【第82回】サッカー特集②サッカー選手に必要な体力、トレーニング

サッカーワールドカップがフランスの優勝で幕を閉じましたね。

普段サッカーを見ることが少ない人でも夜更かしをして観戦した人は多かったのではないでしょうか?

さて前回の復習ですが

・サッカーは他の球技スポーツに比べてより有酸素的持久力が求められる

・そのため、体重が重すぎるとその点では不利かもしれない

・しかし逆に細すぎるとフィジカルコンタクトの面では不利になるだろうし、下肢の筋肉が細いと大きなパワー発揮ができない

・海外トップレベルのサッカー選手は、身長ー体重の値が100~105くらい

といった内容でした。

ざっとまとめると以下の図のような感じ

基本的に筋肉量の増加は、ある程度のレベルまでは多くの体力要素にプラスの影響を与えます。

しかしながら有酸素持久力(マラソン的体力)に対しては、例え筋肉量の増加であっても体重の増加はネガティブな影響を与えかねません。

しかし図を見ても分かる通り、それ以上にそもそもの心肺機能を高めれば、有酸素持久力の低下なく(むしろ向上させながら)体重の増加は可能です。
その心肺機能を高める努力を最大限した上で、やっぱり有酸素持久力が足りないというのであれば、減量も考えるべきでしょう。

さて、それらのバランスについて理解したうえで、それぞれの体力要素の向上の方法について考えていきましょう。

コンタクトフィットネス

コンタクトフィットネスとは、フィジカルコンタクトの強さや、強いコンタクトをし続けることができる能力などを表したものです。

これは相手選手がいて成り立つものですので、数字で表すことができる「スプリントスピード」や「有酸素持久力」に比べると、研究はあまりされていない分野のようです。

ただ、論理的に考えるとその能力は

「そもそもの体重」×「コンタクトの技術」
で考えることができます。

そもそもの体重

これは考えれば当たり前ですよね。

体重60kg程度の選手が90kgの選手に身体をぶつけて勝てる可能性は限りなく低いです。

1000%勝てないとは言い切れませんが、そのような体格差で繰り返しコンタクトをすると、60kgの選手のほうが体力の消耗は激しいでしょう。

コンタクトの技術

各競技でファールの基準が違うので、コンタクトの技術は変わってきますが、共通して必要な能力は
・下肢~体幹部の剛性(コンタクトの瞬間に身体を固められる能力)
・重心を落として踏ん張ることができる脚力
・空中でコンタクトをした際のボディバランス
あたりでしょう。

サッカーであれば多少腕を使って相手をブロックすることもOKですので、上肢の筋力や、腕の使い方も重要でしょうか。

これらの能力を身につけるには、実際にコンタクトのトレーニングを行うのがおススメです。

・5秒~10数秒間の押し合い(腕あり、なしなど様々なルールで)

・多少のファールはありにした、狭いスペースでのボールの奪い合い
※これはどちらかというと技術練習の部類に入りますが

などが主に挙げられます。

パワー発揮、スプリント能力

サッカーではスプリントスピードは非常に重要な要素ですよね。

ベルギーのカウンターにしろ、フランスのエムバぺ選手にしろ、世界トップレベルのサッカーはとにかくスピードがありますよね。

スプリントスピードやアジリティを高めるためには筋パワー(筋力×筋収縮の速度)が必要です。

そして大きな筋力発揮のためには筋肉量が必要です。

まとめると以下の図のようになります。ある程度勉強しているアスリートであればよく見る図ですよね。

筋力というのはよくスクワットの最大挙上重量で求められます。

実際にノルウェーのサッカー選手を対象にした研究では、10mスプリントのタイムとスクワットの挙上重量の間に強い相関(r=-0.94)が認められています[5]。
この数値はスクワットの挙上重量がスプリントスピードの80~90%程度を説明している可能性がある。といったことを表しており、非常に強い関係であることが分かります。

と考えると、ベースの筋肉量の増加も筋力の向上につながるので、スプリントスピード向上に貢献すると考えられますよね。

トップレベルの100mスプリンターの体格(身長ー体重)は、103~104程度(身長180㎝であれば体重77kg程度)だとする研究[3]もあります。
これは前回の記事で紹介した、海外トップレベルのサッカー選手と同じくらいの数値ですよね。
(ちなみに、日本代表の数値は平均で身長ー体重=109ほどでした)

もちろん脂肪で体重を増やすとスプリントスピードも遅くなるでしょうが、適切なウエイトトレーニングを行いながら筋肉量、筋力を増やしていくと、基準の体格(身長ー体重が103~104)に達していない選手はスプリントスピードが速くなる可能性が高いでしょう。

