【第155回】シーズン序盤は怪我が多い?防ぐ方法はめちゃくちゃシンプル!

競技スポーツにおける怪我ってどのタイミングで起きることが多いと思いますか?

シーズンが深まった終盤?

オフ明け?

試合期前のトレーニング期?

いろんなことが想定されると思いますが、ノンコンタクトの外傷として代表的な『ハムストリングの肉離れ』の場合、シーズン序盤に多いと報告されています(Yeung et al., 2009)。

多くのスポーツ、特に学生スポーツにおいては年末年始や年度末がオフになる場合が多いですよね。

つまり、そのオフが明けた後っていうのは肉離れ等の怪我が増えるのです。頑張ってくださいね!🔥

 

 

 

と、ここで終わったらブログにならないので、今回はオフ明けの怪我を防ぐ方法について解説していきます!

肉離れが発生しやすい時期

Yeungら(2009)は44名のスプリンターを対象に、シーズン開始前にハムストリングの筋力、柔軟性(SLRの角度)を測定し、肉離れの発生との関連について調査しました。

その結果、ハムストリングの柔軟性や筋力と、肉離れの発生の間に有意な関係性は示されませんでした。

というのがメインの結果だったのですが、肉離れが発生した時期について非常に面白い報告がなされています。

平均の週の活動時間は11.2時間(±6.9時間)、人によりますが単純計算で1人あたり年間で600時間程度の活動をしていたことになりますね。

1年間(1シーズン)、2004年の8月~2005年の7月までの間で12件の肉離れが発生し、そのうち7件が最初の100時間で受傷していたことが報告されています。

こんな極端な結果になったことにびっくりですが、シーズン序盤は肉離れが多いということが分かりますよね。

この結果はAcute Chronic Work Load Ratio(ACWR)の大きさによってもたらされていると考えられます。

ACWRとは、めちゃくちゃ単純に言うと負荷の変化の急激さを表した変数になります。

RPE(主観的疲労度)などの主観的な負荷でも、走行距離などの客観的な負荷でもACWRは算出できるのですが、手前数週間でかかっていた負荷(Chronic Load)と、現在(その週)かかった負荷(Acute Load)の比がACWRになります。

Griffineら(2020)はシステマティックレビューにてACWRに関する研究をまとめており、ACWRは1.12倍~1.25以内におさめたほうが傷害発生率は低いとされています。要するに練習量を急に1.5倍とか2倍とかに上げたら危ないよってことですね。

このACWR、オフ明け、なおかつオフ中の運動強度・負荷が低いとどうなるでしょうか?

こんな感じになります。

そりゃ危ないわ。

※ここでいうオフ期は『試合がない時期=トレーニング期としてのオフシーズン』ではなく、シンプルにチーム活動がないオフ期間を指します

シーズン序盤の怪我を防ぐ方法

ではシーズン序盤の怪我を防ぐ方法というのは、この側面から考えると非常に単純ですよね。

読者のかたも大きく分けて2つ思い浮かんだのではないでしょうか。

そうです

①シーズン序盤の負荷を少し低いところから徐々に上げていく

②オフ期間、特に終盤にかけて自分でしっかりと動いておく

の2つですね。

なんならこの2つを組み合わせるのがベストでしょう。

もしかしたら読んでくださっている読者の方、特に現役で選手をやられている方の中には「オフ明けであんなに急に練習するから怪我するんじゃん!もっと少ない量から始めろよな!」なんて指導者に対して不満に思った方もいるかもしれません。

まあもし本当にそうなんだとしたら一理あるかもしれませんが、②の『オフ期間、特に終盤にかけて自分でしっかりと動いておく』はきちんと出来ていますか?

普段の練習量が100だとしたら、オフ期間に普段の練習通り100動けとまでは言いませんが、
・外でのジョギングやスプリント
・個人で出来る基礎練習
・チーム何人かで集まって少ない人数での練習
などを、開始日から逆算して、30、40、、、70と、ある程度の量を実施していますか?

そこが0に近い状態で文句を言うのはナンセンスかなと思います。

怪我の予防含め、チームで良いものを作っていくには選手・指導者ともにまずは自分に出来ることを全力でやることが必要です。

選手自身がやるべきことをしっかりやった状態で、それでもシーズン序盤の怪我が多いようであればチーム全体で建設的な議論をしていきましょう!

一方で指導者の方も「オフでなまった身体をたたき起こすために、オフ明けは普段の練習よりハードなものをやらせよう!」といった発想は怪我人が増えるだけになるので注意が必要です。

出来ればオフ明けにはこれくらい動くよというのをあらかじめ選手に提示しておくのが良いかもしれませんね!

執筆者:佐々部孝紀(ささべこうき)

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参考文献

  1. Griffin, A, Kenny, IC, Comyns, TM, and Lyons, M. The Association Between the Acute:Chronic Workload Ratio and Injury and its Application in Team Sports: A Systematic Review. Sport Med 50: 561–580, 2020.Available from: https://doi.org/10.1007/s40279-019-01218-2
  2. Yeung, SS, Suen, AMY, and Yeung, EW. A prospective cohort study of hamstring injuries in competitive sprinters: Preseason muscle imbalance as a possible risk factor. Br J Sports Med 43: 589–594, 2009.

 

 

 

 

 

 

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