【第46回】トップアスリートは、頭が良い~どうして勉強しなくちゃいけないの?~

年度の移り変わりということもあり、SNSのタイムラインには卒業・入学系の投稿が溢れていましたね。

みなさん、卒業した学校では多くのことを学べたでしょうか?

新しい環境では何を学びますか?

この記事の読者のかたは、スポーツをしている、もしくはスポーツ選手の指導をしている人が多いと思います。

「アスリート」と「勉強」

一見、関係なさそうに思えますが、実はすごく関係の深いものなんです。

体力と成績

Castelliら(2007)は、小学生を対象に行わせた体力テストと数学、Reading(日本で言うところの国語?)のテストの関係性について調査したところ、

数学もReadingともに、体力テストとの関係性が認められました。

※研究結果より抜粋、数値は相関係数(r)

図の数値が1.0に近づくほど関係性が強いことを表します。

体力テストの中でも、特に有酸素的持久力(20mシャトルラン)が優れている生徒ほど、数学、Readingのテストの結果が優れていたということになります。

逆に、BMIの数値が高い生徒(肥満傾向?)ほど、テストの点は低かったという結果になっています。

これは介入を行っていない、いわゆる「観察研究」になるので、
体力があるから勉強ができる
のか
勉強ができるから体力がある
のかは分かりませんが、

勉強(学業成績)と体力の間にはなにかしら有意な関係がある
というのは確かなようです。

トップアスリートは、頭がいい

これは私自身の主観になってしまいますが、トップアスリート(日本代表レベル)の選手の多くは、頭がいいです。

質問の仕方、発言一つをとってもすごく頭の良さを感じます。

例えば、
A「スクワットって、良いの?」
B「スクワットって、やったらどんな効果があるの?」

A「とりあえず体幹鍛えたいんだよね」
B「こういうときに体幹のブレを感じることがあるんだけど、トレーニングで改善できる?」

違い、分かりますよね。笑

勉強ができる≠頭がいい ではない

これも分かりますよね。

お勉強はできる(テストの点数は良い)のに日常生活では頭がいいとは感じない人、いますよね。

逆にテストの点数はそんなに良くないのに、頭がいい人、いますよね。

社会に出たら、どちらかというと勉強ができるかどうかより頭がいいかどうかが大事だと思います。

実際、因数分解なんて高校卒業以降は私も使ったことないですし、バスコダガマが何をした人なのかももう忘れてしまいました。

高校卒業以降の学びに関しても、スポーツ系の学部で解剖学やスポーツ医学を学んだ学生が銀行に就職する。なんてこともよくあることです。

こう考えると、勉強なんて必要ないんじゃないかと思えてきます。

頭を良くする様々な経験

しかし「勉強ができて頭が良くない人」に比べたら「勉強ができて頭もいい人」のほうが多いですよね。色眼鏡なしで見たら。

スポーツを一生懸命やるということも、頭を良くするんだろうなと思います。目標に向かって試行錯誤する訳ですから。

勉強、スポーツ
これらはどちらも頭を良くする上では一役買っているものなんだと思います。

勝手な印象ですけど、
・勉強ができる人  →頭のいい人もいれば悪い人もいる
・スポーツができる人→頭のいい人もいれば悪い人もいる
・勉強とスポーツができる人→頭のいい人がすごく多い

と感じるのは私だけでしょうか?

学校で学んでいるのは、頭の使い方

学校で学んでいるのは、「頭の使い方」だと思っています。

 

例えば、掛け算の筆算をやろうと思ったら、その手前に足し算ができなくてはいけませんよね?
そして、もちろん九九も覚えていなくてはいけません。

また、いくつかの公式を覚えたとしても、問題を解くためには
・どの公式を使うのか
・どのように公式を使うのか
を理解していないと問題は解けません。

歴史の授業っていうのは、出来事を丸暗記するのではくて、前後のつながりを把握してたほうが覚えやすいです。

また、理科の実験、音楽の演奏の実技、家庭科の教育実習なんてのは、トライ&エラーの繰り返しですよね。

知識のパズルを組み立てる

「知識」とは別に、「思考力」という言葉を私はよく使います。

イメージでいうと、こんな感じです。

知識の習得・・・真っ白のパズルのピースに、絵柄を塗る作業

思考力・・・パズルのピースを組み立てる能力

先述した数学の話だと、
・どの公式を使うか
・どのように公式を使うか
というのが思考力で、

公式を覚えるというのが
知識の習得です。

数学の公式(知識)は大人になってしまうと忘れてしまうかもしれませんが、
思考力、いわゆる考える力というのは、その先の人生でも必要になってくるものです。

その思考力(パズルを組み立てる能力)を磨くときに、パズルが真っ白だと何をしていいのか分からない状況になります。

思考をするには、そのための知識が必要で、人生において役に立たないかもしれない数学の公式を覚えなきゃいけない理由はそこなんです。

アスリートには、知識・思考力が必要

最初のほうにも述べましたが、トップアスリートは頭が良いです。

A「スクワットって、良いの?」
B「スクワットって、やったらどんな効果があるの?」

A「とりあえず体幹鍛えたいんだよね」
B「こういうときに体幹のブレを感じることがあるんだけど、トレーニングで改善できる?」

Aの選手は、思考停止状態ですよね。

Bの選手は、きちんと物事を考えながら行っているし、正しい知識を得ようともしています

もちろん、変な指導者に引っかかったら、変な知識を与えられてしまうかもしれませんが、

そもそも変な指導者に引っかかるというのも、アスリート自身の責任(知識不足・思考力不足)なのかもしれません。

まとめ

正しい知識(栄養、睡眠、トレーニングの方法)を知ること。

ものごとをきちんと考えながら行うこと。

がんばるだけでは結果なんてでるわけがありません。(【第38回】がんばることには意味はない

トレーニングの知識は、普通の学校では習いませんが、
正しい知識を得て、きちんと物事を考える習慣というのは、学校の勉強の中で身に着けられるものなんじゃないでしょうか。

しかし、今まで勉強してこなかったアスリートでも、努力次第では正しい知識・思考力を身につけることは可能でしょう

1日8時間睡眠をとって、数時間を食事などに使ったとしても、

残りの時間をすべて練習・試合に使ってるわけじゃないんですから。

 

参考文献
Darla M. Castelli, Charles H. Hillman,Sarah M. Buck, and Heather E. Erwin
Physical Fitness and Academic Achievement in Third- and Fifth-Grade Students
Journal of Sport & Exercise Psychology, 2007, 29, 239-252

 

 

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