【第32回】ヒップスラストでスクワットの弱点を補強する

下の図は、「アームカール」というトレーニング。
肘の曲げ伸ばしをすることによって上腕二頭筋を鍛えていきます。

夏前になると数名の選手が自発的に行うことも多い種目です。笑

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上腕二頭筋には、この図の真ん中のときに一番負荷がかかります。

これは前回の記事で紹介した釣り竿のイメージで理由を説明できます。

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釣り竿を持ち上げるときの力は、
「長さ(重りと支点の水平距離)×重さ」
で説明できるという話でした。

アームカールの場合、図の真ん中の局面で重りと支点の水平距離が長くなるので、それに伴って負荷が大きくなります。

上記のメカニズムを理解したうえで、下半身のトレーニングのときにかかる股関節の負荷についても考えてみましょう。

 

股関節屈曲位で負荷がかかる種目

アームカールの場合動作の真ん中で一番負荷が大きくなったのですが、下半身の種目は降ろしたとき(股関節屈曲位)に負荷が大きくなるものが多いです。

例えば、スクワット。

sq

図の通り、下に降りたときのポジションで重りと股関節の水平距離が長くなっており、その局面で股関節伸展筋群(大殿筋やハムストリングス)の負荷は大きくなります。

 

また、デッドリフトやRDL(ルーマニアンデッドリフト)、ランジ等の種目も同じく降ろした局面で負荷が大きくなります。
※下の図はRDL

rdl

 

これらの種目は股関節屈曲位で負荷が大きくなる一方、伸展位では負荷が小さくなってしまうという特性もあります。

 

股関節伸展位で負荷がかかる種目

多くの下半身のトレーニングにおいて股関節屈曲位の負荷が強くなる一方で、股関節伸展位で大きな負荷をかけられる種目もあります。

それの一つがヒップスラストです。
(ヒップリフトとも呼んでいます)

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写真のようにベンチに肩を置き、仰向けになり、股関節前面にバーベルを乗せ、股関節の屈曲―伸展を繰り返します。

このトレーニングの特性として、John Grahamら(2011)は以下のことを挙げています。

①膝関節屈曲位で股関節を伸展するため、ハムストリングスよりお尻の筋肉をより動員できる
⇒肉離れ予防に

②股関節伸展位での出力
⇒ランニング時の股関節の角度と似ているため、パフォーマンスの転移が大きいのでは

③全可動域で負荷がかかり続ける
⇒筋肥大に効果的

実際、「②ランニングスピード向上につながる」という仮説は、2016年にContrerasらによって実証されています。
この研究ではヒップスラストとフロントスクワットでのトレーニング効果の違いを検討しており、

スプリントスピードの向上
ヒップスラスト>フロントスクワット

ジャンプ高の向上
ヒップスラスト<フロントスクワット

という結果が得られています。

 

この「②股関節伸展位での出力」について先ほどの図を用いてもう少し詳しく説明していきます。

テコのメカニズムが先ほどの釣り竿の例やスクワットとは少し違うのですが、かかる負荷は
支点(肩&足)と負荷(重り)の距離×重量で決まります。
そしてヒップスラストの場合、図のように完全伸展位~軽度屈曲位にかけて常に負荷がかかり続けます。
一方で、深い屈曲位での負荷がかけられないという欠点もあります。

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この図を立位姿勢にして、先ほどのスクワットの図と比較するとこうなります。

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スクワット等の立位姿勢で行う種目
〇股関節(また下肢全体の)屈曲位で大きな負荷がかけられる
△股関節(また下肢全体の)伸展位で負荷がかかりづらい

ヒップスラスト
〇股関節伸展位で大きな負荷がかけられる
△股関節屈曲位で負荷がかけられない
どのようなトレーニング種目にも優れた点と弱点はあるものです。

そのピースの1つとして、ヒップスラストを導入してみてはどうでしょうか?

 

John Graham et al
Barbell Hip Thrust
Strebgth and Conditioning Journal, 2011, 33(5):58-61

Bret Conteras et al
Effects of a six-week hip thrust versus front squat resistance training program on
performance in adolescent males: A randomized-controlled trial
Journal of Strength and Conditioning Research, 2016

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