【第53回】トレーニングの選択方法~メリットとデメリットを天秤にかける~

「あ、この選手、あんまり頭良くないな」

と思う質問のしかたがあります。

選手A「スクワットって、良いんですか?」

選手B「スクワットって、どんな効果があるんですか?」

選手Aより、選手Bのほうが、頭が良いんだろうなと思ってしまいます。

前者の選手のほうが、流行りのトレーニング方法(トレーニング方法というより、流行のフィットネスビジネス)に夢中になってしまうんじゃないでしょうか。

今日の記事は執筆者の偏見がだいぶ入りますが、トレーニング科学を実践に活かそうと思ったときに必要な考え方を紹介します。

そのトレーニングが必要かどうかは、状況、人によって変わる

これは当たり前のことだと思うのですが、実際はきちんと理解できていない人も多い気がします(選手Aのように)。

当サイトでもしきりにウエイトトレーニングを行うことを強く推奨していますが、それは現状で(正しい)ウエイトトレーニングを行うことでメリットが得られる選手が多いからであり、別に全選手にウエイトを普及させるためのウエイト教の教祖になろうとしているわけではありません。

たまたま様々なトレーニングの選択肢の中から、ウエイトトレーニングを選んでいるだけで。もちろん、ウエイト以外のトレーニング(ジャンプ、スピード、アジリティ)も並行して行っています。

そもそも、トレーニングがすべての選手に必要かどうかというのも、厳密にいえばそうではありません。

すごく極端な例ですが、元ボディービルダーで
身長180㎝
体重120㎏
体脂肪率12%
なんてバスケ選手がいて、その体重のせいでVO2Maxの体重あたりの値が極端に低くなっているのであれば、筋肥大をさせるようなトレーニングは中断したほうがいいかもしれません。

一方、多くの選手は逆に「筋肉量や筋力をもっと高めたほうが良い」という状態なのでウエイトトレーニングを行っているだけです。
「でもウエイトをやりすぎたら上記のボディービルダーみたいになるじゃん」なんて思っている人はボディービルダーを舐めすぎです。

目的達成のために必要な要素、各手段のメリット・デメリットをリストアップする

まず以下のように、目的達成のために必要な要素、逆に必要でない(あればむしろマイナスの)要素をリストアップします。

図でいえば、要素①と要素②は目的達成に必要な要素、要素②は逆にマイナスとなってしまう要素。

そして考えうる手段として、様々なものをリストアップし、そのメリット・デメリットを考えいきます。

例えば、手段Aは、要素①と、要素②を向上させて、要素③については低下させてしまいます。

要素②の向上は、ここではデメリットとなってしまうので、手段Aを行うメリットとしては、要素①の向上のみです。

一方、手段Cでは要素①の向上、要素②の低下、要素③の向上と、この場合はメリットだらけになります。

これを考えると、手段Aより、手段Cのほうが良さそうですよね。

しかし手段Aのほうが手段Cより、各段に要素①への効果が大きいとしたら。。?など、考えることはてんこもりです。

でも、実際のスポーツ現場のほうがもっともっと考えることはてんこもりですよね。

分かりづらかったかもしれないので、例を用いて考えてみましょう。

アメフトの場合

さきほどの図を用いたら、アメリカンフットボール(アメフト)の体力要素の場合、このようになると考えられます。

この3つの方法(トレーニング)について考えると、持久力トレーニングを行うメリットはなさそうですよね。
(すごく厳密なこと言えば、必ずしもそうではないかもしれませんが)

実際、バスケチームやサッカーチームほどの持久力トレーニングを行っているというアメフトチームの話を私は聞いたことがありません。
(野球に関してはいくらでもあるのですが。。笑)

マラソンの場合

マラソンの場合は、以下のようになると考えられます。

アメフトの例と、示してある「要素」「手段」は変わりませんが、各方法が目的(勝利)に与える影響は異なってきます。

ウエイトトレーニングは筋力・パワーの向上という点ではメリットになりますが、筋肥大という点ではデメリットになりえます。

ただ、ウエイトトレーニングと一言で言っても「強度(重量)」「回数」「セット数」「種目」「フォーム」など、その変数は多岐にわたり、その変数の扱い方で効果は大きく変わってきます。

なので、筋力・パワーの向上がメリットになり、筋肥大がデメリットになるのであれば、「筋肥大をしないように筋力・パワーを高めるような変数の組み方」をすればいいのです。

具体的にはこちら(S&Cつれづれ:河森直紀さんのブログ

まとめ

トレーニングは
・その競技に必要な要素は何か?
・それぞれの手段にはどのようなメリット、デメリットがあるのか
・メリットを最大限に、デメリットを最小限にするためにはどのような工夫が必要なのか

以上のことを考えて行わなければいけません。

競技によって必要な要素は違うし、個人によっても必要な要素の優先順位は異なるでしょう。

〇〇トレーニングで万事解決!なんて魔法のトレーニングはないんです。

選手A「スクワットって、良いんですか?」

選手B「スクワットって、どんな効果があるんですか?」

自分自身では気づかないかもしれませんが、意外と選手Aのような思考に陥りがちな人も多いはずです。

今一度、「自分に何が必要で、何のためにこのトレーニングをやっているのか」を考えてみてくださいね。

 

 

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