【第76回】左右差を改善するべきか否か?

前回までの記事は、

・左右非対称性には
Bilatelaral Asymmetry(両脚同時に力発揮したときの左右非対称性)と
Unilateral Asymmetry(片脚ずつ力発揮したときの左右非対称性)がある

・両脚同時に力発揮をする競技ではBilatelaral Asymmetryを改善したほうが良いかもしれない

・片脚ずつ力発揮するスプリントにおいてはAsymmetryとパフォーマンスの間に相関が見られない

・Bilatelaral AsymmetryとUnilateral Asymmetryは必ずしも一致しない

といった内容でした。

BilateralとかUnilateralとか英語で示したり、測定方法の違いで分類したりと、なんだかややこしいですが、

単純に考えると

Bilateral Asymmetry≒使い方の左右差

Unilateral Asymmetry≒そもそもの筋力の左右差

とも考えられます。

以下はそのような表現で統一して、本日の内容に入っていきます。

そもそもの筋力の左右差があっても、うまく使いこなせば問題なし??

前回の記事で紹介した通り、ウサインボルト選手はスプリント動作中にストライドの長さの違い(=使い方の左右差)があるようですが、何度も世界一に輝いています。

よくメディアでも報じられているのを目にしますが、彼は生まれつき脊椎側彎症(先天的な背骨のねじれ)があるんだとか。

体幹部に前額面の非対称性が生じると、それに付随して脚の筋力の左右差にも影響があるとも考えられます。

つまり、ボルト選手のストライドの左右差(使い方の左右差)は、『そもそもの筋力の左右差』を適切に使った結果とも考えられます。

研究では?

では実際に研究ではどのように示されているのでしょう。

スプリント動作ではないのですが、ジャンプ動作のシミュレーション研究にて、その答えの1つが示されています。

Yoshiokaら(2011)[3]は左右対称な下肢の筋力を有した骨格モデルと、10%の下肢の筋力の左右差を有した骨格モデルを作成し、それぞれのモデルで適切な筋力発揮をしたときにジャンプ力に差があるのか?といったことを調べました。

その結果、両モデルにジャンプ力に有意な差は見られませんでした

ちなみに10%の筋力差を有したモデルでは、ジャンプ時の下肢の出力も強い側に隔たっていました。

つまり、『そもそもの筋力の左右差』があったとしても、それに合った『使い方の左右差』がきちんとはまればパフォーマンスの発揮は可能だということになります。

そもそもの筋力の左右差を改善したことでパフォーマンスが上がった例も

 

一方で、ランニング動作中に地面に対する推進力(水平地面反力)の左右差(『使い方の左右差』)がある選手について、『そもそもの筋力の左右差』を改善させるような下肢のトレーニングを重点的に行うことによって、『使い方の左右差』も改善し、走速度も向上が見られたとする事例研究も報告されています。[1]

つまりボルト選手のように『そもそもの筋力の左右差』に合わせた、適切な『使い方の左右差』を習得することでもパフォーマンス向上が可能だと考えられる一方で、『そもそもの筋力の左右差』を埋めていくことでパフォーマンスが向上する場合もあるということです。

ここから先は個別性の評価になってくるので、研究だけではどうこう言える領域では無くなってきそうです。。

怪我との関連は?

ここで気になるのが左右差と怪我との関連です。

シーズン前にスプリンターの膝屈曲/伸展筋力と股関節伸展筋力を測定し、シーズン中の肉離れの受傷について追った研究[2]では、

肉離れを受傷しなかった選手に有意な筋力の左右差が見られなかった一方で、肉離れを受傷した選手はシーズン前の膝の屈曲筋力、股関節屈曲筋力に有意な左右差があったことが認められました。

まとめ

そもそもの筋力の左右差がある場合は、それを適切に使いこなすことで高いパフォーマンスを発揮することは可能かもしれません。

一方で左右差を改善することによってパフォーマンスが向上する選手も中にはいるでしょうし、傷害の予防という観点からは、左右差はなくしたほうが良いでしょう。

競技特性や個人の既往歴など、比較的個別性の強い問題ですので、この記事が意思決定の1つの判断材料になればと思います!

 

執筆者:佐々部孝紀

 


更新がしばらく空いてしまいました。。

3月から新たなチームと契約し、活動させていただいております。

今までと違う競技、文化、考え方、いろんなことが新鮮です。

今のライフスタイルの一番のメリットは、「いろんな集団に属することができる」ことかもしれません。1つの集団にしか属してなかったら、考えが隔たるかもしれませんしね。

2018年度もがんばっていきます!


参考文献

  1. Brown, SR, Feldman, ER, Cross, MR, Helms, ER, Marrier, B, Samozino, P, et al. The potential for a targeted strength-Training program to decrease asymmetry and increase performance: A proof of concept in sprinting. Int J Sports Physiol Perform 12: 1392–1395, 2017.
  2. Sugiura, Y, Saito, T, Sakuraba, K, Sakuma, K, and Suzuki, E. Strength Deficits Identified With Concentric Action of the Hip Extensors and Eccentric Action of the Hamstrings Predispose to Hamstring Injury in Elite Sprinters. J Orthop Sport Phys Ther 38: 457–464, 2008.Available from: http://www.jospt.org/doi/10.2519/jospt.2008.2575
  3. Yoshioka, S, Nagano, A, Hay, DC, and Fukashiro, S. The effect of bilateral asymmetry of muscle strength on the height of a squat jump: A computer simulation study. J Sports Sci 29: 867–877, 2011.

 

 

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