【第149回】爆発的力発揮!RFDの基本を理解する
RFD (Rate of Force Development)
という言葉を聞いたことありますか?
体育系大学やスポーツ系専門学校のバイオメカニクス関連の授業では必ず出てくる単語ではないでしょうか。
日本語でいうと「力の立ち上がり率」です。
大きな力をどれだけ短い時間で出せているか?という指標で、前回紹介したIsometric Mid-Thigh Pull(IMTP)やBiodexなどの機材で測定可能です。(前十字靭帯のリハビリを経験した選手は測ったことがあるかもしれないですね!)
RFDの重要性
スプリント中の接地時間は0.1~0.2秒程度(Kale et al., 2009)、ジャンプの上昇局面動作時間は0.2~0.5秒程度であることが報告されており(Marshall et al., 2013)、この短い時間でより大きな力積を得ることがパフォーマンス向上には必要になります。
※スプリントに関しては接地前の振り下ろしによる力の発揮も関わりますし、CMJだと下降局面ですでに発揮している力も関与しますが、今回の記事では触れません。あしからず。
(力積とは?を解説した記事はこちら⇓)
IMPTのように下肢3関節を伸展するように力を発揮したとき、0.1秒の時点でPeak Force(最大の力)の50%強、0.2秒の時点でも80%程度の力しか発揮出来ていないことが報告されています(Wang et al., 2017)。
接地中になるべく大きな力を出したいのに、RFDが低いと接地期前半での力があまり出せず、大きな力が出せ始めたぞというところで離地をしてしまうということになります。
一方でRFDの高い選手は離地までの間により大きな力積を稼ぐことが出来、その結果高いジャンプ力や速いスピードを達成できると言う訳です。
また、RFDが大きく早い段階から力を加えることが出来ると、離地までの時間も早くなると考えられます。
※力積は時間×力なので、時間の成分が少なくなるぶん力積にはマイナスに働きますが、その分初期の力発揮の増大がそれ以上の貢献をするでしょう。
バスケットボールやバレーボールなどの対人競技であれば『高く』跳ぶだけではなく、『早く』跳ぶ必要がある場面もあるので、なんかもう、RFDめっちゃ大事。
RFD≠パワー
RFDってなんだか雰囲気『パワー』にも似てますよね。
爆発的な力発揮ってところが特に。
(パワーについては⇓)
しかし特にIMTPで測定するようなRFDの計測時、筋肉はパワーを発揮していません。
「え?」
って思った方もいると思いますが
「そりゃそうやろ」
って思った方もいるかと思います。
そりゃそうやろ派の人はここから先は読まなくて大丈夫です。次回作にご期待ください。
終
制作・著作
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さて、パワーを発揮していない件についての解説です。
前回の記事でも紹介した通り、RFDは力÷発揮するまでの時間で算出されます。
図では0.25秒(250ms)になっていますが、ここは様々な時間で測定可能です(だいたい50ms~250msが多いです)。
そしてその測定の多くはIMTPやIsometricなレッグエクステンションなどで測定されることが多いです。
そう、Isometricなので、パワー=力×速度は0なんですよね。
たまにRFDを『力の立ち上がり速度』と訳している文も見ますが、ここから考えても『力の立ち上がり率』のほうが訳としては適していることが分かりますよね。
研究の中にはコンセントリック収縮でのRFDも測定しているものもあるのでそちらはパワー発揮をしていることになりますが、どちらかと言えば少数派です。
つまりRFDが高いということは
・速度ではなく力に着目したときの
・収縮初期の力発揮が
強い!
ってことなので、それがイコール力積の大きさに繋がるという訳ではありません。
接地期後半の速い速度での力積獲得とは違う要素になるので。
しかし言い方を変えると
ジャンプなどの運動課題においては
①上昇局面初期での力の立ち上がり&大きな力(≒RFD)
②上昇局面後半の大きな速度での力・パワー発揮
が必要だと考えられるので、結局なにが言いたいかというと、RFD=パフォーマンスに直結というわけではないものの、RFD、めっちゃ大事。
まとめ
今回はRFDとはなんぞや?と、パワーとの違いについて解説しました。
次回も(やる気が出れば)RFDを高めるために必要な要素について解説しようと思います!
執筆者:佐々部孝紀(ささべこうき)
参考文献
- Kale, M, Aşçi, A, Bayrak, C, and Açikada, C. Relationships among jumping performances and sprint parameters during maximum speed phase in sprinters. J Strength Cond Res 23: 2272–2279, 2009.
- Marshall, BM and Moran, KA. Which drop jump technique is most effective at enhancing countermovement jump ability, “countermovement” drop jump or “bounce” drop jump? J Sports Sci 31: 1368–1374, 2013.
- Wang, R, Hoffman, JR, Tanigawa, S, Miramonti, AA, La Monica, MB, Beyer, KS, et al. Isometric Mid-Thigh Pull Correlates with Strength, Sprint, and Agility Performance in Collegiate Rugby Union Players. J Strength Cond Res 30: 3051–3056, 2016.
最近は貝を捌くのにはまっています。
ホッキ貝はめちゃくちゃ簡単なのですが、赤貝が難しい。
殻同士のスペースがないので、最初に殻を力ずくでずらさないといけないので。(出来たら超楽しい)
あ、1月あたりにまたセミナーを開催しようと思うので、日程等決定し次第このブログで周知しようと思います!
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