【第19回】ウエイトは悪!?ウエイトトレーニングの良い面、悪い面

「ウエイトトレーニングは野球に必要ない」byイチロー

最近、ツイッター等のSNSで話題になっていますね。(動画はこちら

そして、

「イチローが言うなら間違いない!筋トレはやらなくていいんだ!」
「大谷投手やダルビッシュ投手は筋トレやってるじゃん。どっちが正しいの?」

等、様々なリアクションが見られます。

この動画の中では「う~ん」と思う発言もちょいちょいありますが(まあ、イチロー選手もトレーニングの専門家というわけではないので)、
確かに、ウエイトトレーニングにはポジティブな面もネガティブな面もあります。

ウエイトトレーニングは意味ない!意味ある!なんて極端に論ずるのではなく、そのポジティブな面とネガティブな面を天秤にかけて、
その人にとってポジティブな面が上回れば行えばいいし、
ネガティブな面が上回れば行わなければいい。
ってことだと思います。

ポジティブな面

各体力(スピード、ジャンプ力、アジリティ)の向上

出力(筋力、パワー等:詳しくは前回の記事を参照)が向上することによって、スピード、ジャンプ力、アジリティ(方向転換スピード)等が向上します。

よく、「体重が増えると身体が重くなって、スピードが落ちる!」なんて聞きますが、

体重50、出力50の選手が

体重60、出力80
になれば、上記の理論は通用しませんよね?

トレーニング初心者が適切なトレーニングを行えば、体重の増加を出力の増加が上回ります。

むしろ体重に対する出力が増加することでスピードやジャンプ力は向上します。(向上した出力を使いこなせれば)

てかコンタクトスポーツであれば体重の増加もそもそも重要ですよね。

傷害の予防

適切なウエイトトレーニングを行っている選手は、そうでない選手に比べて傷害の発生率が低いことが報告されています(Lauersen et al, 2014)。

よく考えれば当たり前ですよね。

ケガっていうのは多くの場合、ストップや着地(ブレーキ)の衝撃に身体が耐え切れずに発生します。(肉離れ、ジャンパーズニー、前十字靭帯損傷等)

適切なウエイトトレーニング

筋力、つまり身体のブレーキの機能を向上

ストップや着地時の衝撃をうまく吸収できるようになる

ってことです。※詳しくはこちら

可動域(柔軟性)の向上

え!そーなの!?って思った人もいるかもしれませんが、そうなんです。

適切なフォームでRDLを行ったことがある人ならめっちゃ分かりますよね。あれは本当にハムストリングスの柔軟性を改善してくれます。RDLが何か分からない人はネットでもいいんで調べてみてください。

それか友達にウエイトリフターがいれば見せてもらってください。彼らはそのへんの一般ピーポーよりも(なんなら野球選手、バスケ選手よりも)全然身体は柔らかいですよ。

また、可動域の改善は傷害の予防や各体力の向上にもつながります。

 

ネガティブな面

出力の変化により、各体力が一時的に低下する可能性はある

先ほどの例で

体重50、出力50

体重60、出力80

になれば各体力は向上するはずだと述べました。

しかしながらそれだけではむしろ各体力は低下こともありえます。

スプリントも、アジリティ(方向転換)も、大きな力を地面に伝えることは必要なのですが、その他にも上半身の姿勢をコントロールしたり、次のステップを適切な位置に出したりする必要があります。
出力の向上により、その姿勢のコントロールであったり、ステップの運びが多少乱れる可能性は考えられます。(今まで80%でやっていたことを50%、60%でしなければならなくなるので)

