【第104回】睡眠の質を高めるための栄養的アプローチ

あることをするだけで
怪我が減り
風邪を引く確率が低下し
集中力・記憶力が増加し
身体作りもスポーツのパフォーマンスの向上も期待できる。

って言ったら、皆さん何を想像しますか?

睡眠の重要性まとめ

睡眠が普段足りてない選手が睡眠時間を2~3時間増やすことで、上のような効果を得られる可能性があります。
(こちら、過去記事でも解説しています。第27回~30回)

『量より質』という言葉を好む人はどの世界にも一定数いますが、こと睡眠に関してはまずは質うんぬん言ってないでしっかりと睡眠時間を確保しろよというのが僕の持論です。

しかし一方で
「睡眠時間は確保しようとしてるけど仕事(課題)が忙しくてなかなか寝付けなくて、、」
最大限努力したうえでこのように思っている選手もいるでしょう。

睡眠効率

『質』というふわっとした表現は微妙なので、ここでは『睡眠効率』を睡眠の質を表すものとして考えましょう。

睡眠効率とは、ベッドに入った時間の中で実際に睡眠をとれた時間の割合です。

例えば22時に布団に入り、6時に目が覚めたら場合、就寝~起床までは8時間ですよね?

一方で実際にはベッドに入ってから実際に眠りにつくまでの時間、夜中に起きた時間もあるでしょう。

寝付くまでの時間(Sleep Onset Latency)が30分、夜中に目が覚めていた時間が30分だと、実質の睡眠時間は7時間

そのため睡眠効率は7/8=0.875⇒87.5%となるのです。

しっかりとした睡眠をとるためには、
・睡眠時間確保のためのスケジュール管理
・睡眠効率の向上
が必要になるのです。

睡眠効率について
アスリート :80.6±6.4%
非アスリート:88.7±3.6%
といったデータも報告されており(Leeder et al., 2102)、ここの改善はアスリートにとって非常に重要です。

睡眠効率を高めるための栄養的アプローチ

睡眠の質(睡眠効率)を高めるためには色々な方法がありますが、今回は『栄養的なアプローチ』によるものを紹介します。

睡眠の質を高めるための栄養的なアプローチの多くは、トリプトファン濃度(または、LNAAに対するトリプトファン濃度)を高めることを目的としていることが多いようです(Halson, 2014)。

トリプトファンは脳内でセロトニン⇒メラトニンと変化し、このメラトニンが眠気を促進すると言われています。

この時、トリプトファン以外の大型中性アミノ酸(LNAA)の濃度が高いと、脳に輸送されるトリプトファンが少なくなってしまうため、
・就寝前のトリプトファンの濃度を増やすこと
・就寝前のLNAAの濃度を減らすこと
が理論的には眠気を誘うのに有効だそうです。

また糖質を摂取することでインスリンが放出され、それによってLNAAが筋内に取り込まれるため、糖質の摂取も眠気の促進に有効なんだとか。

具体的なアプローチ

今回はHalson(2014)のレビュー論文を参考に、睡眠効率を上げるためのアプローチを紹介していきます。

糖質摂取

糖質摂取には主に寝付くまでの時間(Sleep Onset Latency)を改善する=寝つきが良くなる効果があるようです。

特に高GIの食材(玄米より白米、そばよりうどん)のほうがその効果は高い様子。

「夜は炭水化物を抜いてます」というアスリートで寝つきが悪い選手は、少量の糖質摂取で寝付きが改善するかもしれません。

一方で就寝1時間前よりも4時間前の摂取のほうが寝つきを改善したという報告もあるようなので、
どうしても夕食が寝る直前になる選手は、糖質だけは帰宅前におにぎりなどで摂取して帰宅後はおかずだけ、というのもありかもしれませんね。

タンパク質摂取

様々なPFCバランス(タンパク質、脂質、糖質の比率)を比較した研究では

高タンパク質食
⇒夜中の目覚めの減少

高脂質食
⇒睡眠時間の短縮

高糖質食
⇒寝つきの改善

といった変化が報告されているようです。

糖質だけでなく、高タンパク質食も睡眠効率に良い影響を与えそうです。

しかしそのタンパク質の中のトリプトファン/LNAAの比率によっても睡眠への影響は変わってくると考えられるので、どの食品でタンパク質を摂取するかによっても違いが出そうです。

サプリメントでのトリプトファン摂取

先述したように、睡眠ホルモンといわれるメラトニンの合成には、トリプトファンとLNAAの比率が影響を及ぼします。

そのため、トリプトファンの摂取が眠気を促進すると考えられます。

トリプトファンに関するレビュー論文でも、不眠症の患者だけでなく、健康な人に対してもトリプトファンは眠気の促進、寝つきの改善に有効だとされています(Silber and Schmitt, 2010)。

摂取後90分が効果のピークとなるようなので、就寝時間から逆算して1g程度の摂取をすると良いようです。

夜のBCAA摂取を控える?

トレーニング中にBCAAを摂取する選手も多いかと思います。

BCAAはLNAAの一種なので、理論的にはBCAAの摂取はLNAAに対するトリプトファンの濃度を低下させてしまいます。

BCAA摂取と睡眠効率の関係について実際に検討した研究はまだ見たことはないですが。。

そういった可能性もあるので、もしかしたら夕方~夜の間はトレーニング中にBCAAを摂取することは控えたほうがいいかもしれません。

実際にBCAAを摂取すると睡眠が阻害される感覚がある選手は、BCAAの代わりにトリプトファンも含まれるEAAであったり、マルトデキストリンなどの糖質を摂取するといいかも。

その他のサプリメント等

他にも
・メラトニン
・カノコソウ
・タートチェリー
・グリシン
・テアニン
などのサプリメントも睡眠効率を高めるために効果的である可能性も示唆されています。

一方で中には日中の眠気やめまいなどの副作用が報告されているものや、研究数が足りずエビデンスとしては薄いものもあるので、使用には若干注意が必要かもしれません。
(もちろん先述したトリプトファンも摂取のしすぎや、午前中の摂取は集中力の低下などをもたらす可能性があります)

まとめ

今回は睡眠効率を高めるための栄養的なアプローチを紹介しました。

もちろん、睡眠効率を高めるだけでなく、
そもそもの睡眠時間をきちんと確保すること
生活リズムをなるべく一定に保つこと
も非常に重要です。

リカバリーの8割以上は食事と睡眠です。

今一度自分の睡眠を振り返るきっかけになってもらえれば!

執筆者:佐々部孝紀(ささべこうき)


最近走ったり跳んだりしていると、足底が痛くなったり筋肉の張りが強くなったり、、

見た目は大学生に間違われることも多いですが、身体はしっかりアラサーなようです。笑

おかげで以前よりセルフケアに気を遣うようになったし、リカバリーの知識も増えました。

こういった衰えも勉強しようと思えるきっかけになるのでプラスになりますね!


参考文献

Halson, S. L. (2014). Monitoring Training Load to Understand Fatigue in Athletes. Sports Medicine, 44, 139–147. https://doi.org/10.1007/s40279-014-0253-z

Leeder, J., Glaister, M., Pizzoferro, K., Dawson, J., & Pedlar, C. (2012). Sleep duration and quality in elite athletes measured using wristwatch actigraphy. Journal of Sports Sciences, 30(6), 541–545. https://doi.org/10.1080/02640414.2012.660188

Silber, B. Y., & Schmitt, J. A. J. (2010). Effects of tryptophan loading on human cognition , mood , and sleep. Neuroscience and Biobehavioral Reviews, 34(3), 387–407. https://doi.org/10.1016/j.neubiorev.2009.08.005

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