【第10回】力速度曲線から考える筋力とパワーの関係。小さい選手の生きる道(前編)

【★★★】専門性

多くのスポーツでは「身長が高い」ということが有利に働きます。

しかし、時には「身長が小さい」ことが有利に働くこともあります。

その長所を活かそうと思ったら、身長が低いことのメリットを科学的に理解することが不可欠です。

今回の記事は、スポーツにおける身長の低さのメリットを。

前編

・コンセントリック収縮とエキセントリック収縮
・筋力とパワーの関係
・力速度曲線から考える競技特性、種目特性

後編

・体重比筋力とパワー―身長の特性―
・ショートスプリントとロングスプリントの違い
・アジリティ

コンセントリック収縮とエキセントリック収縮

筋収縮の様式には、大きく分けて以下の3つがあります。

・コンセントリック収縮(短縮性収縮)

この収縮では、筋肉が縮みながら力を発揮します。
ジャンプ動作中の下肢の筋の収縮などがこれにあてはまります。
車で言うところのアクセルをイメージしてください。

・エキセントリック収縮(伸長性収縮)

この収縮では、筋肉は伸ばされながら力を発揮します。
ジャンプの着地動作中の下肢の筋の収縮などがこれにあてはまります。
車で言うところのブレーキをイメージしてください。

・アイソメトリック収縮(等尺性収縮)

この収縮では、筋肉の伸び縮みは起きずに、力のみを発揮します。
空気いす中の下肢の筋の収縮がこれにあてはまります。

エキセンーコンセンーアイソ

ここで注意してほしいことは、ジャンプも、着地も、空気いすも、地面を真下に押す力を発揮しており、使っている筋肉はほぼ同じということです。
ただ、その収縮様式が違うだけ。

ここから先は一度、コンセントリック収縮についてもう少し深く掘り下げます。

 

筋力とパワーの関係

コンセントリック収縮においては、発揮できる「筋力」に加えて、「(収縮)速度」という要素も重要になります。そしてその2つの要素を掛け合わせたものをパワーと言います。

力(筋力)×速度=パワー

スポーツをするうえで、筋力や速度が単体で求められることはまずありません。
唯一挙げるとしたら、どれだけの重りを持ち上げられるかを競うパワーリフティング。これは筋力のみを求めているといえるでしょう。(なので、この「パワー」リフティングという競技名は少し語弊があるかもしれません)

ある程度スポーツ科学を勉強した人にとっては、ここまでは常識ですよね。
筋肥大、神経系の適応を起こすトレーニングによって最大筋力を向上し(第4回)、パワートレーニング(クリーン、スナッチ、ジャンプトレーニング)によってその筋力をパワーに転移させる。
一般的によく行われるプログラムだと思います。

でもよく考えると筋力とパワーの境目ってあいまいだし、パワーの定義もめちゃくちゃ広いですよね。
力速度曲線から考えるとそのことがよく見えてきます。

 

力ー速度曲線から考える競技特性、種目特性

力速度曲線

上の図が力―速度曲線です。

発揮する力が大きくなればなるほど、収縮速度は遅くなり(図の右のほうに寄り)、発揮する力が小さいほど、収縮速度は速くすることが可能です(図の左に寄る)。

ちゃんとトレーニングをやったことがある人なら分かると思いますが、最大挙上重量に近いスクワットって、いくらがんばってもゆっくりとしか上がりませんが、ある程度余裕のある重量のスクワットは割と速い速度で挙上可能ですよね。

そして力(筋力)と速度をかけた値がパワーになります。
図でいうと、
F1の力、V1の速度で力を発揮しているときのパワーがP1になるということです。

そして発揮できるパワー(FとVをかけた面積)は、最大の力(Fmax)のおよそ30%で最大になると言われており、その負荷でのパワートレーニングは、ほぼすべての負荷(図の左から右にかけて)でのパワーを向上させると言われています。

なのでアスリート全般はこの負荷(Fmaxの30%前後)でのパワートレーニングが推奨され、一般的にはこの周辺の負荷でのトレーニングがパワートレーニングと呼ばれることも多いと思います。

しかし

・競技によって求められるパワーが異なる
・「筋力」トレーニングも行い方によってはパワートレーニングになる

以上の2つのことも考えられます。

競技によって求められるパワーが異なる

例①霊長類最強の男、レスリング グレコローマンスタイル130㎏級のアレキサンダー・カレリンのカレリンズリフト

例②身長175cmのNBA選手、ネイトロビンソンのダンク

上記2つの例は両方大きなパワー発揮が求められます。
しかし、同じパワーであっても、

例①は大きな力でのパワー発揮(図のより右側)

例②は大きな速度でのパワー発揮(図のより左側)

が求められます。
(ジャンプの跳躍高は、離地時の速度によって決まります)

他にも、例えば物体を遠くにor速いスピードで投げる必要のある野球、砲丸投げを比べると、
野球はボールが軽い分、大きな速度でのパワー発揮
砲丸投げは砲丸が重い分、大きな力でのパワー発揮
が求められます。

ここで「じゃあ野球とかバスケは大きな力がいらないから、筋力はそんなに必要ないんだ」という勘違いはしないでくださいね。
比較対象に比べたら速度の貢献が大きくなるだけで、筋力は絶対に必要になります。

先の動画にあげたネイトロビンソンや、野球のダルビッシュ投手の身体を見ればそのことは分かると思います。

筋力トレーニングも行い方によってはパワートレーニングになる

先ほど、Fmaxの30%前後でのパワートレーニングの有効性について述べましたが、筋力トレーニングも行い方によってはパワートレーニングになり得ます。

最大挙上重量(1RM)のスクワットはゆっくりでしか挙上できません。

しかし、例えば5RM(5回挙上できる重さ)のスクワットは、1RMよりも速い速度での挙上が可能です。

ジャンプトレーニング等に比べたら、発揮できる速度、パワーは落ちますが、本来筋力を鍛える目的の5RMのスクワットであっても、その中での最大速度で行うことによって
高負荷×低速度のパワートレーニングになり得ます。

また、代表的なパワートレーニングであるクリーンやスナッチも同じくパワートレーニングのくくりですが、速度、力の貢献度は異なってきます。(必要な挙上速度はクリーン<スナッチ)

それらのイメージを先ほどの力速度曲線にまとめました。

パワートレ分類

少し長くなってしまいましたが、これらの知識をもとに、次回は僕の考える「小さい選手の生きる道」まで繋げようと思います。

では!

次回の内容

・体重比筋力とパワー―身長の特性―
・ショートスプリントとロングスプリントの違い
・アジリティ

 

 

 

 

 

 

 

 

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