※詳しくはここ

ウエイトトレーニングの疲労によって、一時的にパフォーマンスが落ちる可能性がある

これは説明しなくても大丈夫ですよね。

その日の練習のことだけをとるのか、長期的な体力の向上をとるのかって話です。

適切なフォームで行わなければ、可動域が低下する可能性がある

たまにいますよね。ベンチプレスをやっていて、10㎝くらいの幅でバーベルを上下させている人。あんなことをやっていればそりゃ肩甲帯、胸の可動域は低下します。

下半身のトレーニングも然りです。

適切なフォームで行わなければ、傷害が発生する可能性がある

下半身のトレーニングなんて100㎏以上の重りを扱うことはざらです。

その負荷がかかった状態で、腰が丸まったり、膝が極端に前に出たり、、そんなことをしたら怪我をするのは当たり前ですよね。

適切なメニューの組み合わせ方をしなければ、バランスの悪い身体になる

例えば
・ベンチプレス(胸)
・腹筋
・腕立て(胸)
・ダンベルフライ(胸)
このメニューのみを週3回!

なんてやってたら前面の筋肉ばかりがついて、猫背気味になりますよね。

まとめ

イチロー選手はただイメージでウエイトを否定しているわけではなく、実際にウエイトトレーニングを行っていたそうです。そしてこのネガティブ面をすごい感じてしまった結果、今の考えに至ったのではと考えられます。(たぶん適切な指導下ではなかったのでは)

そこで、ネガティブ面を改めて箇条書きにします。

・出力の変化により、各体力が一時的に低下する可能性はある
・ウエイトトレーニングの疲労によって、一時的にパフォーマンスが落ちる可能性がある
適切なフォームで行わなければ、可動域が低下する可能性がある
適切なフォームで行わなければ、傷害が発生する可能性がある
適切なメニューの組み合わせ方をしなければ、バランスの悪い身体になる

太文字を強調した意味は分かりますよね。

僕も、ウエイトトレーニングが万能だなんて思っていません。ウエイトトレーニングによって実際にパフォーマンスが下がった選手も日本全国数えきれないくらいいると思います。

けど、それはきちんとした指導者がいればきっと起きなかった問題でしょう。

記事の頭でも述べましたが
ポジティブ面とネガティブ面で比較して、ポジティブな面が上回ればウエイトは行うべきだし、ネガティブ面が上回れば行うできではない。

適切な指導下でのウエイトトレーニングでは、どちらが上回るかなんて、明白ですよね。

追記

ただ、やっぱり特に地方には「トレーニング指導のプロフェッショナル」が少ないのが現状です。(こちらより)

もしこの記事を読んで、トレーニング指導者を呼ぼうと思った方がいたら、まずはトレーニングの有資格者をお呼びするのがベターだと思います。(もちろん、中には無資格でも素晴らしいとレーニング指導者はいると思うのですが)

【トレーニング指導者の資格】
・NSCA-CSCS
・NSCA-CPT
・JATI-ATI
・日本体育協会公認AT

以上が代表的なものでしょう。

ちなみに、個人的にはNSCAのレベルⅠ認定(実技の模範指導もきちんと行えるという認定)を持っている人ならさらに信頼できるんじゃないかと思います!

 

引用:
The effectiveness of exercise interventions to prevent sports injuries: a systematic review and meta-analysis of randomised controlled trials. British Journal of Sports Medicine  Laursen J.B. et al 2014

 

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【第19回】ウエイトは悪!?ウエイトトレーニングの良い面、悪い面” に対して4件のコメントがあります。

  1. U-KI(ゆーき) より:

    こんにちは。

    いつもサイト拝見させてもらっています。色々と学ばせてもらっています。

    質問があります。ウエイトトレーニングによる柔軟性の向上はどのようにして起こっているのでしょうか?柔軟性が向上するメカニズムなどを教えていただければと思います。

    また自体重によるトレーニング(自重トレ)でも柔軟性の向上はみられますか?教えて下さい。

    1. sasabekouki より:

      細かいメカニズムについては私もまだ勉強中なのでなんとも言えませんが
      一般的には筋長が長くなること、ストレッチ痛への耐性などが挙げられます。

      自体重であってもしっかりとした範囲で関節を動かせば柔軟性は向上すると思いますが、ウエイトトレーニングのほうが効果は大きいと思います。

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