【第95回】体幹トレーニング再考~本当に効率的な体幹トレーニングとは~

『体幹トレーニングは科学的な観点からは、それ単体では確実な効果があるとは断言できないが、大事なピースの1つではある』

『優先順位としては体幹トレーニングよりも下肢を中心としたウエイトトレーニングのほうが高い』

『全面性の原則から考えて、体幹が他部位に比べて相対的に弱い場合は体幹トレーニングは効果を発揮すると考えられる』

というのが前回の記事の内容でした。

では実際に体幹トレーニング(厳密には、体幹部の筋力を向上させるためのトレーニング)を行ううえでどのようなことに留意しなければいけないか?どのような種目をチョイスすれば良いのか?といったことについて考えていきます。

体幹トレーニングの定義

「体幹トレーニング」という言葉それ自体が流行ってしまっており、何か特別な意味合いがあるように聞こえますが、体幹というのは身体の一部のエリアを示しているに過ぎません。

そこを鍛えるだけでパフォーマンスが劇的に上がる!という魔法の部位ではありませんよね。

 

●上肢
●体幹
●下肢
とある中で、それらをバランスよく鍛えなければいいけない(全面性の原則)というのは前回説明した通りです。

専門家によってどこまでが体幹かという定義は少し異なるようですが、その中心となる『腰椎』『胸椎』といった部分の動作・そこに関わる筋のトレーニングが『体幹トレーニング』と言えるでしょう。

体幹の機能を理解する

全身に対する体幹の位置づけを理解したところで、次は体幹自体の働きを理解しないと効果的なトレーニングプログラムは組めません。

先ほど、体幹は主に腰椎と胸椎周辺を指すと述べましたが、これらの関節には
『屈曲』
『伸展』
『側屈』
『回旋』
の機能があります。

膝関節のトレーニングで『伸展』(レッグエクステンション、スクワット)、『屈曲』(レッグカール、ノルディックハム)の動作に関わる筋を鍛えるのと同様、体幹の筋も上記4つの動作に関わる筋を鍛える必要があります。

腰痛の予防などの観点から、腰椎に関しては安定性、胸椎に関しては可動性を確保したほうが良いという理論もあり[1]、僕もこの考えには賛成しています。
そのため、腰椎周りのトレーニングはアイソメトリック(動きを伴わずに姿勢を安定させるように力発揮をしている状態)を中心に行うようにしています。

トレーニングのカテゴリ分け

上で述べた4種類のカテゴリ+それぞれのカテゴリで漸進的に負荷を高める場合のプログレッションをまとめました。

『体幹トレーニング』と聞くと、多くの人が上段のトレーニング(フロントブリッジなど)を思い浮かべるのではないでしょうか。

トレーニングの初期に腰椎周りをアイソメトリックで固める感覚をつかむという観点で見ると、器具もいらないし有用なエクササイズだと思います。

しかしこれらのエクササイズは筋の最大出力の半分も力を出しておらず[2]、ある程度トレーニング経験を積んだ選手の身体の【強化】としてはあまり向いていません。
(日々のアップに取り入れて【アクティベーション】として使うなら問題ないと思います)

