【第87回】《まとめ》ジャンプ力を向上させる方法—ピラミッド型モデルで自分に足りない部分を知る

「ジャンプ力を向上させたい!」

こう考えているアスリートは非常に多いのではないでしょうか?

バスケットボールやバレーボールなどの、明らかに競技中にジャンプ力があったほうが有利なスポーツはもちろん、サッカーやアメリカンフットボールなどの水平方向の動きがメインのスポーツであっても瞬発力向上の指標になりえるため、垂直跳びの数値を重要視している場合も多いかと思います。

実際にサッカーやアメリカンフットボールにおいて、プロや日本代表に選抜された選手はそうでない選手に比べて垂直跳びや立幅跳の数値が高かったとされる報告もなされています(津越ら,2010; Yamashita et al., 2017)。

SNSやHPの問い合わせを通して、「垂直跳びの数値を向上させたいんです」といった相談をされることも非常に多く、そのたびに「このトレーニングが一番垂直跳びを向上させる!といったトレーニングというのはなくてですね、個人の今の状態を~~」と毎回説明しているので、、もういっそ記事にしちゃおう!と思った次第です。

ジャンプ力の数値向上に必要なことは人によって違う?

チームにストレングス&コンディショニングプログラムを提供する場合は、おおよそ平均的な選手に照準を合わせてプログラムを処方するのですが、実はジャンプ力を向上させようと思ったら、最も効果的な方法は選手によって異なります。

極端な例でいうと、例えば競技の中でもジャンプ動作を繰り返し行っているバレーボール選手の場合、
もしその選手がスクワットなどの基礎的筋力トレーニングに取り組んでいなかったら、基礎筋力不足のためにジャンプ力が伸び悩んでいるかもしれませんよね。

逆に基礎的な筋力トレーニングには数年取り組んでおり基礎筋力が十分なアメフト選手、もしくはもっと極端な例でいうとパワーリフターの選手の場合、
もしその選手がジャンプ系のトレーニングに取り組んでいないのであれば、ジャンプ力を向上させるにはさらなる基礎筋力を向上させるよりも、ジャンプ系のトレーニングに取り組んだほうがジャンプ力は向上するでしょう。

実際、その選手に足りない要素を分析したうえでのトレーニングは、従来のトレーニングよりもジャンプ力を向上させたという報告もあります(Reyes et al., 2017)。

この考え方を視覚的に考えるための簡易的なモデルと、自身の状態のチェック方法をご紹介します。

ピラミッド型モデル

以下にジャンプ力を向上させるためのピラミッド型のモデルを紹介します。

少しごちゃごちゃした図になってしまいましたが。。

伝えたいことはすべてこの図にギュッとつまっています。

以下にピラミッドのベースの部分から説明していきます。

筋肉量

大きな力を発揮しようと思ったらそもそもの筋肉量が必要になってきます。

各競技のトップレベルの選手の体格については過去記事でも触れていますので、そちらを参考にしてください。

【第26回】競技特性から探るスポーツの適正体重

【第81回】サッカー特集①サッカー選手にとって最適な身体つきは?

おおよそサッカーだと最低でも身長ー110kg、バスケなら身長ー105kg程度は必要だと感じています。
※コリジョンスポーツ(アメフト、ラグビー)だとポジションによって大きく異なる

この基準を参考に、最低限の筋肉量(特に下半身)がないなと感じた選手は、まずはしっかりとウエイトトレーニング+栄養摂取+睡眠で身体を作りましょう!

基本的に1週間あたりのトレーニングボリュームが増えたほうが筋肥大の効果は大きいのですが、目安としては1部位につき1週間に10セット程度と示されています(Schoenfeld et al., 2017)。

それ以上行った場合の効果は選手のトレーニングレベルにもよると考えられますが、GVTのように10回10セット2種目=1週間200Repなんて高ボリュームで行うと、一般的には負荷が大きすぎて逆効果になるようです。
(詳しくはこちら

筋力

筋力もジャンプ力を高めるためには非常に重要な要素です。

筋力の指標としてよく用いられるのがバックスクワットの最大挙上重量(1RM)。

様々な下肢のトレーニングがありますが、やはりその中心となるのはスクワットでしょう。

スクワットのバリエーション、実施方法について深く言及すると大変な長さになってしまうので、、
1点だけ、まずは「しっかりと深くお尻を落としたスクワット」を習得し、強化していきましょう。

