【第89回】アスリートが絶対に知っとかないといけない栄養のこと~自分に必要な摂取量~

世の中にはアスリート(またはスポーツに取り組む子供たち)の栄養についての情報が飛び交ってます。

その中には極論(米を毎食3合食べろ!)(炭水化物はいらない!脂質脂質!)であったり、
抽象的なもの(〇〇はあんまりいらないから〇〇をいっぱい食べよう!)(子どもはとにかくいっぱい食べよう!)が多い印象です。

いっぱいなんてぶっちゃけ人によって全然違いますからね。
「僕めちゃくちゃ食べるほうですよ!」なんて言っていた大学男子バスケ選手が回転寿司を10何皿(←少ない)でギブアップしてたり、「普通ですよ~」なんて言いながら女子選手が牛丼大盛を補食として食べてたり。

今回はISSN(国際スポーツ栄養学会)のレビュー[1]などを参考に
アスリートが必ず知っておかなければいけない栄養についての
・超基本的なことを
・具体的に
紹介していきます。

5大栄養素、3大栄養素

今回はサプリメントのことについてはほぼノータッチ(プロテインについてちょっと触れるくらい)でいきます。

もうほんまのほんまに基本的な、普段の食事について。

以下5つの栄養素を5大栄養素と言います。

・炭水化物(これが分解されたものが糖質)

・脂質

・タンパク質(これが分解されたものがアミノ酸)

・ミネラル

・ビタミン

※炭水化物には食物繊維も含まれますが、今回は触れません。

そして赤文字で示した上3つは特に3大栄養素と言われ、エネルギー(俗に言うカロリー)が含まれています(つまりビタミンとミネラルにはエネルギーは含まれていません)。
体重が増える減るはこれらの3大栄養素の摂取量と、運動&日常生活のエネルギーの消費量のバランスにかかっています。

エネルギー摂取量がエネルギー消費量を上回れば体重は増え、逆であれば体重は減ります。
こんなことは誰でも知っているかもしれませんが、意外と理解していないアスリートが多い印象があります。

特に高校~大学レベルでは、体重過多というよりも体重(筋肉量)が増えずに困っているアスリートが多いです。

「体重がなかなか増えないんです。。」というアスリートは、単純に3大栄養素の摂取量が足りません(まれに、アホみたいに運動量が多すぎて消費エネルギーが莫大になっている場合もありますが)

なんてことを言うと、「僕は一生懸命食べてるのに。。。」と思われるかもしれません。

しかし冒頭でも述べたようにあなたの一生懸命のレベルでは必要摂取量に全然到達していない可能性があります⚠

では実際に3大栄養素、特に炭水化物とタンパク質の必要摂取量について触れていきます。

必要総エネルギー量とPFCバランス

1日に必要な総エネルギー量は

①体重×②基礎代謝基準値×③身体活動レベル
(※1. 徐脂肪体重が分かれば、アスリートの場合はそこから算出するのが理想です。下にはその式も)

で算出できます。

②基礎代謝基準値は以下になりますので、自分に当てはまるものを選びましょう(日本医師会HPより)

そして③身体活動レベルですが、これは競技によります。
一般的には

●筋力、瞬発系⇒2.0
(短距離走や投擲)

●球技    ⇒2.0
(野球やサッカー)

●持久系   ⇒2.5
(マラソンや長距離自転車)

とされています。
ただ、個人的には野球とサッカーが同じ消費エネルギーとしてくくられているのには少し違和感を覚えます。。(競技としては絶対サッカーのほうが消費エネルギー多いでしょ)

では実際に計算してみましょう。

例えば体重75kgの男子高校バスケ選手の場合は
①75×②27.0×③2.0=4050kcal

となります。

ちなみにこれは運動をするのに必要な摂取量になりますので、増量を試みている選手はもう少しエネルギーをとらなければいけません。+300kcalくらいで計算しましょう。