そのためある程度トレーニングを積んだ選手は、下段のように『自重+αの負荷』がかけられる種目に進んでいく必要があります。

簡単に各種目の注意点を説明します。

荷重デッドバグ

抗伸展(腰が反らないようにする力)を鍛えるトレーニング
体幹部の対象筋:腹直筋や外腹斜筋など

【注意点】
手足を上下に伸ばした時に腰が反ってしまうと目的の機能を鍛えられないうえ、傷害のリスクも

腰の反りを確認するために、細いタオルを腰の1番反っているところに入れ、ペアに引っ張ってもらいながら実施することを推奨。タオルが抜ける=腰が反っているということ。

【抗伸展の機能を鍛える他の種目】
・アブローラー
・プルオーバー
など

片手ショルダープレス

抗側屈(腰が横に曲がらないようにする力)を鍛えるトレーニング
体幹部の対象筋:外腹斜筋、内腹斜筋など

【注意点】
足を腰幅からやや広めに開く。体幹部が垂直を保ったまま、片手でショルダープレスを行う。

重量が重くなってくると腰が反ってくる場合もあるので、お尻に力を入れて、骨盤前傾・腰椎伸展を防ぐ。

【抗伸展の機能を鍛える他の種目】
・ファーマーズウォーク
・ラテラルスクワットなど
など

RDL

抗屈曲(腰が丸まらないようにする力)を鍛えるトレーニング
体幹部の対象筋:脊柱起立筋など

【注意点】
足を腰幅に。肩甲骨を寄せ、腰が丸まらないように股関節を屈曲させて身体を前傾させていく。

腰が丸まらない限界のところまで降ろす。

膝は軽度屈曲位。

(フォームについて詳しくは河森さんのブログが参考になります)

【抗屈曲の機能を鍛える他の種目】
・バックスクワット
など

ラテラルスクワット

抗回旋(腰が捻られないようにする力)を鍛えるトレーニング
体幹部の対象筋:外腹斜筋、内腹斜筋など

【注意点】
足はスクワットをする時より広めに。手を伸ばしてケーブルを保持。負けないようにつねに胸の正面にキープ。

体幹部が左右に傾かない、横にねじれないようにキープして、左右に平行移動。

【抗回旋の機能を鍛える他の種目】
・片手ダンベルベンチプレス
・ワンハンドケーブルロウ
・メディシンボールスロー
など

一石二鳥種目のほうが効率が良い!

各種目の説明を読んでいて、なんとなく感じたかもしれませんが、RDLは下半身を鍛えられるし、片手ショルダープレスは上半身のトレーニングにもなりますよね。

そのため「体幹トレーニングではなくね。。?」と思ったかもしれませんが、それこそ僕が普段「体幹トレーニング」という言葉をあまり使わない理由です。

最初に「上肢」「体幹」「下肢」と便宜的に3部位に分けて説明しましたが、実は多くのエクササイズはその3部位をまたいで鍛えることができるんですよね。

先ほど『初級者向け』として紹介したフロントブリッジやバックブリッジは、負荷も低い上に鍛えられる部位も限定されます。(厳密には体幹部以外の部分も活動していますが)

一方で中~上級者向けの種目として紹介したRDLや片手ショルダープレスなどは、
・鍛えられる部位が複数にわたる
・負荷が漸進的に増やすことが可能
と大きなメリットがあります。

他の種目もこの図にあてはめると、こんな感じになるでしょう。

各部位を個別に鍛えるという方法もありかもしれませんが、それだと時間的効率も悪いですよね。。

また、スクワットのような全身を使った種目のほうが、レッグプレスのような下肢のみにフォーカスした種目よりもパフォーマンス向上への効果が大きかったというデータもあり(こちら)、パフォーマンスへの転移を考えても、個別で一部位一部位を鍛えるよりは、全身の活動をリンクさせたほうが良いでしょう。

まとめ

●体幹部の各機能(伸展、屈曲、側屈、回旋)を鍛える必要がある。

●自重エクササイズでは限界がある

●体幹部の活動を含む複合的なエクササイズのほうが、漸進的な負荷もかけられるし、鍛えらる部位も多岐にわたって一石二鳥、三鳥

もちろん、一般的に行われている自体重の体幹エクササイズにも有用性はあると思います。

ただ、それが今のあなたのレベルに本当に合ったものですか。。?

今一度そういったことを考え直すきっかけになってもらえれば!

執筆者:佐々部孝紀(ささべこうき)


参考文献

1. Movement Functional Movement Systems. Gray Cook

2. Electromyographic and Kinetic Comparison of the Back Squat and Overhead Squat.
Aspe, Rodrigo R and Swinton, Paul A. JSCR,28(10), 2014

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