【第108回】腱炎に対する特効薬はトレーニング?スクワットでジャンパー膝、カーフレイズでアキレス腱炎を治す

膝蓋腱炎、アキレス腱炎

これらの慢性障害の悪化によって練習や試合を離脱してしまうケースもあれば、痛みを抱えながらプレーをしているケースも多いのではないでしょうか。

大学男子バスケ選手の約1/3が膝蓋腱に痛みを抱えていたというケースも報告されています(Hutchison et al., 2019)。

今回は、これら『腱炎』の治療に関する現時点での科学的な見解をお伝えします。

腱炎に対する治療~エキセントリックトレーニング

現在から20年ほど前、Alfredsonら(1998)は、安静、抗炎症薬、理学療法などを施しても症状が軽快しないアキレス腱炎の患者を集めて、
・手術を行う群
・エキセントリックトレーニングを実施する群
に分けてその後の状態を追いました。

エキセントリックとは筋が出力しながら引き延ばされるような出力様式で、この研究ではカーフレイズの下降局面のみをアキレス腱炎を患っている側に実施し、バッグを背負ったりマシンを使用して徐々に負荷を高めていきました。

またこの研究では、エクササイズ中に多少の痛みがあっても実施しています。

その結果3か月後には両群とも痛みの減少を示し、特にエキセントリックトレーニング群で有意に大きな痛みの減少が見られました。

Allison&Purdam(2009)のレビューではエキセントリックトレーニングの治療効果のメカニズムとして

・腱の配列の改善(炎症が起きて不均等になった組織がエキセントリックトレーニングによって改善される)

・筋から腱への力の伝達効率向上

などが挙げられています。

またこのレビューの中ではエキセントリックトレーニングとコンセントリックトレーニングの治療効果を比較した研究も紹介しており、やはりエキセントリックトレーニングのほうが治療効果が高かったことが結論づけられています。

これはエキセントリック収縮のほうがコンセントリック収縮よりも長い時間一定の大きな力をかけ続けられるといった違いからでしょう。

エキセントリックトレーニングに対する代替手法~高負荷低速度レジスタンストレーニング

一方で、コンセントリック収縮を含むエクササイズ様式でも、高負荷を用いた状態で、下降~切り返し~挙上をゆっくりやればエキセントリックトレーニングに近い刺激を腱に与えられるんじゃないの?といった疑問のもと、Kongsgaardら(2009)は膝蓋腱炎(ジャンパー膝)の患者を対象に
・15RM~6RMと期分けされた高負荷のスクワットを含むトレーニングプログラムを
・下降3秒、挙上3秒という低速度で
12週間実施しました。

この研究でも、Alfredsonら(1998)の研究と同じく、痛みの増加がなければエクササイズ中の痛みは許容しました。

その結果、膝蓋腱の病的な肥厚の低下も確認され、痛みも減少し、半年後の追跡においても継続的な改善がみられました。

このような研究から考えても、腱炎のリハビリはアスレティックトレーナーとトレーニング指導者が協力が不可欠ですよね!

まとめ

アキレス腱炎、膝蓋腱炎の治療においては、エキセントリックトレーニングや適切にプログラムされた高負荷低速度レジスタンストレーニングのような、『腱に適切な負荷がかかるようなエクササイズ』が有効なようです。

一方で、アキレス腱炎と思ったら実は距骨下関節後方の骨性の痛みだった、膝蓋腱炎だと思ったら膝蓋大腿関節の痛みだった、といった勘違いも、医療従事者がいない現場ではけっこう起こり得ます。

その状態で痛みを我慢して無理をすると、逆に悪化する可能性もありますよね?

当たり前のことですが、怪我をしてしまったらまず整形外科で正確な診断を受けること。

その後のリハビリの1つの選択肢として、今回の内容も活かしていただければ!

執筆者:佐々部孝紀(ささべこうき)


腱炎をはじめとする怪我で悩んでいる選手からSNSやHPのお問合せ経由で良く連絡をいただきます。

中には直接指導を受けに来られる方もいるのですが、遠方でなかなか、、という方も多くいらっしゃいます。

いつも「安易に個別のアドバイスはできないな~」と思いつつ、当たり障りのない回答にとどまってしまっていたので、今回の記事を作成することに。

特にリハビリ・医療系の記事に関しては、解釈を間違えてしまうと現在の問題を悪化させることにもつながります。(もちろん、トレーニング系の記事に関してもそうですが)

【この記事をもとに実施したことによる不利益は当方は責任を負いません⚠】

という一言は書かせていただきつつも、この記事が怪我に苦しんでいる選手の助けになればなとも思っています。


参考文献

  1. Alfredson, H, Pietila, T, Jonsson, P, and Lorentzon, R. The American Journal of Sports Medicine Heavy-Load Eccentric Calf Muscle Training For the Treatment of Chronic Achilles. Am J Sport Med 26: 360–366, 1998.Available from: http://ajs.sagepub.com/content/26/3/360.short
  2. Allison, GT and Purdam, C. Eccentric loading for Achilles tendinopathy – Strengthening or stretching? Br J Sports Med 43: 276–279, 2009.
  3. Hutchison, MK, Houck, J, Cuddeford, T, Dorociak, R, and Brumitt, J. Prevalence of Patellar Tendinopathy and Patellar Tendon Abnormality in Male Collegiate Basketball Players: A Cross-Sectional Study. J Athl Train 54: 953–958, 2019.
  4. Kongsgaard, M, Kovanen, V, Aagaard, P, Doessing, S, Hansen, P, Laursen, AH, et al. Corticosteroid injections , eccentric decline squat training and heavy slow resistance training in patellar tendinopathy. Scand J Med Sci Sport 19: 790–802, 2009.

 

 

 

 

Follow me!

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。