【第81回】サッカー特集①サッカー選手にとって最適な身体つきは?

先日のワールドカップ、ベルギー戦。

非常ーーに良い試合でしたね。

仕事の資料作成などでリアルタイムでは見られなかったのですが、試合映像は90分ばっちり見ました。

日本代表の選手の皆さん、本当にお疲れ様でした。

さて、大会自体は終わっていないので、まだまだサッカーを楽しめる期間ではあります。

その流れに便乗して、サッカー関連の記事を書いていこうと思います。

「体格」について

僕自信はトレーニング指導者としてサッカーに特化しているというわけではありません。
しかしバスケットボール、サッカー、アメフトと、ゴール型の球技スポーツのチームで働く機会が多く(たまたま)、それらの競技の特徴を客観的に見るのは得意です。

本日はそういった視点から、「サッカーという競技に適切な体格」について考えてみます。

まずは「体格」の意味を定義しないと始まらないのですが、ここではシンプルに「身長に対する体重」で考えてみようと思います。

有名な数値としてはBMIやローレル指数などが挙げられますが、計算もしやすく分かりやすい「身長ー体重の値」で考えてみようと思います。

例えば身長180cm体重75kgなら180-75=【105】
身長180cm体重90kgなら180-90=【90】となり、数値が小さければ小さいほど「ごつい」、数値が大きいほど「細い」となります。

(一般的なイメージ?でいえば、110だと細マッチョ、100でマッチョ、90以下だとゴリマッチョといったところでしょうか)

もちろん脂肪のせいで体重が重い場合と、筋肉がついてて体重が重い場合では違ってきますので、体脂肪率は10%代前半だと仮定します。

さて、それでは実際に各球技スポーツの体格がどんなもんなのかをみていきましょう。

各スポーツの体格

ごついほうが有利なこと、細い方が有利なこと

アメフト、バスケ、サッカーの3競技で身長、体重、身長ー体重を比較してみましょう。

アメフトはポジション特性でかなり体格が変わってくるので、サッカーやバスケットボールのように比較的スプリントスピードが求められるWR(ワイドレシーバー)というポジションのNFL選手の体格について調べました(Pryor et al, 2014)。

バスケットボールと言えばNBAですよね。
今年のNBAのチャンピオンチーム、GSW(ゴールデンステイト・ウォーリアーズ)のスタメンの身長、体重の平均をHPから。

サッカーについては各国にレベルの高いリーグがあるので、FIFAランク1位のドイツ代表を、、と思ったのですが予選敗退してしまったので2位のブラジル代表を。(朝日新聞Digitalより算出)

これにはそれぞれの競技の特性が表れています。
ごついほうが有利なこと、細いほうが有利なことは以下の図の通り。

フィジカルコンタクトの激しいアメリカンフットボールにおいては、もちろんごついほうが有利ですよね。一方でサッカーやバスケほどの有酸素能力は必要ではありません。

また、バスケはルール上DFからOFへの横からのコンタクトは禁じられているものの、実際はゴール下のフィジカルコンタクトはかなり激しいです。そのためサッカー選手よりも少しごつめの選手が多いのではないでしょうか。

一方、ゴール型の球技の中ではおそらく最も有酸素的能力が求められるであろうサッカーにおいては、やはりごつ「過ぎる」とその点では不利になるかもしれません。

以下の競技別の1試合走行距離を見ても分かる通り、サッカーは球技スポーツの中でも特に長い距離を走ることが求められます。また有酸素性トレーニングを行うことによる試合中のスプリント回数の増加も報告されていることからも、その重要性は分かるでしょう(Helgerud et al., 2001)。

このフィジカルコンタクトの重要性と、有酸素的能力の重要性のバランスから、選手のごつさは
アメフト>バスケ>サッカーとなっているのではないでしょうか。

ごつさ、細さだけでは議論できないこと

また、ごついか細いかでは議論できないのが、「瞬発力」「スピード」です。

これは体格というよりも「体重比の筋力・パワー」(体重に対してどの程度スクワットを上げられるかなど)に依存してきます。

もちろんスプリントトレーニングをしないとスピードは上がらないし、スクワットの重量を挙げられてもスプリントの技術がなければスピードは遅いままです。

しかしスクワットの挙上重量の向上が大きいほどスプリントスピードは速くなるという強いエビデンス(Seitz et al., 2014)もありますし、100m走などのスプリントに比べて、5mや10mのショートスプリントは、シンプルに筋力、 パワーの強い選手が速いことが多いです。

そのため、瞬発力やスピードについては、コンタクトフィットネスほどではないですが、「どちらかと言えばごついほうが有利」だと言えるでしょう。

日本サッカーと海外サッカーの体格差

ここで、サッカー日本代表と、強豪国の代表の比較について考えてみましょう。

まずは世界ランクBest3の国と日本の代表選手の身長、体重を一覧にしてみました。

スタメンは試合によって違うので、開幕前の予想スタメンを採用しています。(朝日新聞Digitalより)
出場時間があまりに少ない選手は同ポジションで試合に多く出場していた選手と変えてあります。

