【第156回】あの夏の思い出『砂浜ラン』は本当に効果があるのか?

合宿先が海辺だったらだいたいやりますよね、『砂浜ラン』

砂だと通常の地面で走るよりも反発が得られないのでスピードが出づらくしんどいです。

ただ、気になりますね。

「あれって普通のの地面を走るよりも効果あんの?」

って。

まあ同じくらいの効果が認められるならまだしも、『普通の地面で走ったほうが効果は高いです!』なんてのが真実だとすると、「あの夏の努力はなんやねん!!」ってなりますよね。

今回はその答えの1つとなるメタアナリシスをもとに、砂浜ランの有効性について考えていきましょう。

砂地でのトレーニング効果

Pereiraら(2021)は以下の内容で2020年10月までの研究を収集し、メタ解析を行いました。

Pereira et al., 2021

砂地でのプライオメトリクス、スプリントトレーニングはジャンプ力、スプリントスピードに対して大きな効果(それぞれES=1.27、1.02)を示し、なんと砂地でのトレーニング効果と普通の地面でのトレーニング効果の比較では、砂地でのトレーニングのほうがスプリントスピードに対する効果が大きかったことが示されました(ES=0.42;95%CI=0.01~0.83;p=0.05)。

砂浜ランを経験した皆さん!無駄じゃありませんでした!

なんならスプリントスピード向上に関しては砂地でのトレーニングのほうが大きな効果まで示しています。

ではなぜそのような結果になったのでしょうか?

Pinningtonら(2005)の研究では、木製の地面と、砂地でのランニングを同じ速度で行わせたときのキネマティクスとEMG(筋電図)の違いを測定しています。

その結果、砂地でのランニングでは
・ストライドが短くなり、ピッチが増加し
・下肢のEMGが大きくなった
ことが示されました。

EMGが大きかったことから、筋がより能動的に力発揮をしていた可能性が推察されます。簡単に言うと、砂地では進みづらいぶん筋肉が頑張らなきゃいけないということですね。

EMGが大きい=良いこととは一概には言えないのですが(例えば主働筋と拮抗筋の共縮により、力発揮自体は低下してるけどEMGは大きいみたいな例もあるので)、今回の砂地でのランニングではトレーニング中のEMGの増加が良い方向に働いていたようですね。

まとめ

一方で、メタアナリシスの著者らは「砂地、通常の固い地面のどちらが良いかを議論するよりも、違いを理解して使分けることが大事」と述べています。

砂地でのランニングは進みづらい分筋活動の増加が期待出来る一方で、地面から反発をもらうテクニック、SSC能力の獲得は、やはり通常の地面でのトレーニングに分があるでしょう。

ただ砂地にはもう1つ『接地の衝撃を分散できる』という特徴もあるので、関節の負荷が少ないとも考えられます。

そういった意味では、負荷量が過剰になりがちな合宿においては砂地の活用スプリントスピード向上の効果もありつつ、オーバーユース系の怪我のリスクを抑えられると一石二鳥かもしれませんね!

執筆者:佐々部孝紀(ささべこうき)

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参考文献

  1. Pereira, LA, Freitas, TT, Marín-Cascales, E, Bishop, C, McGuigan, MR, and Loturco, I. Effects of Training on Sand or Hard Surfaces on Sprint and Jump Performance of Team-Sport Players: A Systematic Review With Meta-Analysis. Strength Cond J 43: 56–66, 2021.
  2. Pinnington, HC, Lloyd, DG, Besier, TF, and Dawson, B. Kinematic and electromyography analysis of submaximal differences running on a firm surface compared with soft, dry sand. Eur J Appl Physiol 94: 242–253, 2005.

 

 

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