【第39回】ピーキングの方法
昨日、本日とNSCAの国際カンファレンスに参加してきました。
貴重な公演が多数聞けたことはもちろん、普段お世話になっている方々に会えたこと、そしてネットやSNSを通しては面識のあったAthleteBodyのアンディさん・八百さんや、河森さんともお話が出来て超ハッピーでした!
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河森さんブログ
ピーキングとテーパリング
さて、本日はその河森さんの講演「ピーキングの捉え方とプログラムデザイン」を聴講した中で、非常にためになった考え方として
ピーキング≠テーパリング
というものがありました。
確かにトレーナー、S&Cの中でもピーキングとテーパリングは混合しがちな考えですが、以下のような意味合いの違いはあります。
ピーキング→狙った重要な試合に向けてコンディションを上げていき、そのピークを合わせること
テーパリング→徐々に練習・トレーニングの負荷を減らしていくこと
テーパリングをすることで、フィットネス(+の要因)を維持しつつ、疲労(-の要因)を減らしていくことで、その足し算、Preparedness(いわゆるコンディション?)を高めていきましょう。
つまり、ピーキングという「目的」の手段としてテーパリングという「方法」があるんだよ。というものでした。
※上記の内容はこちらの記事でも述べられています。講演ではもっと深い内容まで教えてくださいました!
この考えを参考にしたら、チームとしてピーキングをしていくときの、テーパリング以外の戦略も明確になってきます。
トータルコンディショニングから考えるピーキング
フィットネスのような短期間では変化しない要素は維持に徹する。
疲労のように変化しやすい要因は短期間で増減させることができる。
この考えを他領域(栄養、メディカル、メンタル、またはスキル・戦術も?)にも応用することで、トータルのコンディションを高めることができるはずです。
以前の記事で紹介した通り、コンディションはフィジカル的要素(フィットネスや疲労)以外にも、メディカル、栄養、メンタル的要素による影響を受けると考えられます。
適切なテーパリングは、この疲労を減少させることによって結果的にピーキング(コンディションの向上)が達成されます。
この図の中には疲労以外にも短期的な増減が可能な要素があるので、それらをコントロールすることもピーキングの手段として考えられます。
以下にその例を挙げます。
睡眠不足
ここで注意してほしいのは、睡眠不足≠睡眠負債ということです。
睡眠不足は1日~数日のもの。
睡眠負債は数週間の蓄積だと思ってください。
実は1日の睡眠不足では集中力・認知機能の低下は見られるものの、身体的なパフォーマンスの低下はあまり見られないことが知られています(Halson, 2014)。
一方、数週間の睡眠不足の蓄積、「睡眠負債」では身体的な能力の低下の可能性が示唆されており、実際に睡眠不足のアスリートに睡眠の延長を処方すると、以下の図のように徐々にスプリントタイムが短縮されていったデータも示されています(Cheri et al, 2011)。
※Cheri et al, 2011より引用
睡眠負債は短期的な調整では改善しませんが、睡眠不足による集中力の低下などは短期的に改善するので、もしも普段仕事や学業の関係で十分睡眠時間がとれていないアスリートは、ピーキングの手段の1つに「スケージュールの調整による睡眠時間の確保」というものが挙げられます。
グリコーゲンローディング
これは言わずもがなですよね。
体内にグリコーゲン(糖質)をしっかりと蓄えることで試合当日のパフォーマンスは向上します。
試合数日前からは炭水化物はしっかりとりましょう。
痛みのコントロール
痛みを抱えながらも、試合が近いために競技練習を行っているアスリートもいると思います。
練習量の調整による痛みの改善・悪化の予防というのもピーキングに含まれると考えられます。
練習量を減少させると、フィットネス(プラスの要素)の減少も、痛み(マイナスの要素)の減少も起こり得ます。
これはその足し算が大きくなるような調整をバランスをみて行うべきでしょう。
まとめ
ピーキングの手段としてはテーパリングというものは大きな役割を果たします。
一方、テーパリング以外にも
・スケージュール調整による睡眠時間の確保
・グリコーゲンローディング
・練習量の調整による痛みのコントロール
等がピーキングの方法として挙げられます。
これ以外にもモチベーションのピークを試合にもっていくのもある意味ピーキングの手段かもしれません。
やはりベストなコンディションの達成というのはコーチ、AT、S&C、栄養士等、チームスタッフ全体での協力が不可欠ですね。
参考文献
Shona L. Halson
Sleep in Elite Athletes and Nutritional Interventions to Enhance Sleep.
Sports Med (2014) 44 (Suppl 1):S13–S23
Cheri D. Mah, MS; Kenneth E. Mah, MD, MS; Eric J. Kezirian, MD, MPH; William C. Dement, MD, PhD1
The Effects of Sleep Extension on the Athletic Performance of Collegiate Basketball Players
SLEEP, Vol. 34, No. 7, 2011
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