※7/22編集 予選落ちしたドイツの代わりにW杯優勝のフランスを加えました。

現状、日本代表は海外の選手に比べて体格は劣っているようです。
(体重も軽く、身長ー体重の値も劣っている)

しかしそのメリットとしては、有酸素的能力(マラソン的体力)は高くなりやすいということ。

しかしマラソン的な体力が高くなりやすいからと言って、試合の最後まで走れるかというと、そんな単純なことでもないんです。

球技スポーツの試合体力というのは、「有酸素的能力」「瞬発力」「コンタクトフィットネス」によって決まります。

(詳しくはこちら⇒第5回第26回

そのため細すぎるとコンタクトフィットネスが低くなり、細いことに伴って脚力が弱く瞬発力も低いと、いくら有酸素的能力があっても試合の最後まで走れません。

もちろん、アメフトのラインマンみたいな体格(身長190㎝、130kg)では、逆に有酸素的能力が低くなってしまい、試合の最後まで走れません。

ここ考えるにはポジション特性も重要で、DFやFWの選手はMFよりも走行距離は短いものの、ロングボールなどの身体接触が多くなるので、MFよりはごついほうが良いかもしれません。
実際に上記の図のベルギーの選手なんかはそうですよね。MFは身長ー体重がだいたい110前後と細め。FWのルカク選手に至ってはそのへんのバスケ選手よりも全然ごついです。

もちろん、ポジション特性だけでなく、そのチームで行おうとしている戦術、選手個人のプレースタイルによっても適切な体格は変わってくるでしょう。

まとめ

「コンタクトフィットネス」「有酸素的能力」のバランスから考えると、サッカー選手はバスケ選手、アメフト選手よりは少し細いほうが良いかもしれません。

しかし、ごつくなることによるメリットはサッカーにもあります。

よく勘違いされがちなのが、「ごついと瞬発力が落ちてしまう」という誤解。

たしかにごつすぎると有酸素的能力は低くなってしまいがちですが、短い距離のスプリントはある程度ごついほうが有利です。(もちろん、きちんと下半身の筋トレをしながら計画的に体重を増やした場合)

それに実際は体重を増やしながら有酸素的な能力を高めるといったことも可能です。

ベルギー戦はもちろん僕は日本を応援していたのですが、後半27分の、シャドリ選手が日本の選手につかまれながらも右サイドを無理やり突破するシーンを見た時は、シンプルに「すげー!!」って思いました。(シャドリ選手は身長187㎝、体重85kg)

やはりサッカーもコンタクトスポーツ。ああいった身体の強さが勝負を左右する面も大きいと思います。

まとめとして言えることは

・海外のトップレベルのサッカー選手の体格は、身長ー体重が100~105程度(日本は105~110)

・ごついとコンタクトが有利、細いと有酸素持久力的には有利、瞬発力はどちらかと言えばごついほうが有利

・試合の体力は⇑のバランスで決まる

・ポジション特性にも左右される(MFよりはFW、DFのほうがごついほうが良い?)

・チームとして行いたいサッカーのスタイルにも左右される

といったところです。

次回は体格だけでなく、サッカー選手の行うべきトレーニングについても触れていきます!

執筆者:佐々部孝紀(ささべこうき)


まだまだW杯は続きますね。

僕はミーハーなので、日本代表に勝ったベルギーを応援します。笑

それにしてもW杯直前の下馬評を覆しての日本代表の快進撃。本当に見事でしたね。

今度Jリーグの試合も身に行こうかな~


 

参考資料

朝日新聞Digital
https://www.asahi.com/worldcup/2018/team/belgium/

  1. Helgerud, JAN, Engen, LC, Wisløff, U, and Hoff, JAN. Aerobic endurance training improves soccer performance. 1925–1931, 1925.
  2. N.B.Abdelkrim, Castagna, C, Jabri, I, Battikh, T, Fazza, S El, and Ati, J El. ACTIVITY PROFILE AND PHYSIOLOGICAL REQUIREMENTS OF JUNIOR ELITE BASKETBALL PLAYERS IN RELATION TO AEROBIC–ANAEROBIC FITNESS. J Strenght Cond Res 24: 2330–2342, 2010.
  3. Rampinini, E, Coutts, AJ, Castagna, C, Sassi, R, and Impellizzeri, FM. Variation in top level soccer match performance. Int J Sports Med 28: 1018–1024, 2007.
  4. Seitz, LB, Reyes, A, Tran, TT, de Villarreal, ES, and Haff, GG. Increases in Lower-Body Strength Transfer Positively to Sprint Performance: A Systematic Review with Meta-Analysis. Sport. Med. 44: 1693–1702, 2014.
  5. Wellman, AD, Coad, SC, Flynn, PJ, Climstein, M, and McLellan, CP. Movement Demands and Perceived Wellness Associated With Preseason Training Camp in NCAA Division I College Football Players. J strength Cond Res 31: 2704–2718, 2017.

 

 

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