【第178回】試合に向けたHIITのピラミッド
『ウエイトトレーニングの変数をシーズン通してどう変化させていくか』
この問いに対しては、最近ではある程度リテラシーの高いアスリートの場合、しっかりと答えられるようになってきている印象があります。
大枠で考えると、大事な試合に向けて徐々に『強度』を高め、『ボリューム』は減らしていくというのが原則になります。その流れに沿うと、自然と筋肥大期→最大筋力期、パワー期という積み上げになりますよね。
前提として総負荷=強度×ボリューム(量)という概念を理解している必要があるので、一度そこについて確認しておきましょう。
強度とボリュームの関係、一般的なウエイトトレーニングの変数の調整

『強度』という概念はウエイトトレーニングにおいては重量などの変数を指し、『ボリューム』という概念は1セットあたりの回数やセット数を指します。
重たい重さで沢山実施すると総負荷は高くなるよねということになります。
一方でこの『ボリューム』と、『実施可能な強度』は反比例の関係にもあります。
例えばベンチプレスの1RMが100㎏の選手の場合、90㎏で3回というのは実施可能な設定ですが、90㎏で10回というのは現実的には難しいでしょう。
強度を出すためにはボリュームを減らす必要があるということです。
ちなみに全力ジャンプのように、自体重だけど全力で出力をするような運動の場合も、地面に対して瞬間的に発揮する力は大きくなるので強度の高い運動として捉えられるでしょう。
さて、最初の話に戻って、ボリュームを減らして強度を増すというのがどういうことかというと、例えば1月からトレーニングを始めて5月頭に大事な試合がある場合
1月→メイン種目は8回4セットを中心にフォーム固め&筋肥大
2月→メイン種目の重量UPして6回4セット、筋肥大しつつ基礎筋力もやや増加
3月→さらに重量を増やして4回4セット、最大筋力を高めていく
4月→重量はそのまま余力を持たせて3回4セット、パワー系の種目の割合を増やし、5月の試合に向けてさらにトレーニングボリュームを減らす
のような形で強度↑ボリューム↓と変数を変化させていき、高める体力要素のターゲットも筋肉量→最大筋力→パワーという形でシフトしていくことが多いと思います。
HIITの変数の調整
さて、では一方で持久力を鍛えるためにはどうしたら良いでしょう。
よくHIIT vs LSDなどの持久走という形で比較が行われますが、そもそも球技スポーツのような非持久系の競技のトレーニング指導の現場ではLSDを全体で実施するのは時間的にも厳しいため、HIITを選択するケースが多いかと思います。
※LSD (Long Slow Distance)が必要ないというわけでなないです!必要に応じてチームのトレーニングの時間外に実施を指示するケースもあります。
一方でHIITを処方する場合、年間通して同じような変数設定で実施するというのは身体が慣れてしまい適応が停滞してしまう可能性があります。これはウエイトトレーニングも同様ですね。年間通して10回3セットを実施するのがナンセンスなのと同じです。(その理由を説明した記事はこちら)
そのため今回は、僕がよく処方するHIITのシーズン中の流れを紹介します。
まずは以下の図をご覧ください。

この図を見てもらうとなんとなく言わんとしていることが分かるかと思います。
ウエイトトレーニングを筋肥大→最大筋力UP→パワーUPといった流れで実施する理由の1つが、筋肥大系のトレーニングよりも最大筋力UPやパワー系のトレーニングのほうがボリュームが少なくて筋肉痛やエネルギーの枯渇といった疲労が蓄積しづらいからです。
またパワーの発揮には最大筋力が必要で、最大筋力の発揮にはある程度の筋肉量が必要なので、徐々に要素を積み上げていって競技に繋げるイメージも持ちやすいかと思います。
同様にHIITでも試合期に疲労を残さないことを考えると高ボリューム→低ボリュームと移行していく必要があり、上記のピラミッドのような流れが良いのではと考えています。
例えばウエイトトレーニングの例のように5月に大事な試合がある場合
1月→Long Intervalを実施。90秒運動↔90秒休息を5セット
2月→Short Intrevalを実施。30秒運動↔60秒休息を8セット
3月→SIT(Sprint Interval Training)を実施。30秒運動↔4分レストを4セット
4月→RST(Repeted Sprint Training)を実施。5秒運動↔20秒レストを15セット
といった感じです。
体力要素の積み上げとしては、最大酸素摂取量やMAP・MAS※の向上→間欠的持久力の向上という流れになるかと思います。
※MAP: Maximum Aerobic Power
MAS: Maximum Aerobic Speed
Wen et al.(2019)のHIITに関するメタアナリシスでも、特にアスリートの場合は運動時間が30秒以上のインターバルトレーニングでないと十分に最大酸素摂取量が向上しないことが示唆されています。
一方で運動時間が30秒前後、またはそれ以下になりやすいSITやRSTの優先順位が低いのかというと、そうではありません。
これは僕自身の経験則になってしまうのですが、土台の持久的能力※が低い選手は、より高強度の間欠的な運動を実施しても、レスト中に十分に回復が出来ず、こなしたい強度でトレーニングが積めません。
※土台の持久的能力=Max Rump Testで測定したMAPや20mシャトルランの実施可能回数・MAS
そのため、筋肥大→最大筋力UP→パワーUPの流れのように、MAPやMASの向上→間欠的持久力の向上といった流れが良いのでは、と整理して年間のトレーニング計画を組んでいます。
まとめ
ウエイトトレーニングもHIITも試合期に疲労を残さないためにも低強度×高ボリューム→高強度×低ボリュームと移行するべき?
その流れに従ってHIITはLong Interval → Short Interval → SIRやRSTという進め方が良いのでは?
といった内容でした!
もちろんSITで身体にかかるダメージはLong Intervalとは違ったものになるので、その導入タイミングや処方量を間違えると試合に疲労が残り過ぎてしまう可能性もあるため注意が必要です。
各HIITの変数設定(速度、距離、時間、レスト、セット数など)をどう設定するかまで触れるととんでもなく長くなってしまうのでこのへんで…
過去記事でもなんとなく触れられているのでよかったら参考にしてみてください!
【第118回】持久系トレーニングの分類~強度と乳酸の関係を理解する
【第172回】体力測定の結果は思った以上に活用出来るので、くそ程使っていきましょう!
【第175回】バスケ選手必見!おすすめ持久力トレーニング『セブンティーン』の簡単な個別タイム設定方法
執筆者:佐々部孝紀(ささべこうき)
久しぶりのブログの更新になりました…!
大学の授業の資料作成、確定申告から解放されたので、またちょこちょこ発信していきます。
また昨年の全6回の実技セミナーもめちゃくちゃ好評だったので、第2回も計画します!
参考文献
Wen, D., Utesch, T., Wu, J., Robertson, S., Liu, J., Hu, G., et al. (2019) Effects of different protocols of high intensity interval training for VO2max improvements in adults: A meta-analysis of randomised controlled trials. Journal of Science and Medicine in Sport 22, 941–947.

