【第29回】睡眠の重要性③パフォーマンスの観点から
試合前日に徹夜してくるアスリートなんていませんよね。
そんな状態じゃ頭も回らないし力もでません。
そんなことは誰でも分かっているでしょうし、みんな試合前日にはしっかり寝ると思うのですが、でもそれは試合前日だけでいいんでしょうか?
今日は中期的(数週間)の睡眠習慣がパフォーマンスに及ぼす影響の話です。
パフォーマンスの指標
数値で表現できるスポーツのパフォーマンス指標というものには以下のようなものがあります。
〇体力測定の数値
・スプリントスピード
・ジャンプ力
・筋力(スクワット最大挙上重量)
・持久力(20mシャトルラン、VO2Max)
・アジリティ(Tテスト、10m×5)
〇スキル
・シュート確率(シューティングor 試合中)(バスケ)
・打率(野球)
・アタック決定率(バレー)
・セーブ率(サッカー)
・サーブ速度and 決定率(テニス、バレー等)
上記の数字はどれも優れている方が競技パフォーマンスにプラスの影響を与えますよね?
睡眠がパフォーマンスの指標に与える影響
今回は2つの研究(Mougin et al, 1991; Cheri et al, 2011) から、睡眠時間の長さがパフォーマンスに与える影響についてご紹介です。
※Mouginらは、短い睡眠とコントロール、Cheriらは長い睡眠とコントロールを比較していますが、今回の結果紹介は【十分な睡眠をとれば】という表現で統一します。
また、どれくらいの介入期間があったかなどは本文を読んでくださいねー
〇十分な睡眠をとれば、足が早くなる
スピードは、大きな筋力・パワーがあればそれだけ速くなると考えられます。
前回の記事で紹介した通り、十分な睡眠は筋量・筋力を向上させる可能性が高いので、おそらくその結果でしょう。
〇十分な睡眠をとれば、持久力(VO2Max)が上がる
筋トレをすれば筋肉に負荷がかかりますし、持久力トレーニングをすれば循環器系(新肺機能)に負荷がかかりますよね。
その負荷からの回復には十分な睡眠は不可欠です。
〇十分な睡眠をとれば、反応時間が早くなり、判断の間違いが減る
Cheriらの研究ではPVTという判断の正確性・スピードを測るテストを行っています。
睡眠でそれらの成績が上がるのはなんとなくわかりますよね。
寝不足やと頭働かないですもん。
〇十分な睡眠をとれば、シュート確率が上がる
バスケの3Pのシューティングの確率が、68%→77%に、
フリースローの確率が、79%→88%になったそうです。
これはシューティングの確率ですが、試合でのシュート確率も同様に10%上がると半端ないことになりますよね?
おそらくこれは他のスポーツのスキルの正確性においても同様の結果が得られるのではないでしょうか。(ネットスポーツのサーブ決定率、野球のピッチャーのコントロール等)
まとめ
前回の記事で身体作りには睡眠は不可欠と述べましたが、そこに関連する体力指標も、やはり十分な睡眠により向上するようです。
ただ、バスケのシュート率が上がったのはいいけど、野球の打率や、キーパーのセーブ率など、相手がいるスキルはどうなの?という話にもなりますが、
・十分な睡眠によってバスケのシュートのような相手のいないスキルは向上
・十分な睡眠によって反応時間が早くなり、間違いも減る
以上のことから相手に反応して行うスキルも向上するであろうことは予想できますよね?
最後に
十分な睡眠とは
最低8時間
理想は9時間
です。
このことは睡眠についての学会(National sleep foundation)でも公式に認めらてます。
そして、多くの人々(もちろん、アスリートも)は大部分の人が理想的な睡眠時間を確保できていません。
みなさん、寝ましょう。
参考資料:
Cheri D, et al
The effect of sleep extension on the athletic performance of college basketball players.
SLEEP, 2011, 34(7):943-950
Mougin, et al
Effect of sleep disturbances on sub sequent physical performance
European Journal of Applied Physiology, 1991, 63:77-82
National Sleep Foundation
Summary of Findings
Sleep in America POLL, 2006
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