【第137回】正しい言葉を使えないとトレーニングでも損をする!各種目の収縮特性を理解する

「言葉の意味をきちんと把握することは、目的・行動の明確化に繋がり、成果に繋がる」

と普段から考えています。

逆に、モヤっとした言葉しか使えない人は、モヤっとした目的のもと、モヤっとした行動になってしまいます。

僕はこれを『負のモヤっとスパイラル』と呼んでいます。(今日初めて使った)

これはトレーニングにおいてもそうだし、他のこと(仕事、勉強)においてもそうでしょう。

本日はトレーニングに役立つ身体の物理学、バイオメカニクスにおける言葉の定義について学んでいきましょう。

トレーニング種目の選択のヒントになるはずです。

エキセントリック、コンセントリック、伸長位、短縮位

「RDL(ルーマニアンデッドリフト)はエキセントリック収縮の種目ですか?」

この問いへの回答は『No』です。

「RDLは伸長位でより負荷がかかる種目ですか?」

この問いに対する答えはYesでしょう。

今回の記事のゴールは

・エキセントリック収縮

・コンセントリック収縮

・伸長位

・短縮位

この4つの言葉の意味の違いを明確にすることです。

エキセントリックorコンセントリックはその時にどのように筋が動いているか

伸長位or短縮位はその時に筋がどの長さにあるか

を表しています。

ハムストリングにおける代表的なトレーニング『ノルディックハムストリング』と『RDL』で解説すると以下のようになります。

モモ裏の筋肉であるハムストリングは、膝が屈曲すると短縮し、股関節が屈曲すると伸長します。

通常の立位姿勢、股関節、膝関節ともに屈曲0度のときをニュートラルとしたら、各種目中のハムストリングへの負荷は以下のようになります。

ノルディックハムの負荷の特性

ノルディックハムは筋が短縮した状態からスタートし、ニュートラルの状態までエキセントリック収縮。

その後戻るときは手で地面を押して戻るので、基本的にはコンセントリックの局面は含まれません。

つまり、『短縮位でのエキセントリックの運動』ということになります。

エキセントリック局面のみを取り扱うエクササイズは筋束長を増大し(4)、それが肉離れの予防に繋がると考えられています(1)。

RDLの負荷の特性

一方RDLはそこからさらに筋を伸長していくエクササイズで、降ろす局面(エキセントリック)も上げる局面(コンセントリック)も含み、主に伸長位で負荷がかかります。

筋に伸長位で負荷がかけられる=ストレッチをしながら力を発揮するので、より柔軟性が獲得出来ると考えられます。

また、より広いROMでトレーニングを行うと筋束長が増大することも明らかになっているので(3)、RDLもしっかりと深く降ろすように行えばノルディックハムと同じく肉離れの予防には貢献すると考えられます。

エクササイズの使い分け

伸長位の負荷、エキセントリックの負荷、使い訳があいまいになることもあり、そのトレーニングの適応も似ていることがありますが、使い分けることが大切です。

そもそもハムストリングのような複数の筋肉からなる筋群においては、短縮位のトレーニングと伸長位のトレーニングで、発達する筋肉が少し違ってきます(2)。

また、ノルディックハムストリングの介入研究において、介入中にノルディックハムのせいで怪我をしたという報告はほぼなされていません。

これはノルディックハムが短縮位の種目で、筋がオーバーストレッチされづらいというのも一因でしょう。

※逆にこれは佐々部の経験談になりますが、真冬のトレーニング指導中に選手がRDLをしていて、お手本を示すためにノーアップで高重量のRDL(130㎏くらい?)をしたらハムを痛めたこともあります。。指導者も指導前にアップをしときましょう。。

このように、言葉の定義をきちんと把握したうえで深堀していくと、よりトレーニングへの理解も深まります。

負のモヤっとスパイラルにはまらないよう、指導者の方も選手も、正しい言葉の定義を学んでいきましょう!

執筆者:佐々部孝紀(ささべこうき)


最近はなぜか雑誌や学会誌のインタビューを受ける機会が多かったです。(先月~今月で4本ほど)

これはZoomだとお互いの都合が合いやすいというメリットもあってのことかもしれません。

新規の指導を希望するチームの方ともオンラインで気軽に打ち合わせが出来ますし、コロナ禍でもたらされたメリットも多少はあるのかもしれませんね!


参考文献

  1. Al Attar, WSA, Soomro, N, Sinclair, PJ, Pappas, E, and Sanders, RH. Effect of Injury Prevention Programs that Include the Nordic Hamstring Exercise on Hamstring Injury Rates in Soccer Players: A Systematic Review and Meta-Analysis. Sport Med 47: 907–916, 2017.
  2. Bourne, MN, Williams, MD, Opar, DA, Al Najjar, A, Kerr, GK, and Shield, AJ. Impact of exercise selection on hamstring muscle activation. Br J Sports Med 51: 1021–1028, 2017.
  3. McMahon, GE, Morse, CI, Burden, A, Winwood, K, and Onambélé, GL. Impact of range of motion during ecologically valid resistance training protocols on muscle size, subcutaneous fat, and strength. J strength Cond Res 28: 245–55, 2014.Available from: http://journals.lww.com/nsca-jscr/Fulltext/2014/01000/Impact_of_Range_of_Motion_During_Ecologically.32.aspx%5Cnhttp://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/23629583
  4. Timmins, RG, Ruddy, JD, Presland, J, Maniar, N, Shield, AJ, Williams, MD, et al. Architectural Changes of the Biceps Femoris Long Head after Concentric or Eccentric Training. Med Sci Sports Exerc 48: 499–508, 2016.

 

 

Follow me!

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。