【第80回】日本バスケ界のフィジカルの変遷~オーストラリア戦勝利の背景?

昨日はFIBAバスケットボールワールドカップ一次予選オーストラリア戦でしたね。

ご存知の方も多いと思いますが、

日本がオーストラリアに対して劇的な勝利を挙げました!

これがどのくらいすごいことかと言うと、、
オーストラリアのバスケットボールはFIBAランク10位
一方、サッカーのFIFAランク10位といえばスペイン

違う競技なので一概には比較できませんが、サッカーでいうとスペインを倒すくらいすごいこと

ちなみにオーストラリアはリオ五輪のバスケットボール競技でも4位になっているので、その実力は疑いようがありません。

そんなオーストラリアを倒したのです、、、!
とんでもないですよね。

もちろんこれはいろんな要因によって達成されたものでしょう。
新戦力である八村選手やファジーカス選手の活躍、コーチングスタッフの方々のチーム作り、選手たちの努力、ファンの後押し、、

そんな中で、バスケ界のフィジカルの底上げも貢献しているのではないでしょうか?

バスケ界のフィジカルの向上

バスケ界のフィジカルなんていうと幅が広いかもしれません、、
厳密にいうと「関東大学バスケットボール界のフィジカル」です。

そんなのが代表選手に関係あんの?と思うかもしれませんが、実は昨日の試合に出場していた代表メンバー9人のうち、
アメリカ出身のファジーカス選手、アメリカに留学した富樫選手、八村選手を除く6選手は、全員関東大学バスケットボールリーグのチーム出身なんです。

大学バスケ界は関東に有望な選手が集まる傾向にあり(それが良いことか悪いことかはわかりませんが。。)、昨年のインカレ(大学の全国大会)もベスト8のうち7つの大学が関東の大学。また、2012年に4位になった近畿大学以来ベスト4はすべて関東の大学です。

そんな関東大学バスケのフィジカルがここ数年急激に向上してきているんです。
肌感覚ではなく、数値として。

実は2012年より2年に一度、関東大学一部リーグに所属している全チームを対象に共通のフィジカルテストを実施しており、フィジカル測定ランキングが公表されています。

以下、そのデータの変化を抜粋しました。

公表データにはトップ5の選手の実名、所属大学も記されており、そのトップ5の平均値も記されています。
(2016年分の全データはこちら⇒関東大学バスケットボール連盟HPより

※2018年度分も公表されました!こちら(2月25日追記)

スクワット(深さはパラレル)、クリーン、垂直跳び、20mスプリント、、ほぼすべての数値が向上しています。

知らない人にとっては意外かもしれませんが、スクワットなどのウエイトトレーニングの重量を上げたほうがジャンプ力も上がるし足も速くなるんです。
(このことについては関東大学バスケ連盟のHPにも記事を書かせてもらっています⇒足を速くしたければスクワットの重量を上げろ!

そのため、スプリントスピードやジャンプ力が上がった要因として、スクワットなどの基礎的な筋力の向上も貢献しているのではないでしょうか(もちろん、それプラスのジャンプ、スプリントトレーニングも必要ですが)。

なぜこの数年で全体のフィジカルが向上してきたのか?

さて、ここ数年で全体のフィジカルが向上してきている理由として
・2012年時点で、フィジカルが強かったチームがバスケも強かった
・データが公表されたことで他のチームも追いつけ追い越せでトレーニングに取り組んだ
といったことが挙げられます。

2012年、僕は当時学生だったんですけど、そのときは青山学院大学と東海大学の2強でした。

そして何が他のチームとの差になっていたかと言うと、スキルや戦術以外にも圧倒的なフィジカルの差があったんです。

先ほどのフィジカルランキング、あれは別にバスケが下手で筋トレばかりやっている選手がランキング入りしているわけではなく、実際に活躍している選手が良い数値をたたき出していました。

昨日のオーストラリア戦でも活躍していた田中大貴選手(当時東海)、比江島選手(当時青学)、は実際に2012年のスクワットランキング、フォワード部門で1位、2位に輝いています。(それぞれ160kg、150kg)

他にも青学、東海の選手は上位を占めており、スクワットにいたってはベスト5×3ポジション15人のうち、13人が青学、東海の選手でした。。

そんなデータが公表されたものですから、他大学も必死にウエイトトレーニングに取り組みます。

僕が所属していた早稲田大学もその中の1つで、卒業後、2015年に指導者として戻った時には選手たち自身がその重要性をしっかりと認識していました。
「筋トレなんかしたら動けなくなるんじゃないの?」「身体が重くなるからやりたくない」なんて言っている選手はおらず、むしろ自分たちから進んで取り組んでいました。それは筋トレをやっている上位チームの選手がバリバリに動けているのを間近で見ていたし、何よりフィジカルコンタクトの重要性を肌で感じていたからでしょう。

そして2016年のランキングでは、2012年よりも多くの大学が上位選手を輩出しています。関東全体としての取り組みが活性化してきた証拠ですよね。

まとめ

昨日の日本の勝利が何もすべてフィジカル向上のおかげだなんて言いません。

強力な新戦力の加入、戦術の噛みあい、、フィジカルの向上よりももっと大きな直接的な要因もあるでしょう。

ただ、きちんとしたトレーニング(ウエイトトレーニング)に取り組むことによって、

・元々自分たちよりも体格の良い相手とも身体のぶつかり合いで負けなくなります。言い換えると、「戦い」の土俵に立てます。

・きちんとしたフォームで取り組みさえすれば、怪我が減ります。(詳しくはこちら

身体能力(スプリント、ジャンプ力)が向上します。

これらは間接的に選手のハードワークを支えることは間違いありません。

あのラグビーのエディージャパンの躍進も、鍛え直したフィジカルを土台としたハードワークだと言われています。

日本人はもともと身長は小さいです。体格も欧米には負けています。

しかし埋めることができる差から目を背けて他のところで勝負しようなんてことを言ってると、いつまでたっても勝てませんよね。

今回の日本の勝利に便乗するわけではないですが、これを機にバスケ界でもそういった努力があったんだということを知ってもらえれば。「正しいトレーニング」を行えば身体は絶対強くなる、ハードワークができるようになるんだということを知ってもらえればと思います。

執筆者:佐々部孝紀(ささべこうき)

 

 

 


すごく個人的なことですが、トレーニング指導者としての今の僕がいるのは、当時の青学、東海にボコボコにやられた経験があるから。

それが悔しくて、後輩選手たちとウエイトトレーニングに取り組んで成長してきたといった経験があるからです。

それに全チームにフィジカル測定を実施、それを公表するなんて素晴らしいことをやってくれていた当時の関東大学バスケ連盟のトレーナー部会の方々のおかげです。

(今回も過去のデータは東海大学の小山さんからいただきました。。ありがとうございます!)

 

さて、オーストラリアに勝ったものの、負けられない戦いは続きます。

次は7月2日の台湾戦。

サッカーワールドカップも盛り上がってますが、バスケの日本代表も応援しましょう!!

※2019年2月25日追記

オーストラリア戦から8連勝!

ワールドカップ出場も決めましたね!

うれしい!!!!

 

 

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