ここで算出したのはあくまでも3大栄養素の1日の必要総摂取量。

この中でどのような割合で炭水化物、脂質、タンパク質を摂取するかも重要になります。

これら3つの栄養素のバランスのことをPFCバランスと言い、それも重要になってきます。(英語でプロテイン、ファット、カーボというのでPFC)

では実際に計算した必要総摂取量をもとに、それぞれの栄養をどれくらい摂らなければいいけないか考えていきます。

※1. 徐脂肪体重(体重から体脂肪量を引いた体重)が分かる場合の式
①徐脂肪体重×②28.5×③身体活動レベル

炭水化物の必要摂取量

必要摂取量の計算の仕方は2通りありますが、おおかた一緒になるはずです。

まずは総エネルギーからPFCバランスの%を使って計算するやりかたと、直接体重から必要糖質量(炭水化物量)を計算するやり方があるのですが、せっかく必要総エネルギー量を算出したので、今回は総エネルギーから計算していきましょう。

総エネルギー量から必要炭水化物量を推定する

PFCバランスの理想的な割合は
タンパク質:約15%
脂質   :約25%
炭水化物 :約60%
とされています。

なので先ほどの例、75kgの男子高校バスケ選手(必要総エネルギー4050kcal)の場合

4050×0.6=2430kcalとなります。

目安として
・ごはん1合 :約500kcal
・食パン3枚 :約500kcal
・うどん2玉 :約500kcal
・おにぎり3つ:約500kcal
こんな感じです。
(食パンは6枚切り、おにぎりはコンビニの。表記は食材に含まれる炭水化物のエネルギー量です。おおよそ。)

つまり炭水化物で2430kcalを摂取しようと思うと、ごはん約5合が必要だということになります。

1合がだいたい牛丼大盛1杯ですので、1日で牛丼大盛5杯ですね。

自分の必要量も計算してみましたか?

意外と足りていなかった選手も多いのではないでしょうか。

タンパク質の必要摂取量

タンパク質の必要摂取量については様々な議論がなされています。

ISSNの今年のレビューでも紹介されているMorton et al., (2017)のメタアナリシスでは
体重あたり1.62g (95%CI:1.02~2.20g)の摂取が推奨されています。

これを愚直に信じて体重×1.6gを厳密に計算してもいいのですが、95%CIも幅がありますし(人によっては1.6g以上の摂取が効果的である可能性もあるということ)、1.6gを狙った結果、1.3g程度しか取れていなかったというのも大いにあり得ます。また、高強度高ボリュームの運動を行っているアスリートでは×1.6gよりも多い摂取がレビューの中でも推奨されています。

なので少し大まかになりますが、体重×2.0gの摂取を目安にするのが良いでしょう。(覚えやすいし)

さてこの計算は単純ですね。

75kgの選手の場合、必要なタンパク質量は75×2.0=150gになります。

ごはん(白米)にもタンパク質は入っているので、それを算入してもいいでしょう。
だいたい1合に約7~8g含まれているので、5合だと35ℊ強ですね。

では残りの115gをおかずで補いましょう。

タンパク質が多く含まれている食品は、肉、魚、卵、大豆製品、乳製品などです。

卵1個、納豆1パック、牛乳1杯、豆腐半丁はごはん1合と同じく約7~8gのタンパク質を含んでいます。

なので朝ご飯で
・納豆1パック
・卵1つ
・牛乳1杯
・豆腐半丁
約30g

115-30=85g
残りを昼と夜のおかずで!

