【第153回】『科学では分からないこともある』⇐半分はもうほんまにその通りです。半分はウソです。

『科学では分からないこともある』

半分はもうほんまにその通りです。

下手したら半分以上かもしれません。

ただ、それはスポーツやトレーニングに科学的知見を活用しない理由にはなりません。

『科学では分からないこともある』から、科学はあてにせずに自分や先輩の経験だけをあてにしようとすることと

『科学では分からないこともある』から、その限界をしっかりと把握して、経験で得られた知見と融合してベストの物を提供する

とでは天と地ほどの差があります。

今回の記事では科学的手法で分析できることをカテゴリ分けし、『科学では分からないこともある』がなぜ半分本当で半分ウソなのかを端的に解説していきます。

1つの研究で分かることは基本的に1つの課題のみ

科学的知見を紹介する学術論文では、基本的に1つの研究で1つの課題しか明らかにされていません。(場合によっては2~3個の課題を明らかにしているものもありますが)

例えばスプリントに関する研究であっても

『足が速い人のピッチやストライドの特徴』

というのが1つの研究で明らかになったとしても

『効果的な腕ふりの方法』

『エネルギー供給に関わる代謝の能力がどれだけ必要か』

などは明らかに出来ていませんし、

何より『足が速い人のピッチやストライドの特徴』を達成するためのトレーニング方法までは明らかにされません。

その点で言えば、確かに1つの学術論文で得られる知見なんて、それ単体では長年現場で指導している人の感覚に比べれば大した情報は得られません。

しかしながら、1つの研究で得られる知見の幅の狭さは、複数の論文を読むことでカバーは出来るとも言えます。

『優れた特徴を持った選手の特徴が分かっても、その研究のような特徴を身に付けるための方法がその研究では分からない』と先述しましたが、大丈夫です。メジャーな分野であればだいたいその研究の発表後に『じゃあその特徴を獲得するためにはどうすればよいのか?』という研究がなされていますし、もしなされていなかったらチャンスです。あなたが大学院に進学してその研究を行いましょう!

研究なんかされていなくても現場で効果を実感している!

これもよく聞くセリフです。

長年指導している経験の中で効果を実感しているから。

その経験は非常に貴重なものなので、きちんと研究にして発表出来ればもっと世に広めることが出来ますよね。

一言に研究と言っても

・そのアプローチに本当に効果があるのか?

・その効果がどのようなメカニズムでもたらされているのか?

など幅が広いです。

後者が明らかになっていないけど前者は明らかになっているというものもたくさんあります。

何故なら前者のほうが単純な方法で明らかに出来るからです。

例えば『この最新のアプローチをすればだいたいこの怪我は良くなる』とか『このトレーニングを行うことでジャンプ力が上がるのは経験上分かっている』といったものがあるとしましょう。

本当にそれらに効果があるのかは以下のような方法で明らかに出来ます。

30人を集めて
・10人には何もアプローチをしない
・10人には一般的に広く行われているアプローチを行う
・10人にはその独自のアプローチを行う
そのアプローチ以外の要因は揃えて、結果を介入後に比較する。

※必要な被験者数は想定される効果の大きさ等で変わってきます。

このように現場で実感している効果が勘違いなのか、本当に効果があるのかは、おおよそ科学的手法で明らかに出来ます

詳しいことはこのへんの本を読めばおおかた理解できるかと⇓

効果があるように思えたアプローチも、実際に比較してみると実はそんなに効果的ではなかったということも大いにありえます。

人には『自分のアプローチには効果があって欲しい・効果があったはずだ』という願望があるので、フェアな判断がしづらくなっています。(これはもちろん僕も)

研究として発表するまではいかなくてもまずはデータを客観的に整理してみるのも良いのでは。

万人に当てはまるアプローチなんて無いでしょ

はい。これは反論できません。

その通り過ぎてぐうの音も出ませぬ。

研究で効果があったとされるアプローチでも、8割の人には改善が見られて2割の人は変化なしor悪化なんて報告もざらにあります。

例えば研究で効果があるとされてアプローチでも、その被験者が運動習慣のない老人だったら、アスリートへの適応が出来るかは不明ですよね。

その対策としては出来る限り被験者特性の近い研究を参考にする等が考えられますが、10人中10人に効果があるかというと、そうでない場合も多いです。

基本的には選手1人1人と向き合い、必要なことは何なのか?を分析する視点は必ず必要です。

しかし複数の科学的知見を仕入れていると、あのアプローチはどうかな?このアプローチはどうかな?とアプローチの手札は増えます

経験によっても手札は増えていきますが、科学的知見とはいわば『他人の経験を正確に数値化したもの』

 

自分の経験だけでなく、他人の経験もインプットしたほうが効率的じゃありません?

まとめ

●1つの研究で分かることは基本的に1つの課題のみ
⇒1つの研究を読んで指導なんて無理。もちろん経験を伴わずに研究読んだだけで指導もしんどい。経験を積みつつ複数の研究内容をインプット!

●研究なんかされていなくても現場で効果を実感している!
⇒その効果が願望によるまやかしなのか、本当に効果があるのかを研究で明らかに出来ます。

●万人に当てはまるアプローチなんて無いでしょ
⇒その通り。ただ個別アプローチの手数を増やすためにも、他人の経験(学術論文)のアップロードをしてたほうが効率的では?

1つ勘違いして欲しくないのは、研究(科学的知見)>経験なんてことは1mmも思っていません。

選手に対するアウトプットの数が少ない人が良質な指導を出来ることなんてまず無いですからね。

上記2つを両輪として、質の高い経験を積んでいくことが指導者としてのレベルアップの近道になるのではないでしょうか。

執筆者:佐々部孝紀(ささべこうき)


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