【第6回】科学って何?―実はけっこう身近な科学―

専門性【☆★★】
科学という言葉、たぶん多くの人のイメージは、以下のような感じかもしれません。

最大酸素摂取量

ローイングエルゴメーターを用いた最大酸素摂取量の測定。

動作解析

全身に反射マーカーを付けた選手の動作解析。

難しそうなことやってますよね。
僕も大学院のときは2年間こんなことやってました。
なんでこんなことをやっていたかというと、研究、実験を用いて得られた科学的知見をスポーツ現場に活かすためです。

科学的知見とは?

科学的知見とは、簡単に言うとコントロールされた環境で得られた客観的なデータのことです。正確性(信頼性)・妥当性がある方法で収集されたデータであれば、特別難しい方法や機材を用いなくても科学的知見(データ)になります。

 

例えば

暑くてジメジメした環境でサッカーやバスケをやると、その暑さのせいで体温が上昇して

・試合後半足が動かない
・熱中症になっちゃう

ってことが起こりえます。

そこで、どのような方法が1番体温を下げるのにいいのだろう?

って疑問が浮かびますよね?

そのときにAさん,Bさん,Cさんが集まって、自分の経験をもとに

A「手足を水につけるのがたぶんいいよ」
B「いや、俺は体幹周りを冷やしたほうがいい気がするなー」
C「俺の経験では扇風機とか、風をうけるのが一番だったな」

って「人も」「環境も」「方法も」違う中で議論するより

同じような被験者を使って
同じ環境の中で(温度・湿度)
同じ温度まで体温を上げた後
同じ時間
違う方法で冷却
を複数の人にやらせて体温を見ると
どの方法が1番冷えるか分かるじゃないですか。

ってのが科学です。

もちろん、その測定の際に大掛かりな機材を使うこともありますが、発想はこんな感じです。

そして上記のことに近い実験をBarwoodさんら(2009)が行っているんですけど、
その結果1番体温を低下させることができたのが

「扇風機での送風冷却」

扇風機

だったそうです。

このような科学的知見は、学術論文の中に記載されています。

もちろん、この単一の研究なので、他にもっと効率的な方法が提唱されるかもしれませんが
僕はこの科学的知見を現場にて活用してます。

科学的知見の活用方法

この研究から、
扇風機を用いることで効率的に体温を下げられること
が分かりました。

真夏のバスケの試合中、出場時間が長く、体温が上がりすぎているであろう選手がベンチに戻ってきたときには

・氷で首筋を冷やす
・濡れタオルで身体を拭く
・大きなタオルであおぐ

等の選択肢がありますが、先ほどの研究から考えると、「大きなタオルであおぐ」のが一番ベターなのではと予想ができます。

もちろん
・Barwoodさんらの研究では扇風機を用いているが、大きなタオル程度の風で大丈夫なのか
・体温が下がりすぎるとウォームアップ効果が薄れて動かなくなるんじゃないか

 

等の問題も考えられますが、そこは選手の動きをみ見て判断すればいいんじゃないでしょうか。

要するに、科学的知見と経験の合わせ技が大事なんです。

もちろん、選手の体温をモニターできる機材の導入なんかができればより効果的かもしれませんよね。

上記のウォームアップ効果に関しては、「〇〇度以下になったら逆にパフォーマンスが低下する」なんて研究があればその情報も活用したいところです。

 

最後に

科学ってものが意外と身近なものなんだなってことが分かってもらえたと思います。

科学の世界では、日々いろんなことが明らかにされていて
「これ、効果あるって言われとったけど、実際そんなでもないやんけ!」
「これやっとる人多いけど、実は逆効果やんか!」
ってこともあったりするんです。

経験だけで物事を判断していたら、時間を無駄にしてしまうことがけっこうあるんです。

だから、トレーナーっていう職業には、科学的知見を応用する力が必要です。

 

また、アスリートにとっては論文を読むのはハードルが高いかもしれませんが、
科学的知見とは何なのか。
を理解し、
どのようなトレーニングを行えば、より効果が高いのか。
を常に考えることは必要だと思います。
(でも「そのトレーニングは科学的根拠あるんすか!」なんて直接トレーナーに言うのは良くないかも笑)

トレーニングの成果は「がんばること×考えること」で得られます。
でも、正しい知識がなければ、その「考える」が変な方向にいっちゃって、「がんばり」が無駄になってしまいます。

世の中からそんなアスリートが少しでも減るとうれしいので、これからも地道に情報発信をしていくつもりです。

 

学術論文の探し方
↑興味を持った方はこちらからどうぞ

 

参考文献:Barwood et al. Post-exercise cooling techniques in hot, humid conditions.Eur J Appl Physiol 2009

画像引用元:http://www.yomiuri.co.jp/adv/wol/research/tokku_131224.html
http://www.waseda.jp/student/shinsho/html/69/6931.html

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