【第24回】選手がよく言う「ウエイトやると身体が重くなるんすよね~」についての考察

「ウエイトやると身体が重くなるんすよね~」

よくいますよね、そう言うアスリート。

そのたびに言ってます。「いや、そらそうやろ」と。

こういう会話のときによく起きてしまうのが、言葉の意味の捉え方の違い。

以前の記事で挙げた「体幹が強い」という言葉もそうでしたよね。
コンタクトが強い、バランス能力が高い、切り返しが速い等、女子高生の「ヤバい」ばりにいろんな意味で使われるので、いったい体幹を鍛えたいというのが何を求めているのかわかんないって話でした。

「身体が重くなる」

この言葉も同様で、発している人によって、意味や状態が違っています。

 

「身体が重くなる」の意味

物理的に重くなる

①徐脂肪体重(筋量)の増加

一部の競技(バリバリの持久系、芸術系競技)は除きますが、そもそもウエイトはこのためにやっている側面もありますよね。

身体が重くなるんですよね〜

って、そらそうやろ。ええやんそれで。

②筋量増やすつもりが脂肪が増えちゃったパターン

筋量を増やすには、カロリー収支をプラスにする(動いた以上にごはんを食べる)必要があります。

その過程で、筋量も増えたけど脂肪も若干増えちゃった。というのはありえます。

それならまだいいですけど、オフで蓄えた脂肪を筋肉に変えようとか、体幹トレーニングだけで増量しようとか、適切なトレーニングをせずにとにかく米を食えとか、訳わかんないやり方で増量したらそりゃ脂肪ばっかり増えます。

 

ってまあこういう①②みたいな話をすると選手も、「いや、それは分かってるんですけど…」ってなりますよね。

実際に選手が言ってる「身体が重くなる」のは次のパターンです。

感覚的に重くなる

③疲労が溜まる

考えれば分かることですよね。

技術練習のみ行うのと、技術練習+筋トレを行うのと、そりゃ後者のほうが運動量も多いですし(感覚的に)重くなるのは当たり前でしょう。

④筋肉痛によって身体が動かしづらくなっている

あまり慣れていない量のトレーニングを行うと、翌日筋肉痛になることもあります。

「イテテテッ」ってレベルの筋肉痛でなくてもこれは身体の動かしづらさ(≒重さ)につながります。

しかし定期的にウエイトトレーニングに取り組んでいると筋肉痛にはなりづらくなるので安心してください。

逆に気が向いたときに、2~3週間に一度(気が向いたとき、雨の日だけ)がっつりウエイトをする。なんてやり方をしている人は継続性がなく効果も薄いうえに、筋肉痛だけ強く残っちゃって最悪です。

特に重くなりやすい時期

以前の記事(第4回筋力を決定する要因第21回ピリオダイゼーション)で、ウエイトは筋肥大期(一般的には最大挙上重量の70~80%程度の重さを8~10回ほど行うもの)、最大筋力期(80%以上の負荷で低回数で行うもの)に分けられるという話をしました。

特に筋肥大期はトレーニングボリュームが多くなるので、疲労も筋肉痛も残りやすく、増量を目指して食事をしっかりととっている場合は筋肉量の増加に加えて脂肪の増加が起こる場合もありえます。

きちんと計画されたトレーニングのもとで、その後の最大筋力期のトレーニングもきちんと実施すれば、ジャンプ力やスプリントスピードも向上するので安心してください。
(あくまでもきちんとしたメニューをきちんと取り組めば、ですけど)

筋力高める方法

教科書的なトレーニングプログラムでは、初期(試合から遠い時期)にまず筋肥大期のトレーニングから入ることが多いです。

そのため、その初期の段階で
・疲労の蓄積
・筋肉痛
・筋量+脂肪量の増加
を経験して

「身体重いわ~」「ウエイトあんまやらんとこ」

となってウエイトをやめてしまう。

これは研究でも明らかになっているのですが、筋肥大期→最大筋力期と分けたトレーニングは、後半の最大筋力期のほうが、回数が少ない分楽なうえに、筋力がグーンと伸びてきます(Painter et al., 2012)。

つまり筋肥大期だけウエイトをかじってみて辞めちゃう選手は、パフォーマンスへの効果を実感しづらいきつい時期のみ体験して、筋力が向上して足が速くなった!跳べるようになった!と実感できる機会を逃してしまっているということです。

言い方を変えると、ウエイトトレーニングによるパフォーマンス向上の効果をそんな数日で感じられるわけないので地道に取り組みましょうということです。

まとめ

物理的に重くなる(筋量が増える)のは、そのためにやってるんだから当たり前。

感覚的に重くなるのは、技術練習にプラスしてトレーニングを行っているんだから当たり前。

今のスポーツ界、上位チームがストレングス&コンディショニングにきちんと取り組んでいる競技・カテゴリ(ラグビー、アメフト、バスケ、ヨーロッパサッカー?等)では、いくらスキルがあっても最低限のフィジカルがないと勝負の土俵にすら立たせてもらえません。

その重要性を認識してれば、うだうだ言う暇なくウエイトトレーニングにも取り組みますよね。

執筆者:佐々部孝紀(ささべこうき)

 

参考資料

1.           Painter, KB, Haff, GG, Ramsey, MW, McBride, J, Triplett, T, Sands, WA, et al. Strength gains: Block versus daily undulating periodization weight training among track and field athletes. Int J Sports Physiol Perform 7: 161–169, 2012.

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