【第84回】合宿で怪我が多発する3つの原因とその対策
8月と言えば合宿シーズンですよね。
すでに合宿を終えたチームもあれば、これから合宿というチームもあるのではないでしょうか?
合宿では1日をその競技のために使えるので、いつも以上に密に練習ができますよね。
しかしながら練習やトレーニングを詰め込みすぎて怪我をしてしまい、結局合宿中に何もできなかった。。といった経験をしたことのある人もいるのではないでしょうか?
本日はなぜ合宿で怪我が起きやすいのか?という3つの原因とその対策について説明していきます。
①負荷の急激な増加
最も大きな原因はこれでしょう。
合宿では多くのチームが2部練や3部練をこなします。
普段は1部練だとすると、下の図のように合宿を開始した日から急激に負荷が大きくなります。
この図のように、負荷が大きいことも怪我の原因になりうるのですが、実はそれ以上に「急激な負荷の変化」が怪我のリスクになるのです(Hulin et al., 2015)。
※詳しい解説はこちら(第49回:怪我を防ぐための3つの視点)
対策:負荷の変化をなだらかにする
この負荷の変化をなだらかにするには2つの方法があります。
合宿前から計画的に負荷を高めるか、合宿序盤の負荷を調節して徐々に上げていくか(もしくはその両方)です。
これはある程度指導者の裁量によるところが大きいでしょう。
選手が自分でできることとしては、合宿の数週間前からは練習とは別にラントレなどで負荷をかけることでしょうか。
睡眠時間の減少
合宿では朝練をするチームも多いですよね。
チームによっては朝食前にも練習を行うこともあるでしょう。
ここで起こりうるのが睡眠不足です。
6時間以下の睡眠しかとっていない選手は、9時間睡眠の選手よりも4倍怪我が多いといったデータもあります(Milewski et al., 2014)。
朝練があるから起床は5時半、夜はついついチームメイトと喋り込んでしまい12時就寝、、なんて選手もいるのではないでしょうか?
対策:とにかく睡眠時間の確保!
起床時間が決まっているのであれば、とにかく早く寝るしかありません。
夕食を食べてお風呂に入ってミーティングが終わったら、最低限のケアをしてさっさと寝ましょう。
同部屋のチームメイトがなかなか寝付いてくれない場合は、アイマスクと耳栓を活用するか、睡眠不足がいかにアスリートにとって有害かを説明してやりましょう。(こちら⇒睡眠とコンディション、睡眠と身体作り、睡眠とパフォーマンス、睡眠と学業成績)
どうしても夜間の睡眠時間が取れなければ、昼寝も活用しましょう。
1日トータルで9時間とるつもりで!
坂道でのランニングトレーニング
チームによっては夏の暑さを避けるために標高の高い避暑地で合宿をするチームもありますよね。
そして山と言えば坂道。坂があれば高確率で坂ダッシュが行われます。(個人の意見です)
もちろん、きちんと考えて行われれば有効なのですが、1つ注意点があります。
それは下り坂では負荷の高いランニングを行い過ぎないこと。
下り坂を走るということは、言い換えると、一歩一歩落下を繰り返しているということ。このような動作は関節への負担が大きくなります。
もちろんスプリンターのスプリントの技術練習の一環として、軽度勾配(10度以内?)の坂でのOverSpeedのスプリントトレーニングを、とかいう意図があればいいのですが、球技選手のランニングトレーニングとしてはあまりおすすめしません。
対策:坂道ダッシュorランを行うなら、上り坂!
坂でのトレーニングは上り坂が絶対におススメ。
なぜなら上り坂のほうが心肺機能への負荷が大きくなり、関節への負担も少なく、レストを長くとって全力で行えば加速のトレーニングにもなるし、良いことずくめだからです。(詳しくはこちら)
瞬発力を鍛える坂道ダッシュなら上り坂をダッシュ、下り坂を歩きで。持久力を鍛えるためのインターバルトレーニングなら、長めの坂道をラン、下りをジョグで帰ってきましょう。
まとめ
合宿で注意すべきポイント3つ
・負荷の急激な増加
・睡眠不足
・坂ダッシュorラン
について説明しました。
もちろん、これにプラスしてリカバリー(セルフマッサージ/フォームローリング、栄養摂取、コンプレッションウェアの着用、冷水浴など)を行うことも大事。
すでに合宿で怪我をしてしまった選手、怪我人が続出したチームの指導者は今後の反省に、これから合宿を控えている人はその対策に、これらの知識を活用してください!
執筆者:佐々部孝紀(ささべこうき)
参考文献
- Johnston, RD, Gabbett, TJ, Jenkins, DG, and Hulin, BT. Influence of physical qualities on post-match fatigue in rugby league players. J Sci Med Sport 18: 209–213, 2015.
- Milewski, MD, Skaggs, DL, Bishop, G a., Pace, JL, Ibrahim, D a., Wren, T a. L, et al. Chronic Lack of Sleep is Associated With Increased Sports Injuries in Adolescent Athletes. J Pediatr Orthop 34: 129–133, 2014.Available from: http://content.wkhealth.com/linkback/openurl?sid=WKPTLP:landingpage&an=01241398-201403000-00001