ウエイトトレーニングの良いところは、正しく行えば(ターゲットの筋にしっかりと大きな範囲で負荷をかけながら行えば)、筋力だけでなく、柔軟性・可動域も効率的に獲得できることです(Macmahon et al., 2014; Fatouros et al., 2006)。

実際にHartmannら(2012)らは、トレーニング初心者に対してクォータースクワット(浅いスクワット)とディープスクワット(深いスクワット)を行わせた場合、深いスクワットを行った群でのみジャンプ力の向上があったと報告しています。

これは可動域の獲得が、適切なジャンプの獲得に好影響を及ぼしたためでしょう。

浅めの高重量スクワットのメリットについても議論されることもありますが、まずはパラレルスクワットで体重の1.7~2.0倍程度は上げられるようになりましょう!

ちなみに女子選手についてですが、パワーリフティングの世界選手権の男女の記録などを見ると、男子の下肢筋力は女子の1.3~1.4倍くらい。
そのため女子の場合は体重の1.3~1.5倍くらいが目指すべき基準になりそうです。

筋力向上のためには比較的高い強度(1RMの85%~程度)でトレーニングを行いましょう。
ただし、重さを求めるあまりフォームがくずれては本末転倒です!

パワー(高負荷パワー)

ジャンプ力の測定は「パワー発揮」の指標として用いられることも多いです。

そのためジャンプトレーニング自体を「パワートレーニング」として位置づけて実施する場合も多いですよね。

一方でこの「パワー」の中でも、自体重のジャンプ以上に負荷をかけた状態のパワー発揮として代表的なものが、「クリーン」や「スナッチ」などのクイックリフト(オリンピックリフティング)です。

ジャンプ力向上のためには、自体重のジャンプトレーニングだけでなく、クイックリフトもトレーニングに加えたほうが効果的にジャンプ力を向上させたとする研究もいくつかあります(Arabatzi et al., 2010; Tricoli et al., 2005)。

実際大学時代、身の回りの学生アスリートたちの中でシンプルな垂直跳び(助走を用いないもの)の数値が一番高かったのは、バスケ部でもバレー部でもなく、ウエイトリフティング部の選手でした。。

これは僕の今までの経験になりますが、パワークリーン(もしくはハングパワークリーン)であれば、球技スポーツ選手の場合、バックスクワットの1RMの3分の2程度は上げられるようにはなります。

スクワットの数値が向上してきたら、次はここを1つの基準としてクイックリフトにも取り組んでいきましょう。

※ただ、クイックリフトは指導者がいない状態で行うことはあまりおススメしません。

ジャンプ力

実はジャンプ力の評価として代表的な垂直跳びは、その測定方法によって算出される数値がめちゃくちゃ違うのです。。(そのことについてはまた今度)

一方、もう1つの代表的なジャンプ力の指標として、「立幅跳び」が挙げられます。

これは機材もいらないですし、垂直跳びよりも測定方法ごとの違いは大きくありません。
※サーフェイス(地面)の状態やシューズは多少影響しますが。

球技スポーツ選手であれば、身長+80㎝程度はまず達成したいところ。女子選手の場合は60㎝程度でしょうか。

なぜ数値自体ではなく身長+の値かというと、立幅跳びの場合は脚が長いほうが離地までの間の移動距離や着地での脚のリーチにより、高身長の選手のほうが有利になるからです。

大学・プロレベルになると身長+110~120㎝という記録を出す選手も、、!

ジャンプ力自体を向上させるには、垂直跳びや立幅跳に加え、台から飛び降りてその反動でジャンプするDrop Jumpnなど、様々な種類のものを織り交ぜながら、50回~を週に2~3回を目安(Villarreal et al., 2009)にトレーニングを行いましょう!

まとめ

ピラミッド型のモデルから、自分に足りない要素はおおかた把握できたでしょうか?

※女子選手の場合は
立幅跳び60㎝が最低限達成したい基準
スクワットは体重の1.3~15倍程度が基準

おそらく、多くのアスリートは下段の「筋肉量」や「筋力」のベースがそもそも足りなかったのではないでしょうか?

