【第109回】トレーニング指導に役立つ教育学~四大教師行動~

アスレティックトレーナーもS&Cコーチも、リハビリやトレーニングを指導する上で、新しいことを選手・クライアントに『教える』必要がありますよね。

その際に『教育学』というものが非常に役に立つのですが、残念ながらそれらの資格の教育課程ではあまりそのようなものに触れられません。

『教えている内容』が非常に専門的で優れていれば、『教え方』がより良くなればもっと質の高いものを提供できますよね。

そこで本日は教育学の基礎でもある【四大教師行動】について解説していきます。

四大教師行動

四大教師行動とは主に小中高の体育の授業などで観察される教師の行動で、以下の4つのものから構成されています。

  1. マネジメント
  2. 直接的指導
  3. モニタリング
  4. 相互作用

本日は高橋ら(1991)の研究をもとに、どのような教師の行動が授業評価の高さにつながったかを解説していきます。

前提として、高橋らの研究は
・小学生の
・体育の授業(大人数への指導)
が対象なので、ジュニアスポーツでの集団指導には比較的活かしやすいかと考えられますが、成人へのパーソナル指導は少し異なってくるので、そこは頭に入れつつ読み進めてください!

マネジメントとは?

マネジメントとは準備、片付け、移動など、直接学習に関連のない状況のことです。

一般的に、これらマネジメントの時間は短いほど良いとされています。

そのため、日ごろから決め事(移動を速く、無駄話をしないなど)を徹底しておく必要がありますよね。

直接的指導とは?

直接的指導とは、課題となる運動の
・説明
・演示
・行動の指示
などになります。

これらの時間も、無駄に長くないほうが良いとされており、伝えるべきところは伝えつつ、情報量をコントロールしてシンプルに伝えたほうが良さそうです。

一方で大人のトレーニングの指導となると、ジュニア期の選手に比べて「まずやってみること」よりも「しっかりと理解すること」の重要性が増すと思うので、必要であれば伝える情報量も適度に増やしていいのかなと思います。

モニタリングとは?

モニタリングとは、集団を指導しているときに教師が生徒の活動を観察していることです。

このモニタリングの時間配分は授業評価が高かった授業と低かった授業で大きな差はなかったと報告されていますが、フィードバックを与えるためにも『モニタリングをしやすい環境を作る』といったことは重要かと考えられます。

例えばグラウンドで、「広がって!」と指示を出したときに、グラウンドいっぱいに選手が広がるとモニタリングで目が行き届く範囲が狭くなりますよね?

それを防ぐために「2~3m間隔で広がって!」など、実施するエクササイズに適した配置につかせることも大切でしょう。

相互作用とは?

相互作用とは、教師と生徒(トレーニング指導であれば指導者と選手)の関わり合いになります。

主に
・発問
・受理(傾聴など)
・フィードバック
・励まし
・補助
などの行動が含まれます。

特に重要なのが傾聴とフィードバックで、

・しっかりと生徒に対して傾聴をすること
・肯定的フィードバック(今のは良かったね!など)
・矯正的フィードバック(ここをもう少しこうすると良いね!など)
の頻度が高いことが重要です。

一方でパーソナルの指導では、フィードバックの頻度が高すぎると選手がその指導者からのフィードバックに依存するので、適度にフィードバックの頻度は抑えたほうが良いと個人的には考えています。

一方で30~40人の指導ともなれば1人あたりに与えられるフィードバックは限られてくるので、セッション中には指導者は喋りっぱなし(フィードバックや励ましを常に与える)くらいで良いでしょう。

まとめ

良い授業(授業評価の高い授業)≒ジュニア期の選手への質の高い集団指導を実施するためには
・マネジメントの時間を短縮する
・直接的指導はシンプルに
・モニタリングしやすい環境を作る
・肯定的、矯正的(≠否定的)フィードバックを多く与える
ということが重要です。

本日は教育学の基礎の基礎について紹介しました。

フィードバックは頻度以外にも、どのように与えるかが非常に重要なので、またそのあたりも解説していきますね。

こういったことが深く学べるので、現在4年制大学でATやS&Cを目指している学生の方は教職課程の科目を履修するのも非常に勉強になりますよ。

是非『教育学』についても興味を持ってみてください!

執筆者:佐々部孝紀(ささべこうき)


昨日はS&Cコーチを務める富士通フロンティアーズが、アメフトXリーグの日本一決定戦で勝利をおさめ、4連覇を達成しました!

多くのファンの方にもご来場いただいて、本当に選手の力になったと思います!

次は年明けのライスボウル。

選手が最高のコンディションで臨めるように僕もしっかりやっていきます!


参考文献

高橋健夫、中井隆司、岡沢祥訓、芳本真
体育授業における教師行動に関する研究一教師行動の構造と児童の授業評価との関係一
体育学研究、36 193− 208, 1991.

 

 

 

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