【第12回】スマブラ(テレビゲーム)から考えるスポーツの本質
前回、前々回と少し専門的な内容のことを書きました。
なので今日は科学的なところとは離れたライトな内容です。むしろ科学ってよりは哲学です(笑)でも最後にはちょこっと科学的な内容も書いてます。
競技スポーツとレクリエーションスポーツ
スポーツというものは、大きく以下の2つに分けることができます。
・競技スポーツ
・レクリエーションスポーツ
この2つの違いは、「勝利」というものを第一に置いているかどうかということ。
競技スポーツの目的は、もちろん「勝つ」ことです。
そして、その競技スポーツを本気でやっている人が「アスリート」です。
レクリエーションスポーツの目的は、「楽しむ」ことを中心に、健康であったり、コミュニティの形成だったり…etc
プロスポーツは、もちろん競技スポーツです。勝ちを本気で目指さなければ意味がありません。
大学では、部活動(特に、地域の1〜2部リーグに所属するようなチーム)は競技スポーツで、サークルは多くの場合レクリエーションスポーツでしょう。
高校の部活はそのチームによります。都道府県大会ベスト8〜32常連のチームは競技スポーツといえるのじゃないでしょうか(ただの主観ですが笑)。もちろん、そこに届かなくても競技スポーツとして行っているチームもあります。
中・高の体育の授業は教育の媒体としてのスポーツなので、少し特殊です。でも僕が授業を行うときは、「この時間を楽しむこと、そのスポーツを好きになってもらうこと」を考えてやっています。そう考えると、レクリエーションスポーツなのでは。
競技スポーツとレクリエーションスポーツ
僕はこの2つには、全く優劣はないと思っています。
境目自体もけっこうあいまいです。
それどころか、この2つは根本的にはまったく同じものです。
そもそもスポーツとは?
スポーツというものの定義について考えたことはありますか?
僕もこれは大学院の授業で初めて知ったのですが、以下の3つの定義にあてはまるものがスポーツなんですって。
身体を使った
勝ち負けのある
遊び
遊びですよ。遊び。
「何ふざけたこと言ってやがんだ!こっちは遊びでやってんじゃねえんだよ!」
そんな声が聞こえてきそうですが…
でも、競技スポーツであっても、
「そのスポーツを楽しむこと」
これは絶対になくしちゃだめじゃないですか?
反対意見があれば、是非聞きたいです。(けんかを売ってるわけではなく、本当にいろんな意見が聞きたいので)
根本はやっぱり「楽しむこと」
そして競技スポーツとレクリエーションスポーツの違いは「楽しみ方」の違いだと思います。
スマブラの楽しみ方とスポーツの楽しみ方
ここで例に出したいのが、大乱闘スマッシュブラザーズ(通称スマブラ)。相手にダメージを与えてふっ飛ばすor落とせば勝ちというテレビゲームです。僕ら世代(昭和末~平成生まれ)のソウルゲームですよね。笑
鬼ごっこ・野球をやって、身体が疲れたらスマブラやって、目が疲れたら鬼ごっこ・野球をやって…という究極のスーパーセット(※)をやっていたのは僕だけではないはずです。
※ベンチプレスとベントオーバーロウなど、異なる筋群を用いるトレーニングを交互に行うセット
スマブラは(他のいくつかのテレビゲームも)
身体を使わない
勝ち負けのある
遊び
ですよね。
ここで一般的なスマブラのプレイ動画をご覧ください。
一般的なスマブラ
いやー楽しいんですよねこれ。未だに友達の家に行った時にこれがあればやっちゃいます。「勝ったー!」「負けたー」っつってみんなでわいわいできるのが楽しいんですよやっぱり。
次に見て欲しいのがこれ。
スマブラ世界大会
やったことがある人はたぶんみんなおったまげるくらい、次元が違います。笑
彼らは
・着地キャンセルという技によって2/60秒の隙を半減
・1/60秒にこだわるため、扱うテレビの機種によってコントローラーからの入力のタイミングを変える
等、他にもいろいろ技術だったり、細かいこだわりがあるらしいです…