昼はさんまの定食でも
さんま1匹に含まれるタンパク質量は20g程度

残り85g-20gで65g、、、

夜はタンパク質の多そうなチキンステーキ
肉は種類にもよりますが、おおよそ全体の20%がタンパク質
チキンステーキ200gでは40gのタンパク質ですね。

65g-40gで25g、、

ぎりぎり足りませんでした。。

●計算まとめ
75kgの男子高校バスケ選手の場合
必要タンパク質量は150g
・主食で米5合⇒35g
・おかずで卵納豆豆腐牛乳⇒30g
さんま⇒20g
チキン⇒40g
合計125g(25gの不足)

体重60kg程度の選手であればこれで足りたかもしれませんが、少し体格の良い選手の場合はこれでは足りないようです。。

それなりに体格のある選手は
・毎食タンパク質を多く含む食品を2品目以上摂取する
・補食も活用する
・プロテインを活用する
こうした工夫が必要でしょう。

補食の必要性

さて、3大栄養素、特に炭水化物、タンパク質の必要摂取量について紹介しましたが、「足りてないや、、」という選手も多かったのではないでしょうか。

僕がトレーニングを指導しているアスリートも、最初はこれらの栄養素の摂取量が足りていないことが多いですし、ISSNのレビューでもそのような現状について述べられています。

そこで活用してほしいのが「補食」です。

ごはん1日5合を3食で食べるとなると、
朝1合
昼2合
夜2合
とかの配分になりますよね。
これでいける選手もいるかもしれませんが、少し大変だな、、という選手もいるでしょう。

[1]では3~4時間ごとにタンパク質摂取ができるのが理想的とも述べられていますし、補食を活用することでタンパク質のこまめな摂取も、総エネルギー量の確保も容易になりそうです。

炭水化物の摂取であればおにぎりやパンやバナナ、タンパク質の摂取であればゆで卵やプロテイン、コンビニで買い食いできるなら焼き鳥やサラダチキンもいいかもしれませんね。

まとめ

今回は栄養についての基本的なこと。
必要エネルギー量、炭水化物量、タンパク質量について紹介しました。

まずは自分に合った摂取量の目安を知ることが大事ですが、計算した推定摂取量はあくまでも目安。個人の代謝や運動量を正確に把握するのは難しいので、増量を目的にしているときに体重が増えない場合は、結果として摂取量が足りていないということです。

最近はサプリメントを活用するアスリートも多いですが、そもそもの食事をきちんととれていなかったら意味はないですよね?

トレーニングは単体では意味をなさないし、栄養だって摂取したからといって、トレーニングが不十分だと筋肉はつきません。

必要なピースがかみ合って、初めて成果がでるものですので、今一度「栄養」というピースについて見返してみてはいかがでしょうか?

執筆者:佐々部孝紀(ささべこうき)


参考文献

  1. M., KC, Wilborn, CD, Roberts, MD, Smith-Ryan, A, Kleiner, SM, Jäger, R, et al. ISSN Exercise & Sport Nutrition Review: Research & Recommendations. J Int Soc Sports Nutr 7: 7, 2018.
  2. Morton, RW, Murphy, KT, Mckellar, SR, Schoenfeld, BJ, Henselmans, M, Helms, E, et al. A systematic review , meta-analysis and meta- regression of the effect of protein supplementation on resistance training-induced gains in muscle mass and strength in healthy adults. 1–10, 2017.
  3. 日本医師会HP 1日に必要なカロリー「推定エネルギー必要量」https://www.med.or.jp/forest/health/eat/01.html

 


最近、少年野球で1食3合食え!なんて強制されているチームがある。という記事を目にしました。。(1日9合??)

たしかに多くの選手はエネルギー不足なのでたくさん食べることは大事なのですが、どのくらいが適量かなんて見定めずに、とりあえずいっぱい、なんてのは指導者失格ですよね。。

とはいえ摂取量の計算なんて本当にやる気のある選手しかしないし、計算を間違えたら元も子もないですよね。笑

なので僕は早稲田大学のバスケ部やサッカー部でトレーニング指導をしていたときには
「ガードは1日5合、フォワード、センターは6合」
「1日おにぎり15個ぶん」

といったルールを定めてたりしました。

こういった目安をきちんと定めるのも有効ではあるので、指導者の方はチームに合わせて考えてみてください!

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