一方、誤解をしてほしくないのが、ウエイトトレーニングだけを行っていても効率的にスピードは向上しないということ[4]。

ウエイトトレーニングを行ったうえで、しっかりとスプリント自体を行う(サッカーの中で、もしくはスプリントトレーニングとして)。この2つを行うことでスプリントスピードは効果的に向上していきます

また、ウエイトトレーニングとスプリントトレーニングの間の特性をもった「レジスティッド(抵抗)スプリントトレーニング」も、ショートスプリント(~20m)能力の向上に効果的なのでおススメです。

色々な方法があるのですが、代表的なのものはスレッド(そり)やパラシュートを用いたものが挙げられます。

写真はAlcaraz et al., 2008より

有酸素持久力

サッカーは高いレベルになると、1試合あたりで10㎞以上の走行距離が必要になってきます。

「走らされる」といった現象で走行距離が長くなることは良くないかもしれませんが「最後まで走り切れる能力」は非常に重要ですよね。

先述したコンタクトフィットネスやスプリントスピードは高強度のプレーに必要ですが、それを後半最後まで維持するのに有酸素的持久力は必要です。

実際に、サッカー選手に対して高強度インターバルトレーニング(この研究では4分走×4、レスト3分)を8週間行わせた結果、体重あたりのVO2Maxが向上し(58.1ml/min/kg⇒64.3ml/min/kg)、試合での走行距離も長くなった(8.6㎞⇒10.3㎞)ことを報告している研究[1]もあります。

一方で、有酸素持久力はわざわざトレーニング(走るだけのもの)として行わなくても、Small Sided Gameと呼ばれる少人数のゲーム(3対3や5対5)によっても向上することが知られています[2]。

他にも「ローパワー」と言われる低強度の持久力トレーニングもありますが、個人的には基礎的なパス練であったり戦術確認のための強度の低い練習がローパワー的な役割も担っていると考えられるので、持久力トレーニングについては上記で挙げた
・高強度インターバルトレーニング
・Small Sided Game
のどちらかを行うのが良いのではと考えています。

あまり長い時間をかけてローパワーのトレーニングを行うと、それが筋力やパワーの向上を妨げてしまいますしね。(そのことについてはこちら

また先述したように、これらのトレーニングによってそもそもの心肺機能を高めることは可能ですが、体重が重すぎる選手の場合、そのせいで有酸素持久力が低くなっていることも考えられます。

その場合は、なるべく筋肉量を維持しながら減量を行うのも1つの手でしょう。

まとめ

サッカー選手に必要な体力要素と、そのトレーニングについてまとめました。

大事なことは、今自分に何の能力が足りないのかを見極めること。

マラソン的な体力がめちゃくちゃあるのにフィジカルコンタクトで疲れてしまう選手は、それ以上持久的トレーニングを行っても試合で走れるようにはならないでしょう。

逆に筋骨隆々で足も速いのに有酸素持久力がない選手は、もっと持久的なトレーニングに時間を割いてもいいかもしれません。

是非今回の記事を、自分の弱点分析のヒントにしてみてください。

執筆者:佐々部孝紀(ささべこうき)


昨日は今年度から新しく関わるチームのファミリーデイでした。

選手やスタッフの家族みんなとの交流会なのですが、毎年恒例の新人選手や新スタッフの自己紹介兼一発芸大会があるとのことで。。

持ちネタでなんとか乗り切ることができました。

これからスポーツ業界で活動していきたいという学生さんは、そういった準備をしておくことも重要ですよ。


参考文献

  1. Helgerud, J, Engen, L, Wisløff, U, and Hoff, J. Aerobic endurance training improves soccer performance. Med Sci Sport Exerc 33: 1925–1931, 2001.Available from: http://www.skautingtimdif.rs/biblioteka_trening/Aerobic endurance.pdf
  2. O., Faude, A., Steffen, M., Kellmann & T., M. The Effect of Short Term Interval Training During the Comeptitve Season on Physical Fitness and Signs of Fatgiue: A Cross Over Tiral in High Level Youth Football Players. Int J Sports Physiol Perform 9: 936–944, 2014.
  3. Paruzel-dyja, M, Walaszczyk, A, and Iskra, J. Elite Male and Female Sprinters ’ Body Build, Stride Length and Stride Frequency. Stud Phys Cult Tour 13: 33–37, 2006.
  4. Rumpf, MC, Lockie, RG, Cronin, JB, and Jalilvand, F. Effect of Different Sprint Training Methods on Sprint Performance Over Various Distances: A Brief Review. 2015.Available from: http://content.wkhealth.com/linkback/openurl?sid=WKPTLP:landingpage&an=00124278-900000000-96692
  5. Wisløff, U, Castagna, C, Helgerud, J, Jones, R, and Hoff, J. Strong correlation of maximal squat strength with sprint performance and vertical jump height in elite soccer players. Br J Sports Med 38: 285–288, 2004.

 

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