僕はそこまでこだわってスマブラをやったことはありません。笑
では、彼らはなぜそこまでやるのか。
たぶんそれは、そこまでこだわって、つきつめてやるのが「楽しいから」なんでしょうね。
もちろん、世界大会、全国大会優勝で得られる名声とか、賞金とかもあるのかもしれません。
でもそんな細かいこだわり、努力は、好きじゃないとできないですよね。楽しまないと無理ですよね。
じゃあスポーツではどうでしょう。
レクリエーションスポーツは最初に挙げた通り、みんなでわいわいやったり、それでコミュニティが形成されたり、が楽しいんですよね。その後の飲み会がいいんですよね。笑
競技スポーツはスマブラ世界大会と一緒で、本当に細かいところまでこだわってやって、それで試合で結果を出すから楽しいんですよね。細かいところへのこだわりが楽しみを生むんですよね。
じゃあ競技スポーツをやっている人が全員こだわりを持てているのか、
・睡眠が足りていない選手は、スプリントスピード等のパフォーマンスが低下すると言われているが、ちゃんと睡眠時間は確保できているのか?(CD.Mah et al, 2011)
・タンパク質は体重×1.5g~が推奨されているが、ちゃんと取れているのか?(ACSM:American College of Sport medicine)
・3か月前より、スクワットやクリーンの挙上重量は上がっているのか?正しいフォームでできているのか?
・自分に必要なスキルを理解し、その習得は進んでいるのか?
他にもこだわることはいっぱいありますよね。
でも、この細かいこだわり、自分のレベル上げ、それに伴う結果を得ることが楽しくてアスリートやってるんじゃないですか。
いろんな人の思いを背負ってやっている人もいると思いますが、今までその競技を続けてきたのは「楽しさ」が根本にあるからじゃないですか。
僕は大学の同期にアスリートはいっぱいいましたが、やっぱりトップ選手はそれをとても楽しんでいるように見えます。
もしそれができてない人がいるのなら、その人はアスリートとしての本当の楽しみを味わえてないのかもしれませんね。
でもスマブラ(デジタルなプログラム)に必要な知識と違って、アスリート(生身の人間)に必要な知識は、インターネット上には間違った知識も多く転がっているし、なんなら「まだ分かっていないこと」もいっぱいあるんですよね。
それを明らかにしたり、まとめたりするのが、スポーツ科学(第6回)です。
だからアスリートとしての本当の楽しみを味わうには、「アスリート自身の学び」が絶対必要です。
その楽しみ方を教えてあげるのが、僕らトレーナーの仕事なのかもしれません。
アスリートのみなさん、学びを通して、アスリートを楽しみましょう!
追記
レクリエーションスポーツと競技スポーツに優劣はないと書きました。その「楽しみ方」が違うだけなんで。
なので注意してほしいのは、入る組織を間違えること。
競技スポーツのチームに、勝ちを本気で目指さない人が入るのは、足を引っ張るだけになってしまいます。
レクリエーションスポーツのチームで、「お前らもっと本気でやれよ!」ってキレる人、空気を読んでください。
そしてそんな両極端なものではなくて、間くらいのチームもありますよね。
きっと、自分の楽しみ方にあったチームがあるはずです。
日本だとあまり良しとはされませんが、違うチームへの移籍は、全然あっていいと思います!
だから大学にはサークルが複数あって、部活があります。
高校は自分で選べます。(部活だけで学校を選ぶってのは違うと思いますが)
中学は、、っていうと少し難しい問題なんですよね。。。
とにかく、「自分がどうスポーツを楽しみたいのか。」
いろんな楽しみ方ができるのが、
スポーツの大きな魅力だと思うので!
参考文献:
CD.Mah et al. The Effects of Sleep Extension on the Athletic Performance of Collegiate Basketball Players. Sleep,34(7):2011