【第78回】下半身のトレーニングが上半身の筋力に影響を及ぼす?

ベンチプレスの重量を上げるには?

この問いに対する答えは、当たり前ですが「ベンチプレスをすること」でしょう。

栄養、休養をとることでトレーニングで使用した部位が肥大するし、筋力が向上します。

なのでベンチプレスをすることで、ベンチプレスで使っていた部位の筋力は向上します。

そしてそれプラスで胸が弱いなら胸、上腕三頭筋が弱いなら三頭筋に負荷のかかる種目、いわゆる補助種目を行う方法も一般的に知られています。

しかし、上半身の筋力を向上させるために下半身のトレーニング変数(強度、量、レスト)を操作するという戦略もあるのです。

下半身の加圧トレーニングが上肢の筋肥大を促す

筋肥大は以下の図に示してある通り、「機械的張力」「筋ダメージ」「代謝ストレス」によって促進されると考えられています「3」。

#26 Schoenfeld, 2010

いわゆる「加圧トレーニング」が筋にかかる「代謝ストレス」を増やすことで筋肥大を促進するという話は有名ですよね。

こちらは有名な研究ですが、Madarameら(2008)「2」は上半身の一般的なトレーニングに加えて下半身の加圧トレーニングを行うことで、上肢の筋肥大、筋力向上にどう影響するかについて調べています。つまり、ある部位の加圧トレーニングが他の部位(加圧トレーニングではなく普通のトレーニングを行った部位)にも影響を与えるかどうかを検討した研究です。

その結果、下半身の加圧トレーニングを行った場合は、そうでない場合にくらべて有意に大きな上半身の筋肥大、筋トルクの向上を示しました。

これは上記の図で示した「③代謝ストレス」はトレーニングを行った部位以外にも影響を与えることを示唆しています。

加圧トレーニング以外の方法

とは言え加圧トレーニングの処方は特別な知識が必要ですし、身の周りに加圧トレーニングを行える環境にないという人も多いでしょう。

しかし加圧トレーニングを用いなくてもトレーニング変数の操作で代謝ストレスの増加はできるんじゃない?といったことを検討した研究が今年発表されています「1」。

#30 Bartlomei et al. 2018

この研究では上肢の高強度(88~90%1RM)トレーニングに加え、下肢のトレーニングを中強度(65~70%)高量(10~12Rep)短レスト(1分)で行ったら、下肢のトレーニングを高強度で行ったときよりも代謝ストレスが増加して、上肢の筋肥大を促進するのではといった仮説のもとに行われています。

結果は図の通り、下肢の高ボリュームトレーニングは下肢の高強度トレーニングに比べて、ベンチプレスの1RMも上腕の筋断面積も有意に増大しています。

これは先述の加圧トレーニングの研究と同様に、代謝ストレスの増加が全身に作用した結果だと考えられます。(この研究ではホルモン濃度等の測定がしていなかったのが残念ですが。。)

まとめ

メイン種目(ベンチプレス)の挙上重量向上のために補助種目(胸や三頭筋をターゲットにした単関節種目)を行うという戦略も行われていますが、上半身の筋力向上、筋肥大のために下半身のトレーニング変数を操作するといった戦略も有効なようです。

逆に下半身の高強度トレーニングの効果を高めるために、上半身の高ボリュームトレーニングも有効かもしれません。
これはまだ実証されていないので今後の研究に期待です!

執筆者:佐々部孝紀(ささべこうき)


サポートしている各チームとも、試合のシーズンに入ってきました。

やっぱりトレーニング指導をしてて一番うれしい瞬間は選手の試合での活躍ですね。

皆がんばってきたぶんを出し切ってほしいです!


参考文献

  1. Bartolomei, S, Hoffman, JR, Stout, JR, and Merni, F. Effect of Lower-Body Resistance Training on Upper-Body Strength Adaptation in Trained Men. J Strength Cond Res 32: 13–18, 2018.Available from: http://insights.ovid.com/crossref?an=00124278-201801000-00003
  2. Madarame, H, Neya, M, Ochi, E, Nakazato, K, Sato, Y, and Ishii, N. Cross-transfer effects of resistance training with blood flow restriction. Med Sci Sports Exerc 40: 258–263, 2008.
  3. Schoenfeld, BJ. The mechanisms of muscle hypertrophy and their application to resistance training. J Strength Cond Res 24: 2857–2872, 2010.

 

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