【第182回】筋力トレーニングをサーキット形式で実施するメリットとデメリット
サーキット形式で筋力トレーニングを実施する様子、よく目にしますよね。
そもそもサーキットトレーニングとは何かというと、一般的に複数の種目のエクササイズを1セットずつ順番に、場合によっては複数セット行うものになります。
①一般的なウエイトトレーニングのセッションの中にサーキット形式のセットを含むもの
もあれば
②セッション全体をサーキット形式で実施するもの
もあります。
①は例えば
1.スクワット5回3セット
↓
2.RDL5回3セット
↓
3.ワンハンドロウ
4.プッシュアップ
5.懸垂
6.オーバーヘッドプレス
上記4種目を5回ずつ3周
みたいな形の、3~6の部分を指します。
※3と4や5と6を2種目セットにして交互に実施する形が一般的にはスーパーセット、またはAgonist–antagonist paired set(APS)といいます(Robbins et al., 2010)。
今回は主に「②セッション全体をサーキット形式で実施するもの」について考えていこうと思います。
個人的にはその形式には賛成も反対もありません。
ただ、「なんとなくサーキットのほうが見栄えが良いから」「他のチームがその形で実施していたから」「サーキットが良いって聞いたから」といったふわっとした理由で選択しているのだとしたら、今一度やり方を見直しても良いのかもしれません。
今回はサーキット形式でトレーニングを実施するメリットとデメリットを整理してみようと思います。
サーキット形式で実施するメリット
まずはサーキット形式でトレーニングを実施するメリットからお伝えします。
1つ目は少ない器具を多人数でシェアして使え、時間的効率が良いという点です。
例えばバーベルが2本、バンドが2本という環境で20人で筋力トレーニングを実施するとしましょう。
その場合にバーベル種目やバンドを使う種目を実施する場合、全員で同時に同じ種目を実施するというのが不可能、もしくは非常に効率が悪くなりますよね。
そういった場合、例えば4人組で5か所に分かれ、バーベルを使うステーションを1つ、バンドを使うステーションを1つ、器具を使用しないステーションを3つ設定して各場所を回る形式にすると、4人で2つの器具を使用することが出来るので効率的にセッションを回すことが出来ます。

このように配置、実施をすることで、器具に対する人数が多い場合でも無駄な時間を過ごさなくて済みますよね。
また、もう1つの利点としてやり方によっては持久力も鍛えられるというものもあります。
実際、レジスタンストレーニングをサーキット形式で実施することによって最大酸素摂取量が改善したということもメタアナリシスにて報告されています(Munoz-Martinez et al., 2017)。
これは一般的なレジスタンストレーニングの場合、1セット終わったら次のセットまで対象部位を休めるために1-3分ほどレストを取ることが多く、その間に呼吸・心拍が落ち着くことが多い一方で、サーキット形式の場合次にすぐ別部位が配置されることが多いため、比較的短いレストで次の運動に入れるor入ることが多いため、心肺への刺激が強くなるのだと考えられます。
しかしこのメタアナリシスでは研究の異質性が高い(≒研究毎の結果のばらつきが大きい)ことも報告されていることに加え、普段の身体活動量が低い参加者ほど効果が高かったことも報告されているため、アスリートの持久力向上のためのメインの手段ではなく、あくまでも副次的なものとして位置付けたほうが良いでしょう。
サーキット形式で実施するデメリット
逆にサーキット形式で実施するデメリットとしては
①まとめて説明した後の実施になるため、初期は選手が注意点を把握しきれない
②個別の負荷設定がおざなりになりがち
③心肺に負荷をかけるためにレストを短くすると強度(重量やスピード)は落ちる
などが挙げられます。
①まとめて説明した後の実施になるため、初期は選手が注意点を把握しきれない
について、例えば上記のような5か所での実施となると、初回の場合は5種目分の実施法、2回目以降は各種目で前回出来ていなかったところをすべて説明してからサーキットトレーニングに入ることになるかと思います。
その場合、どうしても後半の種目の時には注意点を忘れてしまうというケースも出てくるでしょう。
②個別の負荷設定がおざなりになりがち
については、次に回ってくる選手もいたり、時間的な制約が大きくなることで「今ついてる重りでそのままやっちゃえ」という心理が働きやすくなると考えられます。これはマネジメント、コーチングでどうにか出来る問題ではあると思いますが、どうしてもその傾向は出てくるかと。
③心肺に負荷をかけるためにレストを短くすると強度(重量やスピード)は落ちる
については、「強度」という単語を「きつさ」や「心拍数」と解釈すると、サーキット形式のほうが強度は上がるというふうに捉えられるかもしれません。
しかしながらレジスタンストレーニングの本来の目的は「パワー向上」や「筋力向上」のはずです。そのため、ここでいう「強度」は重量や挙上スピード、ジャンプ系の種目の場合跳躍高を指すはずです。
①~③をまとめて表現すると、筋力トレーニングをサーキット形式で実施すると
・きつくなる
・心肺機能は鍛えられる
・雑になりやすい
・強度が落ちやすい
と考えられます。
まとめ
サーキット形式の筋力トレーニングにはメリットもデメリットもあります。
繰り返しになりますが、マネジメントやコーチングでこういったデメリットをなるべく出させないようには出来るかと思いますが、そのデメリットをあえて受け入れてサーキット形式を実施しているのか、もしくはなんかサーキットが良いって聞いたから実施しているのか、その選択の背景まで説明できるとトレーニングのクオリティはぐんと高まると思います。
是非こういった考えも持ちながらトレーニングに取り組んでみてください!
執筆者:佐々部孝紀(ささべこうき)
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