【第21回】ピリオダイゼーションの概念~線形ピリオダイゼーション~
トレーニング、コンディショニングに欠かせない概念の一つに、「ピリオダイゼーション(期分け)」があります。
スポーツ現場におけるピリオダイゼーションは、シーズンをいくつかの期間に分割し、重要な試合に向けてコンディションを整えていくという意味になります。
この概念は、ちゃんとした(体育、スポーツ系の大学の教科書に使われるような)トレーニングの教科書には必ず書いてあります。それぐらい重要な概念です。
まず、そもそも各体力をどのように高めるかを考えましょう。(このあたり参照:第3回 筋力の重要性 第4回 筋力を決定する要因 第8回 競技で得られる体力≠競技に必要な体力 第14回 特異的トレーニングvs基本的トレーニング)
ざっと整理するとこんな感じです。
レジスタンストレーニングっていうのは一般的にいう筋トレのことです。
しかしこれらの要素をすべて(筋力もパワーも、特異的なトレーニングも。なんなら持久系トレーニングも)同時に十分な量のトレーニングを行い、そのうえ技術・戦術練習も行うと、選手はオーバーワークになっちゃいますよね…
それに、似たような負荷を長い期間身体に与え続けると、身体がそれに慣れてしまい、適応(筋力の増加とか)も起きにくくなってしまいます。(プラトーと言います)
ピリオダイゼーションは、この
・オーバーワーク
・プラトー
を防ぐ役割、そして試合に向けて万全のコンディションで望むための役割(ピーキング)を果たしています。
目的に応じたトレーニング負荷
まずはトレーニングにおける
・強度
・量
・負荷
という言葉の概念を把握しましょう。
ざっくりいうと負荷=強度×量です。
そして一般的にウエイトトレーニングは
①筋肥大を目的にした場合
・・・総負荷を大きくすることがキーポイントになるので、8~10RM(80%~75%)前後の強度で行うのが効率が良い
②最大筋力向上を目的とした場合
・・・高い強度をかけることがキーポイントになるので、3~5RM(90%近い強度)で行うべき
といったふうに目的に対して強度や総負荷を調節する必要があります。
きちんとウエイトをやったことがある人は分かると思いますが、これは①筋肥大のほうがきついですよね。
最大挙上重量が仮に100㎏の場合、①が75㎏×10回で②が90㎏×3回です。
単純に計算しても
①75×10=750kg
②90×3=270kg
になりますしね。(本当はこんなに単純な話じゃありませんが…)
最初の図で考えると、①筋肥大がより図のピラミッド下のほうにあり、②最大筋力向上はそれより少し上にあります。
そして図を見て考えてもらえれば分かりますが、より上のほうが競技に直接的に影響を及ぼす要素で、より下のほうがどちらかというと基礎的なものになります。(競技によっては体重の増加がそのまま活きることはありますが)
つまり
ピラミッド下のほうは
・きつくて(トータルの負荷が大きくて)
・より基本的な要素である筋肥大
が期待でき、
ピラミッドの上のほうが
・比較的楽で(トータルの負荷は小さくて)(まあ楽ってわけでもないです笑)
・各体力に直接影響を及ぼすであろう最大筋力やパワーの向上
が期待できます。
そのため、ピリオダイゼーションの基本的な流れは
試合から遠いほどピラミッドの下がわ
試合が近づくほどピラミッドの上がわ
を中心に行う。というものになります。
強度と量の関係は試合に向けて以下のようになります。
これがピリオダイゼーションの基本的な考えである「線形モデル」のピリオダイゼーションです。
これは本当にトレーニングの基礎の基礎。
実際はこのモデルをシーズンにドカンとはめ込んで行うことは、シーズン中に試合期が何回も訪れる現代のスポーツにおいてはあまりないのですが、ピリオダイゼーションの基本的な考えなので、この概念をもとにいろいろ発展した形を考えていくのが一般的です。
今度はその発展型のモデル(非線形モデル、ブロックピリオダイゼーション)について書いていこうかと思います。
では!
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