一方で、中には筋力の基準はある程度満たしてるなという選手もいたかもしれません。

国内トップレベルや、海外のアスリートのトレーニング方法も簡単に知れる時代になりました。
その中にはある意味で奇抜な、見たこともないようなトレーニングもあるかもしれません。

ただ、彼らの多くは今までの「基礎的なトレーニング」を積んできて、その場所にいることを忘れてはいけません。

是非今回紹介した図を、「自分の現在地を知るためのツール」として活用してください!

執筆者:佐々部孝紀(ささべこうき)

 

 


最近は定期的に、トレーニング指導者仲間とスクワットやクリーンの測定を実施しています。

そのような短・中期的な目標があると、やっぱりトレーニングの質は変わりますよね。。笑

こういった心理の体験はやっぱりトレーニング指導にも活きるな~と感じます。

みなさんも、周りのトレーナー仲間を誘ってそのような機会を作ってみては?


参考文献

1. Fatouros, IG, Kambas, A, Katrabasas, I, Leontsini, D, Chatzinikolaou, A, Jamurtas, AZ, et al. Resistance training and detraining effects on flexibility performance in the elderly are intensity-dependent. J Strength Cond Res 20: 634–42, 2006.Available from: http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/16937978
2. González-Badillo, JJ, Gorostiaga, EM, Arellano, R, and Izquierdo, M. Moderate resistance training volume produces more favorable strength gains than high or low volumes during a short-term training cycle. J Strength Cond Res 19: 689–97, 2005.Available from: http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/16095427
3. Hartmann, H, Wirth, K, Klusemann, M, Dalic, J, Matuschek, C, and Schmidtbleicher, D. Influence of squatting depth on jumping performance. J strength Cond Res 26: 3243–3261, 2012.
4. Jiménez-Reyes, P, Samozino, P, Brughelli, M, and Morin, JB. Effectiveness of an individualized training based on force-velocity profiling during jumping. Front Physiol 7: 1–13, 2017.
5. McMahon, GE, Morse, CI, Burden, A, Winwood, K, and Onambélé, GL. Impact of range of motion during ecologically valid resistance training protocols on muscle size, subcutaneous fat, and strength. J strength Cond Res 28: 245–55, 2014.Available from: http://journals.lww.com/nsca-jscr/Fulltext/2014/01000/Impact_of_Range_of_Motion_During_Ecologically.32.aspx%5Cnhttp://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/23629583
6. Peterson, MD, Rhea, MR, and Alvar, BA. MAXIMIZING STRENGTH DEVELOPMENT IN ATHLETES: AMETA-ANALYSIS TO DETERMINE THE DOSE- RESPONSE RELATIONSHIP. J Strenght Cond Res 18: 377–382, 2004.
7. Rabatzi, FOA and Ellis, ELK. Vertical Jump Biomechanics After Plyometric, Weight Lifting, Andcombined (Weight Lifting + Plyometric)Training. J Strength Cond Res 24: 2440–2448, 2010.Available from: http://ovidsp.ovid.com/ovidweb.cgi?T=JS&CSC=Y&NEWS=N&PAGE=fulltext&D=&AN=00124278-201009000-00024&PDF=y
8. Rhea, MR, Alvar, BA, Burkett, LN, and Ball, SD. A meta-analysis to determine the dose response for strength development. Med Sci Sports Exerc 35: 456–464, 2003.
9. Schoenfeld, BJ, Ogborn, D, and Krieger, JW. Dose-response relationship between weekly resistance training volume and increases in muscle mass: A systematic review and meta-analysis. J Sports Sci 35: 1073–1082, 2017.
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11. Wernbom, M, Augustsson, J, and Thomeé, R. The influence of frequency, intensity, volume and mode of strength training on whole muscle cross-sectional area in humans. Sport Med 37: 225–264, 2007.
12. Yamashita, D, Asakura, M, Ito, Y, Yamada, S, and Yamada, Y. Physical characteristics and performance of Japanese top-level American football players. J Strength Cond Res 31: 2455–2461, 2017.Available from: http://content.wkhealth.com/linkback/openurl?sid=WKPTLP:landingpage&an=00124278-900000000-96192
13. 津越智雄浅井武. J リーグサッカークラブにおける上位カテゴリーへの 選手選抜に関する横断的研究 ― 体力 ・ 運動能力を対象として ―. 体育学研究 55: 565–576, 2010.

 

 

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