紹介しました。

一方でOliverら[1]は、セット内レスト(Intra Set Rest)を加えることで筋肥大などにどのような効果があったのかを検討しています。

これ以前の研究ではIntra Set Restを加えることで、トレーニング全体の実施時間が長くなっていたのですが、Oliverらの場合は、セットを分割する代わりに、レストの長さも半分にしています。(さらにセット内レストの長さもセット間レストとそろえています)
言い換えると、単純に10回4セットのところをレストを半分にして5回8セットに分割しているということですね。

その結果、回数を分割しても筋肥大への効果に有意差はありませんでした

まとめ

筋肥大へのトレーニングの効果は、1セットあたりに何回行うかというよりは、「トレーニングの総負荷がどれくらいか」といったことに依存するようです。

そしてその総負荷を効率よくかせぐために10RMといった負荷、10回といった回数を使うこともあるでしょうし、行い方によっては1セットあたりの回数を抑えた方法でも効果的に筋肥大を起こすことも可能です。

どのような回数、セット、レストで行うのかは、トレーニングに使える時間にもよりますし、選手のトレーニングレベル、そのトレーニングレベルに適した負荷などによっても変わってきます。

今回の記事を5年前の僕が読むとびっくりすると思ういます。。教科書と言ってること違うじゃん!って。

ただ、トレーニング科学は発展途上の研究分野。どんどん新しい知見が出てきているので、それらの情報にもアンテナを張っておきたいですね!

執筆者:佐々部孝紀(ささべこうき)


今年も残すところあと5日となりましたね。

今年はいくつかセミナー講師をしたりと顔を出す場が増えたので、いろんな方と知り合えた1年でした。

今は年末の風物詩(?)高校バスケの全国大会、ウィンターカップの真っただ中ですね。

昨日は母校の豊浦高校が昨年のベスト4、帝京長岡と接戦の末に敗れてしまいました。。

選手の皆さんお疲れ様でした!


 

参考文献

  1. Oliver, JM, Jagim, AR, Sanchez, AC, Mardock, MA, Kelly, KA, Meredith, HJ, et al. Greater Gains in Strength and Power With Intraset Rest Intervals in Hypertrophic Training. J Strength Cond Res 27: 3116–3131, 2013.Available from: http://insights.ovid.com/crossref?an=00124278-201311000-00026
  2. Schoenfeld, BJ. The mechanisms of muscle hypertrophy and their application to resistance training. J Strength Cond Res 24: 2857–2872, 2010.
  3. Schoenfeld, BJ, Ratamess, NA, Peterson, MD, Contreras, B, Sonmez, GT, and Alvar, BA. Effects of Different Volume-Equated Resistance Training Loading Strategies on Muscular Adaptations in Well-Trained Men. J Strength Cond Res 28: 2909–2918, 2014.Available from: http://content.wkhealth.com/linkback/openurl?sid=WKPTLP:landingpage&an=00124278-201410000-00027

 

 

 

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