【第148回】最近キテる新たな測定”Isometric Mid-Thigh Pull”とその代替手法

2020年の春、多くのチームはコロナの影響で活動を自粛し、ジムも閉鎖。

高回数の自重のトレーニングで筋肉をパンプさせることは出来ても、最大筋力に近い力を発揮するのってなかなか難しい時期でしたよね。

そのころから僕が注目していた種目が

『Isometric Mid-Thigh Pull(アイソメトリックミッドサイプル)』

です。

文字通り
・Isometric  ⇒等尺性の収縮で
・Mid-Thigh⇒太ももの真ん中(のバーを)
・Pull           ⇒引っ張る
という運動です。

バー以外でも足元で踏んだ強めのバンドやタオルを引っ張ることで、最大筋力を発揮出来るというのがこの種目の特徴です。

こんな感じで、家トレでも使用していました。

そんなIsometric Mid-Thigh Pullはここ10年、研究の世界でも頻繁に用いられるようになってきています。

Google Scholarで『Isometric Mid-Thigh Pull』で検索したところ、
1950~2010年の研究が527件
2011~2021年の研究が1760件と
ここ10年で発表されている研究数も急増しています。
(2021年9月現在)

※過去のブログにおいてもIsometric Mid Thigh Pull(以下:IMTP)を活用している研究を紹介しています!⇒【第34回】スクワットの深さ②Quarter SQを使うシチュエーション?

そしてこれらの研究においてIMTPはトレーニングの手段としてよりは、測定の手段として用いられているケースが多いです。

IMTPで測定出来る項目は?

IMTPの測定と聞いてもパッとイメージは出来ないかもしれませんが、Googleで画像検索をかけるとこんな感じで測定の様子が出てきます⇓(2021年9月現在)

測定としてのIMTPは、プラットフォームの上に立ち、固定されたバーを全力でひっぱることで足元に発生する反力を測定します。

この写真を見ても分かる通り、ここ10年で広まってきた研究なので『フォームの統一性がまだとれていない』という問題点もあるのですが、大体の研究では『クリーンのセカンドプルの姿勢』で引くように指示が出されています。

数年以内にはガイドラインもまとまってフォームの統制もとれてくると思うので今後の動向を待ちましょう。

そしてその際測定可能な数値の代表的なものとして

・Peak Force
・RFD

が挙げられます。

Peak Force

Peak Forceは文字通り発揮した最大の力です。

「そんなんスクワットとかデッドでも測れるやん?」

と思うかもしれませんが、IMTPの測定の良いところはその簡便さ。

スクワットやデッドリフトの1RM測定、もしくは3RMなどの測定のデメリットは『潰れるまで実施しなければならない』ということ。

IMTPであれば全力で5秒程度プルをすると、それだけで最大の力が分かります。

また、スクワットやデッドリフトと比べてフォームの習得が安易であること、特に軽度屈曲位で測定するので股関節が硬くボトムの姿勢を取れない選手には便利です。

(とはいえそもそも適切なスクワット姿勢を深く取れないこと自体が大問題なので、そういった選手はそちらの習得が最優先ですが。。)

またIMTPのPeak Forceはスクワットとの高い相関が報告されている(Wang et al., 2016)一方で、スクワットの介入よりもヒップスラストの介入のほうがIMPTのPeak Forceを高めたとの報告もあります(Contreras et al., 2017)。

ヒップスラストのほうがスクワットよりもより股関節が伸展位に近い肢位で大きなトルクを発揮するので、IMTPのPeak Forceを高めるには軽度屈曲位での負荷のほうが効率が良いという可能性を示しているのではないでしょうか。

スクワットとIMTPのPeak Forceは似て非なるものなので、並行して測定する意義もありそうですね。

RFD

次にRFDですが、これはRate of Force Developmentの略で、力の立ち上がり率のことです。

図の通り、既定の時間までに発揮出来た力をその時間で割ることで算出出来ます。

※図では250msだが、100msや200msなど、様々な時間設定で算出可能

見たかを変えると、図のRFDがさしている点線の傾き=RFDということですね。

この能力は『短い時間でいかに大きな力を発揮できたか』を示す数値で、アスリートにとってはものすんごい大事なものになります。

これがパッと測定出来るのもIMTPの強みですね。

RFDについてはまた次回深堀りします!

IMTPの代替手法

Peak ForceもRFDも簡便に測定できるといっても、、

そう、プラットフォームなんて大学などの研究機関じゃない限り、普通のスポーツ現場にはありません。あしからず。

しかしながら30歳代以上の方なら1回くらいは触ったことあるであろう『あれ』でPeak Forceは測定可能のようです。

そう、背筋力計です。

頭の良い研究者がいたもんで、「フォースプレートなんて手に入らん現場もあるんやけん、背筋力計の取っ手をラットプルダウンのグリップに付け替えて測定すればええんやない?」という考えを基に、一般的なIMTPと背筋力計を用いたIMTPの比較が行われています(Till et al., 2018)。

 

この研究では日本の竹井機器工業の背筋力計(日本の皆さんがよく見るやつ)を用いて、IMTPのフォームで引っ張った力と、フォースプレートでのIMTPのPeak Force(絶対値&体重を引いた値)を比較しています。

一般的な背筋力の測定においては膝は伸展位、股関節を屈曲位で測定しますが、この研究においてはIMTPの測定なので膝も股関節も軽度屈曲位で実施されています。

また、背筋力計は㎏でフォースプレートはN(ニュートン)で測定結果が表示されるので、1㎏=9.81Nとして比較しています。

その結果、2つの数値の相関係数(r)は0.90と、非常に高い相関を示しました。

もちろん完璧な一致というわけではありませんが、現場レベルの代替手法としては十分でしょう。

しかしながらRFDは算出出来ないので、どうしてもRFDの測定がしたい!という場合はフォースプレートを手に入れるしかなさそうですね。

まとめ

IMTPの測定と、その代替手法についてまとめました。

トレーニング内での取り扱い重量を記録することでもある程度成長は可視化することは出来ますが、より細かなアプローチをするには今回紹介したIMTPの測定やF-V Profileの測定が有効な場面もあるかもしれません。

また冒頭で紹介した通り、フォースプレートがなくとも重りが無い時の高強度トレーニングの一環として活用するのもありでしょう。

次回は(やる気が出れば)RFDについて深堀りした記事を書こうと思います!


参考文献

  1. Contreras, B, Vigotsky, AD, Schoenfeld, BJ, Beardsley, C, McMaster, DT, Reyneke, JHT, et al. Effects of a Six-Week Hip Thrust vs. Front Squat Resistance Training Program on Performance in Adolescent Males. 2017.Available from: http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/27253835%5Cnhttp://Insights.ovid.com/crossref?an=00124278-201704000-00016
  2. Till, K, Morris, R, Stokes, K, Trewartha, G, Twist, C, Dobbin, N, et al. Validity of an isometric midthigh pull dynamometer in male youth athletes. J Strength Cond Res 32: 90–493, 2018.
  3. Wang, R, Hoffman, JR, Tanigawa, S, Miramonti, AA, La Monica, MB, Beyer, KS, et al. Isometric Mid-Thigh Pull Correlates with Strength, Sprint, and Agility Performance in Collegiate Rugby Union Players. J Strength Cond Res 30: 3051–3056, 2016.

 

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